HLA; Human Leukocyte Antigens

免疫と免疫病理

移植の成否を決定する分子-自己の細胞の旗印となる分子

ヒトは人類として共通の遺伝子をもち,その産物のタンパク質から構成されているから基本的には同じ一群のタンパク質からできているはずです.
人種や家系により少しづつ構造の違うたんぱく質もありますが,その多型性はきわめて限られています.しかし他人からの臓器・組織移植は強い拒絶反応にあい成立しません.
「自己」と「非自己」は免疫系により厳格に識別されています.

この識別はひとりひとりの細胞表面に,ほんの少しずつ異なった構造をもつ例外的な多型性をもつ一群のタンパク質分子を持っていることで起こります.
この分子が体のすべての細胞を同じ自分の細胞と標識しているのです. 自分の細胞にはすべて同じタンパク質の「旗印」がついて「自己」と「非自己」を決定している.

T細胞(Tリンパ球)は全身を循環して細胞の「旗印」を見張っています.
「旗印」の異なる他人の細胞が侵入するとT細胞はそれを攻撃して排除します.これが移植の拒絶反応です.
自己/非自己を決める「旗印」となるたんぱく質の一群を組織適合抗原とよび,そのうち最も強力な移植抗原となるものを主要組織適合遺伝子複合体(MHC)*1という.
少なくとも6種類の多型性をもった分子のグループが存在するために複合体とよぶ. ヒトのMHCは詳細な研究からHLA(human leukocyte antigen)*2*3であることがわかっています.

MHC分子の働き; 病原体由来ペプチド断片を結合し, それらをT細胞が認識可能なように細胞表面に提示すること。*4

主要組織適合抗原の構造

MHCクラスI分子の構造

groove02.png

α鎖α1とα2ドメインは抗原結合部位を形成する.

 
 

Class I分子は内因性ペプチドをはさんでいる &ref(): File not found: "arrow46-031.gif" at page "MHC; major histocompatibility complex";

 
  • 生体内で自己由来のペプチドを挟んでいる場合は免疫反応はおこらない.
     
  • 細胞ががん化したり, ウイルス感染をおこした場合はがん特有の, またはウイルス特有のペプチドを挟み, CD8陽性T細胞(細胞障害性T細胞)に非自己と認識され細胞は破壊される.
     
  • class Iを介する反応はがんワクチン療法にも応用される。
     
     

MHCクラスII分子の構造

MHCclass2a.png

MHC遺伝子の構成

 

ヒトの主要組織適合遺伝子複合体はHLAと同じ分子であり,この分子を決定する遺伝子は第6染色体の短腕 p21に直列に配列している.

chr6-MHCmap.jpg
 
 
classI-geneprotein01.jpg

classI 遺伝子

MHCclass1gene.png
 

classII遺伝子

classIIHLAgene.png
 

MHCの多型性

 

クラスIとクラスII抗原では多型性に関与するアミノ酸の残基のほとんどがペプチドが結合する溝に存在する.つまり変異はほとんどが抗原ペプチド結合溝の底面かαへリックスの側面に存在することになる


*1  Snell GD, 1903-1996; the father of immunogenetics and the MHC. 1936年純系マウスを使った皮膚移植実験をおこなう
*2  DAUSSET J, et al. Identical nature of the leucocyte antigens detectable in monozygotic twins by means of immune iso-leuco-agglutinins. Nature. 1957 Dec 21;180(4599):1430.
*3  DAUSSET J, et al. Identity of leukocytic antigens detectable from immune iso-leuko-agglutinins in monozygotic twins. C R Seances Soc Biol Fil. 1957;151(2):244-6.
*4  笹月健彦監訳. Janeway's 免疫生物学 原書7版; 2010: pp181-217 南江堂 東京

トップ   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS