Wikipathologica-KDP

Human leukocyte antigen:HLA

Human leukocyte antigen(ヒト白血球抗原); HLA. 1950年代フランスのDaussetにより, 頻回に輸血を受けた患者血清中に他人の白血球を凝集させる抗体が発見された. この抗体が認識する抗原をHLAと呼ぶ.

HLAの研究は, 1960年代にTerasaki PIにより考案された, 抗体をもちいる血清学的検査であるリンパ球細胞障害性試験(lymphocyte cytotoxicity test; LCT)により進歩した.

ヒトの自己・非自己を決定する因子;ヒトmajor histocompability complex(MHC)がHLAそのものであることがわかった.

HLA(分子)の種類

HLA分子には非常に多くの種類がある. これらはLCT法による血清学的検査(~1990年代まで主流)をもちいて決定, 細分化された.*1

HLA-A, HLA-B, HLA-CはT, Bリンパ球を使った血清学的検査により解析されてきた.

HLA-Dは細胞性免疫学的検査のリンパ球混合培養(Mixed lymphocyte culture; MLC)によりT細胞が抗原を認識して幼若化するかしないかで遺伝子座が識別された.

その後, B細胞をもちいた血清学的検査によりHLA-Dとほぼ相関する, HLA-DR(D-related)抗原が発見された.同様にBリンパ球の検査で別のHLA抗原遺伝子座が見つかりHLA-DQと名付けられた.

HLA-DPはMLCにより感作された免疫記憶T細胞ストックし再度被検体と培養をおこなうprimed lymphocyte test(PLT)検査により識別される新しい遺伝子座として解析されてきた.

現在ではDNAタイピングが標準となり, HLA-Dを決定する遺伝子座は存在しないことがわかり, おもにHLA-DR(>HLA-DQ>HLA-DP)の総合的な適合度(<--ウーム意味がわからん)をあらわしていたことがわかった.

wの付記されたHLAは, 国際組織適合性ワークショップにより抗原特異性として暫定的に公認されたもの. workshopの頭文字.
HLA抗原の特異性が決定されれば, 抗原名からwがなくされる. 1991年の第11回workshopでほとんどのHLA抗原からwが除かれた.

HLA-C抗原だけは, クラスIII領域の補体との混同をさけるため今も, wを付記することになっている. HLA-DPは他のHLA抗原と異なって細胞性免疫学的検査により解析されたため, 今後もwを付記する.

HLA-B座には, Bw4とBw6の2つの抗原特異性にwが付記されている. これはHLA-B抗原を2分するそれぞれに共通の抗原決定基があるため.

HLAのブロード抗原, スプリット抗原, アソシエート抗原.

解析の進行により1つの抗原が複数に分類される場合がある. 最初の抗原をブロード抗原, 複数に再分類されて命名された抗原をスプリット抗原とよぶ.

アソシエート抗原; 特定のアレル(対立遺伝子)に対し, 特異的なHLA抗体が見いだされたことにより命名されたHLA抗原.

現在広く行われている, DNAタイピング結果から推定されるHLA抗原はスプリット抗原, アソシエート抗原のレベルで区別できていることが臨床上有用.

国際組織適合性ワークショップで公認されたHLA抗原は誤りが確定したときには, 削除され番号が欠番となる.

 
 

HLA分子の構造

HLAmolecule.jpg

HLA classI, class IIの構造 ---> HLAの構造のページをみる

HLA遺伝子座(領域)の構成

HLA抗原をコードする遺伝子は第6染色体の短腕部の非常に狭い領域(6p2.11-2.3)に存在している.

 

classI-geneprotein01.jpg classII-geneprotein01.jpg

 
  • HLA classI分子の多型性(アレルごとのアミノ酸配列の違い)α1ドメイン, α2ドメインに集中しているため, DNAタイピングでは,exon2, exon3の情報が一番重要になる.
     
  • HLA classII分子の多型性は主にβ1ドメインに集中している. α1ドメインにも若干の多型性が認められる.
     
  • HLA classII分子のβ鎖をコードする遺伝子をB遺伝子, α鎖をコードする遺伝子をA遺伝子と呼ぶ.
     
  • β2 microglobulin (B2M, beta-2-microglobulin)は4 exonsの遺伝子が 15q21.1に局在する.

HLAアレルとHLA抗原(HLA型)

文献*2

HLAの分類は従来の血清学的分類(HLA抗原型)から遺伝子レベルの分類(HLA対立遺伝子型, HLAアレル)へ変わった.

HLAアレルの命名と表記法は, WHO命名委員会により決定され, 解析法の進歩によるアレル増加に対応して, 2010年4月に抜本的表記法改定がおこなわれた.*3

命名法:

HLAallele.jpg

*1  小川公明 HLAの基礎知識1 Major Histocompatibility Complex 2016; 23(2): 115-122
*2  小川公明 HLAの基礎知識2 Major Histocompatibility Complex 2016; 23(3): 185-192
*3  Nomenclatur: Nomenclatur for Factors of the HLA System, http://hla.alleles.org/nomenclature/naming.html

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