EGFR (epidermal growth factor receptor)
GRB2はRASへのEGFRシグナルに必須であり, そのSH2 (Src Homology-2)ドメインが直接、活性型EGFRの1068と1086リン酸化チロシンへ結合するかチロシン-リン酸化アダプター蛋白SHCを介して間接的に結合する。
GRB2のSH3ドメインはRAS GTPaseの転換因子SOS(Son of Sevenless)と構成的に結合する。
SOSとの結合の他, GRB2のSH3ドメインは Dynamin およびCbl (c-Cbl, Cbl-b, and Cbl-3)などいくつかの蛋白質と結合する。両者ともEGFRのエンドサイトーシスを制御する蛋白である。
EGFRに結合したGRB2とSOS複合体はRasの近傍にSOSを配置することになり, RasのGTP付加とRasエフェクターである, Rafキナーゼ, PI3K(phosphatidyl inositol 3-kinase)の活性化が続いておこる。
RafはMEKs (MAPK/ERK Kinases) とERKs (Extracellular Signal-Regulated Kinases)のリン酸化、活性化を含むリン酸化カスケード反応を開始する。--->RAS signaling pathwayのページを参照。
EGFは結合蛋白GAB1(GRB2-Associated Binder-1)によってもPI3Kを刺激する。結合蛋白GAB1はPI3K、その他多くの受容体型チロシンキナーゼ活性化反応に関与するエフェクター蛋白を動員する。いったん活性化されたPI3Kは, 膜結合PIP2(Phosphatidylinositol (4,5)-bisphosphate)をリン酸化してPIP3 (Phosphatidylinositol-3,4,5-trisphosphate)を生成する。PIP3がPHドメインに結合するとAktは細胞膜に繋留され, PDK1(Phosphoinositide-Dependent Kinase-1)によるリン酸化と活性化を受けるようになる。次いでAktはいくつかの基質をリン酸化して細胞生存に関与する。 *1*2
gefinitib(商品名イレッサ [Iressa])低分子量EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI).
手術不能または再発非小細胞肺癌の治療に開発され2002年に日本で承認をうけた。2003-2004年, 無作為比較臨床試験(ISEL試験*3)でプラセボとくらべ生存期間が延長できなかった。2005年FDAは本薬剤新規使用を禁止。2009年には欧州医薬品局は2つの無作為化第III相臨床試験, INTEREST試験とIPASS試験の結果をもとに成人EGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞癌を対象にイレッサの販売承認をおこなっている。
gefinitibの腫瘍縮小効果はEGFR遺伝子の体細胞変異の有無と強く相関することが2つのグループから報告されている。*4*5
EGFR-thyrosin kinase inhibitor耐性*6
1. 二次性遺伝子変異
T790M変異 50-60%を占める 出現するとイマチニブ(イレッサ), エロルチニブ(タルセバ)の継続投与は無効.
D761Y変異 <1%
T854A変異 <1%
2. MET経路活性化
遺伝子増幅 10-20%
HGF発現 ?%
3. PTEN不活化 <3%
4. 小細胞癌への組織転化 <1%