Wikipathologica-KDP
epithelioid hemangioendothelioma of the lung-pulmonary hemangioendothelioma(PEH)†
以前はIVBAT(intravascular bronchioloalveolar tumor)と呼ばれた病変
症例01†
70歳代女性
健康診断で右上肺野の腫瘤陰影を指摘されてから2年間follow upしていた。徐々に腫瘤影が増大しspiculationを認めるようになる.診断と治療目的で胸腔鏡下腫瘤切除を行う。
病理組織所見†
Virtual Slideをみる--->VATSで採取された肺腫瘤No01, 肺腫瘤他の切片No02 (修正すみ)
HE組織像
直径5-6mmの, 中央に弾性線維をふくむfibrous noduleがあり, 腫瘍細胞は結節の辺縁部に沿って認められる。
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hyperchromaticな類円ないし多角の核で好酸性の広めの細胞質をもつ上皮様細胞が増殖している。右図では血管内を占拠するように腫瘍細胞が認められる。
左図:腺腔様の裂隙が胞巣内にみられ, 凍結標本だと腺癌との区別がむずかしい。
右図:多型細胞や異型細胞が出現。核分裂像も異常に見える。
Pulmonary epithelioid hemangioendothelioma(PEH)*1
- EHEは諸臓器に発生することが知られているが肺病変は通常, 多発で両側性腫瘤, 一般に1cm前後で2cmを超えない。
- 長期観察例ではpleura, pericardiumへ進展することがあり, mesotheliomaに似た内包(encasement), 肥厚, 横隔膜を穿通した増殖などをきたす。所属リンパ節への転移がある。
- 80%は女性で、半数は40歳前に診断される。文献では4歳から90歳台までの報告がある。
- 15歳の少女症例で, より若年時から肺, 肝, 骨に多発病変をきたしていた症例報告あり。*2
- 肉眼的には, ほぼ軟骨の硬さの球状腫瘤。割面の腫瘤周縁は灰白色透明な生きた組織で,より濃度の濃い石灰化あるいは凝固壊死様組織が中心に認められる。
- 光顕では生きた細胞は肺結節周縁に認められる。中心はしばしば凝固壊死を呈する。移行部にはまだら状のgohst cellが密なマトリックス内に残っている。
- Kohn孔をとおり肺胞から肺胞へ進展するパターンを示す。
- 血管関連の内皮由来腫瘍にもかかわらず, 血管の乏しい腫瘍(avascular)で拡散により栄養をえなければならない。
1975年, DailとLiebowにより肺のepithelial hemangioendothelioma(EHE)について20症例のまとめが最初に報告された。*3これらはDr. Liebowのconsultation casesに含まれていたもので, はじめは「高率に血管内進展を伴うbronchoalveolar tumorのまれなvariant」として扱われ, intravascular BAT(IVBAT)と呼ばれた。これは両側多発腫瘤という発生形式と典型的なbronchoalveolar patternを示す肺癌の合併する症例があるための混乱であった。
1979年以降, 電顕と免疫染色(Factor-Ⅷ)をもちいた研究によりIVBATは血管内皮由来の腫瘍であることがわかってきた。1983年Dailは20症例の詳細を報告した。*4
YousemとHochholzer*5は通常とは異なる胸腔内病変をきたしたEHE, 4症例を報告した。[ 縦隔内腫瘤, 癌性リンパ管症に似たリンパ行性転移, 中皮腫に似た胸膜肥厚病変, 石灰化をきたした肺内弧在性腫瘤 ]
この疾患は肺のみではなく他の臓器にも発生することが確認されるようになった。
- 軟部組織--EnzingerとWeiss*6が1982年, soft tissue発生の41症例をまとめepithelioid hemangioendotheliomaの名称を提唱した。以後IVBATは歴史的な記述のみに用いられ疾患名としては使用しなくなり, 肺病変についてはpulmonary hemangioendothelioma(PHE)が使われる.
- 肝臓--肝病変についてはIshakらが1984年に38症例をまとめて報告した。*7
- 頭頚部--Ellsらの報告*8。1986年。口腔粘膜および下顎より下部の軟部組織
- 骨--Tuneyoshiら*9。1986年に25症例をまとめる。
- この他, 皮膚, 脳, 縦隔, 胸膜, 心臓, リンパ節原発が報告され, ほぼ全身に発生すると考えられる。
- 肺の多発性病変は, 常に(他臓器EHEの)転移病変の鑑別が必要になるがDailらの検討では肺以外の臓器に病変は証明されなかった(臨床および画像的検索)。剖検による全身検索*10でも他臓器の腫瘍は認められず, 肺以外臓器のEHE検索も同様の結果であり,現在, 各臓器のEHE病変は多発病変であっても, おのおのが原発巣として発生していると考えられている.
- 多臓器同時発生症例の報告も多い。
- 肺と肝に腫瘍量の異なる病変を認めた報告。
- 肺と軟部の同時発生の報告
- 左上腕動脈腫瘤と肝, 皮膚病変
- 骨多発病変と肺
- 腹腔漿膜の局所増殖が肺病変と合併 など多数に及ぶ。