静岡病理医会
Desmoplastic melanoma and desmoplastic neurotropic melanoma--線維形成性黒色腫と線維形成性神経向性黒色腫†
- SPS 244-case01 and 244-case02
紡錘形異型メラノサイトが著明な間質反応(desmoplasia)を伴い増殖する特殊な色素性病変。*1. desmoplastic neurotropic melanomaは, desmoplastic melanomaのうち神経向性(neurotropism:神経周囲侵襲像)がめだつものでReedら*2が最初に報告した。
いずれも腫瘍細胞の異型性が乏しく, 背景の間質反応がめだつこと, メラニンの存在が目立たないことが特徴である。
このため両者を臨床的にも病理学的にも色素性病変と診断することが困難であり, 初回生検時には瘢痕病変や皮膚線維腫などと誤認されることが多い。
最終診断が初回生検より時間が経過してから行われることがありしばしば根治治療が困難になることがある。早期根治治療のために本疾患の病理学的特徴をよく理解しておく必要がある。
- 真皮から皮下組織の既存組織を置換するように線維性結合織を主体とする結節性病変が存在。筋膜まで達する例も少なくない。多くは左右非対称の病変。
- 日光露出部発生症例では非病変部に日光障害性変化(solar elastosis)が認められることが多い。
- 腫瘍内では紡錘形メラノサイトが多量の膠原線維増生(desmoplasia)を伴って増殖している。
- 紡錘形メラノサイトは線維芽細胞様の形態を示しメラニン産生も認めないことが多く色素性病変と認識しづらい。
- 報告では表皮真皮境界部に異型メラノサイトが存在し, いわゆるmelanoma in situを認める症例が多いとされている。しかし通常の悪性黒色腫より変化は軽微なことが多く, 実際の診断では困難なことが少なくない。
- 腫瘍内にはリンパ球形質細胞浸潤がめだつことが多く, 間質に粘液貯留を認めることも比較的多く見られる所見。(嚢胞を認めることは経験上ない; 愛知医大,都築先生)
- desmoplastic melanoma(DM)にはdesmoplasiaがめだつ成分のみから構成されたpure DMと通常型の悪性黒色腫を伴うcombined DMの2種類がある
- combined DMの場合どの程度desmoplasia病変があればDMとするかの結論はでていない。
- desmoplastic melanomaとdesmoplastic neurotropic melanoma(DNM)の明確な鑑別点はなく両者を区別する臨床病理学的意義も乏しいが、診断学的には神経向性の所見はDM, DNMを診断する上で重要な所見である。
- DNMに腫瘍細胞の末梢神経分化を示すものがある。頻度は少ない*2
○ 免疫染色
- 腫瘍細胞の多くはS-100, p75 nerve growth factor receptor(NGFR)が陽性となる。
- 悪性黒色腫の重要なマーカであるHMB45, melan A(MART-1), MiTFは陰性を示すことが多い。*5
- 細胞異型の軽度な場合, 上記によりschwannomaと診断する可能性がある。
- 時にsmooth muscle actinが陽性になり筋線維芽細胞系腫瘍と誤認されることがある。
- NKI/C3, NSEが陽性所見を示すことがあるが特異性は低く診断時に注意が必要
- DMの多くはnestinがびまん性に強陽性所見を呈する*6ことが示され, 鑑別診断に有用となる可能性がある。
- MPNST 35例は全例びまん性にnestinが強陽性になった。S-100以外によいmarkerのないMPNSTの診断に使える。
- DMは9例中9例がびまん性陽性となった。schwannmaはweakなnestinの発現を示した。MPNSTとのDDxは使えない?
Lehrbuch; 線維形成性黒色腫と線維形成性神経向性黒色腫:
実際の症例†
最終診断が初回生検より時間が経過してから行われることがありしばしば根治治療が困難になることがある。早期根治治療のために本疾患の病理学的特徴をよく理解しておく必要がある。(でも実際難しい.)
SPS(静岡病理医会症例. 浜松医大馬場先生, 津久井先生のご厚意による)
SPS244-Case01 右下眼瞼腫瘤 70歳代女性
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眼瞼皮膚腫瘤01 | 再切除02 | 再切除03 |
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初回組織 | 再切除組織 | S-100 |
SPS244-Case02 項部皮下腫瘤 70歳代女性
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潰瘍びらんはない | 割面 | loupe像 |
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micro | micro | S-100 |