PDGF受容体 PDGF receptor*1
血小板由来増殖因子PDGFの精製に続き, 受容体の検索が行われ, 1982年にチロシンキナーゼであることが判明した.1986年にPDGFβ受容体が, 1989年にPDGFα受容体のcDNAがクローニングされた.
ヒト染色体では, α受容体遺伝子が4q11-12に, β受容体遺伝子が5q31-32に位置し, α受容体遺伝子近傍にはc-Kit遺伝子が, β受容体遺伝子近傍にはCSF-1(colony stimulating factor-1)受容体遺伝子が位置している. これら4種類の類似構造をもつ遺伝子群は, 祖先となる1つの遺伝子より進化したものと考えられている.
α, β両受容体タンパク質は共に5個のイムノグロブリンドメインからなる細胞外領域と膜貫通領域をもち, 細胞内領域にはインサートにより二分された構造をもつチロシンキナーゼが存在する.
PDGF受容体はリガンドとの結合により二量体化し, 細胞内領域のチロシンキナーゼ活性が上昇して, 受容体チロシン残基に自己リン酸化がもたらされ, 種々の標的SH2タンパク質がここに結合する.
PDGF受容体タンパク質の局在は細胞膜とされている.*2
PDGFRA変異をもつGISTの頻度は, 全GISTの5~10%と多くない. ほとんどが胃に発生する.
組織学的には類上皮様細胞epithelioid cells の増殖を示し, 間質にしばしば粘液腫変化を伴う.
一般的には再発が少なく, 予後は良好である.
PDGFRA遺伝子の変異はexon12, exon14, exon18に変異が存在する(c-kitのexon11, exon13, exon17に相当する)
最も多い変異はexon18, 特にD842Vが多い. (c-kit遺伝子のD816Vに相当する.)
2005年のCorless CLらの報告*3までに彼らの症例を入れて, 289例のPDGFRA変異GISTの報告があり, 181(62.6%)例がイマチニブ抵抗性のD842V変異を持っていた.
- D842V, RD841-842KI, DI842-843IMはimatinib抵抗性. D842Vはほぼ無効.
しかし, 約1/3のPDGFRA変異陽性症例では,imatinibに効果を示し, 変異のスクリーニングは治療方針決定に有用である*3.
- D842変異でもD842Yはimatinib効果あり.
- その他のexon18変異, N848K, Y849K, HDSN845-848Pもimatinibに対して感受性があった.
胃粘膜下腫瘤
File not found: HE01_s.jpg | File not found: HE02_s.jpg | File not found: c-KIT01_s.jpg | File not found: CD34-01_s.jpg |
HE, x200 | HE, x400 | c-KIT;陰性 | CD34; 陰性 |
類円形核をもつ多稜形の上皮様細胞がシート状密に増殖している. 増殖細胞は, c-KIT, CD34は陰性.
File not found: PDGFRA01_s.jpg | File not found: PDGFRA02_s.jpg | File not found: DOG1_s.jpg | File not found: SMA_s.jpg |
PDGFRA | PDGFRA | DOG1 | SMA |
PDGFRAが腫瘍細胞のゴルジ野にdot状の陽性を示している.本来はPDGFRAは膜に存在しているが, 変異PDGFRAタンパク質はこのような異常パターンを示すといわれている*4
DOG1はmutant PDGFRA GISTでもびまん性に陽性となる.
PDGFRA, exon18のsanger法によるdirect sequencing