aggressive natural killer cell leukemia
Hemophagocytic syndrome/hemophagocytic lymphohistiocytosis(HS/HLH)
自己のマクロファージが自己の血液細胞を貪食するという奇妙な病態は1939年Scott and Robb-Smithらが初めて記載し*1, Rappaportら*2は単球・マクロファージ系腫瘍と考え, 悪性組織球症としてとらえてきた。1979年にRidallら*3が可逆性のウイルス関連HPS(virus-associated hemophagocytic syndrome、VHAS)の存在を初めて報告, また1983年に悪性組織球症が疑われた症例の剖検例を病理組織学的に検討,その本態が悪性リンパ腫(末梢性T細胞リンパ腫)であり腫瘍細胞が産生するサイトカインにより組織球が活性化・増殖していることが報告された.*4
HS/HLHは免疫学的生体防御反応として活性化したNK cellやT細胞が何らかの原因で制御不能, 活性持続となって自己のマクロファージ・組織球を異常に活性化した状態。貪食細胞は組織臓器に浸潤, 炎症性サイトカインを過剰に産生し多彩な症状をきたす。
最近ではhemophagocytic syndromeを血球貪食性リンパ組織球症hemophagocytic lymphohistiocytosis(HLH)とよぶ。
骨髄での血球貪食マクロファージ増加病理組織所見(剖検骨髄HE染色, CD163免疫染色)
File not found: HPSBM01_s.jpg File not found: HPSBM02_s.jpg File not found: HPSCD163_01_s.jpg File not found: HPSCD163_02_s.jpg
HLH/HS--7つの主要なsubtypeと頻度(本邦567症例の検討, 2007*5)
1. EB virus HLH(28.7%, 1歳-14歳にピーク)
2. other infection-associated HLH(24.3%, 1-14歳に多い.)
3. Lymphoma-associated HLH (LAHS/LAHLH) (19%, 成人のHLH: T/NK cell;31.4%, B cell lymphoma;46.2%)
4. Other malignancy-associated HLH (4.2% lymphoma以外の悪性腫瘍. )
5. Autoimmune-associated HLH (9.3%, -->診断基準)
6. Familial HL(家族性, 一次性HLHで遺伝子異常が分かっているHLHあり. 75%が幼児の疾患)
7. post-HSCT-HLH (1.9%, )
(8). others(8.8%; 悪性腫瘍または膠原病に何らかの感染症を合併した症例と原因不明症例)
<--成人LAHS(lymphoma-associated hemophagocytosis)の診断基準1999*6*7
EB virus, その他の感染症に起因するHLH/HSについで, 悪性腫瘍によるHLH/HSが多い。上記Ishiiら(文献5)の検討では567例のうち23.2%が悪性腫瘍関連で、その80%は悪性リンパ腫である。 1999年の高橋らの検討では津田のHPS診断基準をみたした34例のうち組織学的に悪性リンパ腫が確認されたLAHLH/LAHSは14例(41%)であった。
悪性リンパ腫関連HLH/HSは1)リンパ腫発症時(治療前), 2)寛解期, 3)増悪期の3つの発生時期がある。2)の寛解期発生のHLH/HSはリンパ腫そのものとは関係のない感染症などによるものであり通常は感染症に対する治療をおこなう。70-80%のHLH/HSは1)のリンパ腫初発時に発症し、基礎疾患の悪性リンパ腫/リンパ増殖症の治療を行う必要がある。*8
持続する発熱, 血球減少, 肝脾腫があればまずHLH/HSを疑う. 検査でトランスアミナーゼ上昇[AST(GOT)>ALT(GPT)], 高LDH, 高ferritin, 高sIL-2Rなどを認めれば限りなくHLH/HSの可能性が高くなるので骨髄検査や肝, 脾などの生検で血球貪食所見を確認する.
HLH/HSが確診されれば, 感染源や基礎疾患の有無を検索, 重傷度の判定を臨床症状と検査値から決定し直ちに治療介入をおこなう。リンパ腫/ リンパ増殖症があれば基礎疾患の治療をあわせて行う必要がある。
HLH/HSを合併する悪性リンパ腫の臨床病理学的分類
種々のリンパ腫(anaplastic large cell lymphoma(ALCL), gammadelta T cell lymphoma, Hodgkin lymphoma, adult T cell lymphomaなど)にHLH/HSの合併が報告されているが大きく分類するとT/NK lymphomaとB cell lymphomaに分けられる.
高橋らの分類
1)T/NK-LAHS typeⅠ
病理組織型では nasal/ nasal type T/NK cell lyphomaで鼻腔, 副鼻腔, 皮膚など節外性腫瘤を形成, リンパ腫の増悪期、再発時にHSを発症する。
2)T/NK-LAHS typeⅡ
nasal type T/NK lymphomaあるいはcytotoxic large T cell lymphoma, 肝脾骨髄にリンパ腫を発症と同時にLAHSを来たす。
3) B-LAHS
diffuse large B cell lymphomaで約半数にintravascular lymphomatosis(IVL)がある。リンパ腫の部位は肝脾骨髄. リンパ腫発症と同時にLAHSを発症。
河らのHLH/HS発症リンパ腫病型分類
1) T/NK-LAHS
EB virus-infected T/NK-LAHSが成人LAHSの約半数例を占める。年齢は青壮年から高齢に分布. 若年者のT/NK-LPDを考慮にいれると全年齢層にみられる。
節外性で, 腫瘤形成する鼻腔原発やextranodal nasal type(皮膚や消化管)の他, 肝, 脾, 骨髄など全身型で腫瘤形成性に乏しい. 病理所見は多型性, 壊死, 血管中心性, 血管浸潤性病変を特徴とする. CD2, CD3, CD4, CD8, cCD3, CD56, TIA-1, perforin, granzymeBなどが腫瘍細胞に陽性.
TCR, EBV-terminal probeなどのclonalityを調べる. EB virus抗体価とパターン, EBER-ISH, 末梢血EBV-DNA定量などの検査が必要となる.
EBV関連T/NK細胞増殖症(EBV-associated T/NK-cell LPD)
慢性活動性EBV感染症, 蚊アレルギーなどはHLH/HSを発症しやすく経過中に腫瘤を形成することが少なくない. 本症の多くはEB virus感染 T/NK細胞が単クローン性の増殖を示す。病理形態では成熟顆粒リンパ球が増殖している。(従来のリンパ腫・白血病の定義には一致しない)
2) B-LAHS
B細胞性リンパ腫の7%(7/105)にLAHSが見られたと報告されている. 平均年齢は60歳をこえ高齢者に多い. 組織型はdiffuse large B cell, 表現型はCD19+, CD20+, sIg+, CD5±, CD10+。
約半数がAsian variant IVL(intravascular lymphomatosis)を呈し骨髄浸潤や, 肝脾腫が特徴的.
multiorgan failure
What nephrologists need to know about hemophagocytic syndrome--->HPSkidney.txt
CDCのHLHページ--->Hemophagocytic Syndromes and Infection
CD47-SIRPα(signal regulatory protein alpha)シグナルの発見*9
CD47-SIRPαは正常細胞のdon't eat me シグナルとして機能している。
CD47欠損マウス新鮮赤血球を正常マウスに投与すると, 補体, リンパ球, 抗体非依存性に赤血球寿命が短縮した.*11 MφのSIRPαをブロックすると正常赤血球がCD47欠損マウス赤血球のように貪食されるようになった.*11
SIRPα変異マウスでは正常CD47をもつ赤血球寿命は短くなり貧血が見られたが, CD47欠損マウスではこの貧血は見られず, 赤血球貪食,除去には CD47分子も必要であった