MMの骨髄検査
表面マーカ FCM法による骨髄腫細胞表面抗原タンパク(表面マーカ)発現検索はMMの診断のみならず, 予後予測や治療後の微少残存病変(MRD)評価に有用である. MM細胞の表面マーカとして CD38, CD138が最も頻用されている. CD38は造血細胞に広く発現がみられるが,正常形質細胞ではCD38の発現レベルが高いことが特徴である. CD138は形質細胞に特異的に発現している. (syndecan-1. 肝細胞など上皮にも発現する.) B細胞マーカであるCD20, CD22, sIgも一部の骨髄腫細胞に発現する. 表面マーカの発現パターンにより予後が異なることが知られていて、CD38発現低下, CD117(c-KIT)陰性, CD81陽性が予後不良と関連するという報告がある.
現在8~10の表面マーカを同時に検出するマルチカラーFCM法により, 腫瘍性形質細胞と正常形質細胞を2x10-6~1x10-5に一個のレベルで識別が可能にでMRDの判定が行えるようになっている. 43. Flores-Montero J, et al. Immunophenotype of normal vs. myeloma plasma cells: Toward antibody panel specifications for MRD detection in multiple myeloma. Cytometry B Clin Cytom. 2016 Jan;90(1):61-72. doi: 10.1002/cyto.b.21265. Epub 2015 Jul 31. PMID: 26100534.
Multiple myeloma 治療効果判定
IMWG基準に基づいて治療効果判定をおこなうことが推奨される.
血清M蛋白≧1000mg/dlあるいは尿中M蛋白≧200mg/24時間を検出可能な場合はこれらを測定可能病変とし, これに満たない微量M蛋白で, 血清遊離軽鎖(sFLC)の異常を検出できる場合はsFLCを用いて判定する.
治療効果判定は連続した2回の検査結果をもとにおこなうことが推奨されている.(データの誤りがないことを確認するため)
微少残存病変/測定可能残存病変(MRD)は本邦では一般的に骨髄検体を用いたmultiparameter flow cytometry(MFC)により評価され, 生存期間(無増悪生存期間(PFS), 全生存期間(OS)のサロゲートマーカとして有用である.
完全奏功(CR)の定義: 1998年欧州骨髄移植学会またはBladeの基準.
2006年 IMWGによる効果判定基準が提唱される.
免疫固定法よりも検出感度にすぐれたsFLC(血清遊離軽鎖)測定法を用いてより深い奏功を示す厳格な完全奏功stringent CR(sCR)が定義された.
その他 最良部分奏功(very good partial response(VGPR), 部分奏功(PR), とprogressive disease(PD)が細かく定義されている.
2011年 IMW(International myeloma workshop) consensus panelでminimal response(MR)とstable disease(SD)が定義され, immunophenotypic CR(iCR)とmolecular CR(mCR)が追加された.
iCRは,よりdeepなCRを示すsCRが確認され, MFCによって異常な免疫表現型を呈する形質細胞が存在しないことと定義される.
mCRは CRが確認された場合において, allele-specific oligonucleotide PCR(ASO-PCR)で患者さん由来の異常な遺伝子産物が検出されないことと定義される.
sCR stringent complete response CRの定義に加えて
-血清FCL(sFLC)κ/λ比が正常 -(かつ)免疫組織化学で骨髄中単クローン性形質細胞が消失(100個以上の形質細胞をカウントして, κ型; κ/λ≦4:1, λ型; κ/λ≧1:2
CR (complete response) 血清および尿中Mタンパクが免疫固定法で陰性 かつ 軟部組織形質細胞腫の消失 かつ 骨髄中形質細胞が5%未満.
FLCのみ測定可能である患者さんはFLC比の正常化(0.26~1.65)にくわえてCR判定基準を満たすことが必要
VGPR very good partial response 血清および尿中Mタンパクは免疫固定法で陽性であるが ,タンパク免疫電気泳動では陰性 あるいは 血清Mタンパクが90%以上減少し, かつ尿中Mタンパクが100mg/24時間未満. FLCのみ測定可能である患者さんはVGPRの定義に加えて腫瘍由来(involved)FLCと非腫瘍由来(uninvolved)FLCの差(dFLC)が90%以上減少する.
PR (partial response) 血清Mタンパクが50%以上減少し, かつ尿中Mタンパクが90%/24時間以上または200mg/24時間未満まで減少. 血清と尿中Mタンパクが測定可能でない場合MタンパクのかわりにdFLCが50%以上減少.
血清および尿中でMタンパクやFLCが測定不能である場合は, 診断時の骨髄中形質細胞割合が30%以上であれば治療後に50%以上減少 上記に加えて診断時に軟部腫瘍があれば, サイズが50%以上減少.
MR(minimal response) 血清Mタンパクの減少が≧25%かつ≦49%, かつ尿中Mタンパクの減少が50~89%/24時間 上記に加えて診断時に軟部腫瘍があればサイズが50%以上の減少.
SD(stable disease) ; CR, VGPR, PR, MR, PDのいずれの基準も満たさない場合.
PD(progressive disease)
Clinical relapse