Wikipathologica-KDP
SPS-城南病理
Renal cell neoplasm--腎細胞性腫瘍, 2016WHO新分類
Birt-Hogg-Dube syndrome -- SPS城南病理(226SPS) Case09†
聖隷浜松病院 清水進一、大月寛郎、江河、小林寛
Birt-Hogg-Dube症候群 (Dubeはデュベと読みます)
Birt AR., Hogg GR., Dube WJ Hereditary multiple fibrofolliculomas with trichodiscomas and acrochordons Arch Dermatol 113;1674-1777, 1977
- cutaneous manifestations; facial fibrofolliculoma and tricodiscoma (face, neck, oral cavity and upper trank)
- lung cysts with risk of spontaneous pneumothorax
- renal tumors (oncocytoma and chromophobe RCC )
- 最も頻度の高い組織型はオンコサイトーマと嫌色素性癌のハイブリッド腫瘍(いわゆるhybrid oncocytic chromophobe tumor: HOCT)と嫌色素性癌(-->嫌色素性腎細胞癌)
- 腎腫瘍罹患率は20-30%でその約半数は多発性.*1
- colonic polyps
- mutation in human folliculin(BHD) gene on chromosome 17p11
- autosomal dominant
- FLCN変異のみでは, マウスモデルに嚢胞様腎過形成を惹起するが前癌病変を認めるだけで癌は発生しない. FLCN欠失のみでは腎細胞癌発生に至らない可能性があり, さらに付加的な分子生物学的異常を検索する必要がある.
OMIM page -->Birt-Hogg-Dube症候群 Gene review japnaのページ-->Birt-Hogg-Dube症候群
Folliculin FLCN-->Folliculin OMIM page
皮膚病変†
- 線維毛包腫
- 毛盤腫/血管線維腫
- 毛包周囲線維腫
- アクロコルドン
ハイブリッド腫瘍(hybrid oncocytic chromophobe tumor: HOCT)†
文献*1
- WHO分類定義には「oncocytomaと嫌色素性腎細胞癌とがオーバーラップした組織型」と記され定義はされていない.
- ISUPバンクーバー分類は,「嫌色素性腎細胞癌亜型とされ, HOCTsと複数形で示し, 散発性sporadic, オンコサイトーシス, BHD症候群関連の3群に分類され, 形態的には区別できないが, 分子遺伝的背景が異なる.」 と記載.*2
- オンコサイトーシスはBHD症候群にも発症することがあり遺伝学的には, HOCTsは散発性か家族性かに分けられ, 散発性は単発でsporadic HOCT(SHOCT)ともいわれる.
- macro; 境界明瞭で, 割面は黄色から黄褐色調. 偽膜形成はない. BHD症候群関連の場合は多嚢胞状のことがある.
- micro; sporadic HOCTは充実性胞巣状パターンで, 核皺はなく, perinuclear haloをしばしば伴う.細胞質は好酸性顆粒状*2 .
SHOCTを疑う場合はBHD症候群を遺伝学的検査で除外する必要があり, 組織所見のみでは確定診断はできない.
- 1. 典型的オンコサイトーマと嫌色素性腎細胞癌の部分が混在する.
- 2. 典型的オンコサイトーマの中に嫌色素性腎細胞癌が散在する
- 4. BHD症候群関連HOCTsの核はsporadic HOCTに比べ, 多型があり,しばしばレーズン様を呈する.
- IHC; CK7, Ksp-cadherin, CD82に陽性のことが多い. CK7は局所的または陰性のことも少なくない.
- HOCTでは腫瘍細胞結節, 特に辺縁部に淡明化した細胞を伴うことが多く, ccRCCとの鑑別に迷うことがある
(BHD症候群では, ccRCCやpRCCを発症することもあり, 他の遺伝性腎癌のように単一組織型対応にならない)
- 分子発現クラスター解析からはBHD症候群関連HOCTはオンコサイトーマや嫌色素性腎細胞癌と同じく遠位ネフロン由来であるが
genome性状では, 散発性オンコサイトーマとも古典的 chRCCとも異なりcopy数の変動はほとんど認められない.
- 生物学的悪性度はオンコサイトーマとchRCCの中間とされているがBHD症候群では, 両側腎に多発しうるため積極的な治療が困難なこともある.
病理診断の実際*1
- 実際の病理診断ではoncocyticな特徴を呈するBHD症候群関連腎腫瘍をオンコサイトーマ, HOCT, 嫌色素性腎細胞癌のいずれかに確定するのは困難と感じられる.
- BHD症候群の腎腫瘍病理診断では, BHD症候群であることを十分に検討確定し, 臨床, 放射線科医と十分な意見交換を行い病理コンサルテーションシステムを活用する.
- 現実的にはHOCTが嫌色素性腎細胞癌の亜型とされているので, 暫定的に嫌色素性腎細胞癌と診断し専門家の意見を聴く.
BHDネット; 横浜市立大学のBHD症候群へのチーム医療の取り組み. (-->BHDネット)
BHD症候群は浸透率ほぼ100%で, 保因者は何らかの関連症状をもつ.
独特の腎腫瘍組織などから病理医が最初にきづくこともある.
- BHD症候群を疑う場合は主治医や遺伝子診療部の医師らと情報を共有し慎重に診断をすすめる必要があり, 患者さんだけでなく, 血縁者にたいするケアも欠かせない.
- いくつかの診断基準が国際誌に提唱されているがFLCN胚細胞変異未確定症例に対するコンセンサスは得られていない.
家族性に気胸を呈する疾患†
alpha-1 アンチトリプシン欠損症
Marfan症候群
Ehlers-Danlos症候群
Lymphangioleiomyomatosis(LAM), [Tuberous sclerosis]
Langerhans cell histiocytosis
Cystic fibrosis
Birt-Hogg-Dube症候群の軽症型