MPL proto-oncogene, thrombopoietin receptor (MPL)
関連ページ---MPL proto-oncogene, thrombopoietin receptor (MPL), Essential thromobocythemia 本態性血小板血症
page名改新. 06Mar 2017
MPL:myeloproliferative leukemia virus oncogene [ Homo sapiens ]
Gene ID: 4352, Official Symbol: MPL provided by HGNC
Also known as MPLV; TPOR; C-MPL; CD110; THCYT2
OMIM http://omim.org/entry/159530
1990年, 異なる系統の骨髄造血細胞を不死化する能力のあるマウス骨髄増殖白血病ウイルスから, がん遺伝子, v-mpl が認められた。1992年にはヒトホモローグのc-mpl がクローン化される。
シークエンスデータより, c-mplは造血受容体スーパーファミリーの一員と相同性のあるタンパクをエンコードしており, c-mplをアンチセンスオリゴで妨害すると巨核球コロニー形成が障害される。
c-mplのリガンドであるトロンボポイエチン(TPO)が1994年にクローン化された。TPOは巨核球と血小板形成の主要な制御因子である。
c-mpl遺伝子がエンコードするタンパク質, トロンボポイエチン受容体[TPOR](c-MPL(Myeloproliferative leukemia protein)やCD110などとも呼ばれる)
近年, MNPの症例にthrombopoietin receptor(MPL)geneの新たな2つの体細胞変異が報告された。
MPL W515LおよびW515K(前者の頻度がより高い)は膜貫通ドメイン(492-513aa)ごく近傍にあたり, 受容体のダイマー形成に重要な部分と考えられる。トリプトファンがロイシンあるいはリジンに変換された単アミノ酸変化はJAK V617Fと同様にJAK-STAT経路の構造的活性化をまねくgain-of-function変異となっている。*1*2
MPL mutation検出のPCR primer *3
A) 5' CCTGCTGCTGCTGAGGTTGC 3' : Allele-specific forward primer 3' endより3番目のG(Tryptophan:wild-type)-->T(W515L):トリプトファンがロイシンに変換。
B) 5' AGTAGGGGCTGGCTGGAT 3': outer, forward primer (intron9に設定。)
C) 5' CTAGTCGCCGAGGTGAGC 3': reverse primer (intron 10 ): 5' outer(wild-type)のPCR, AS-PCR両方に使うようです。
94℃ 30sec, 65℃ 30sec, 72℃ 60sec x 35 cycles
wild-type 409bp productがouter pairにより形成、mutantは297bpのバンドをあらわす。
文献*4によればJAK2 V617F-negative ET''patientsの8.5%, JAK2 V617F- negative PMFの10%にMPL W515の変異が検出されている。PVでは0%であった。
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TET2 and ASXL1 pathogenic mutations are found in 8% of MPN lacking JAK2 and MPL mutations, whereas IDH1, IDH2, and c-CBL mutations are not detected in this subset of patients.*5
CALR:calreticulin
also known as: RO; CRT; SSA; cC1qR; HEL-S-99n
Location: 19q13.3-p13.2, 9 exons
OMIM myelofibrosis http://omim.org/entry/254450 thrombocythemia 1 http://omim.org/entry/187950
carleticulin(CALR) http://omim.org/entry/109091
essential thrombocytemia(ET), myelofibrosis (MF)ではJAK2変異, MPL変異がおのおの50-60%, 5-10%に認められる。
両方の変異が認められない30-45%の症例には特異な遺伝子異常は検出されていなかった。
JAK, MPL変異のないMF 6例にwhole exome sequencingを行い全例にcalreticulin(CALR)をコードするCALR遺伝子のexon9に挿入, 欠失の体細胞変異を認めた。*6
CALR(calreticulin)は高度に保存された, 多機能なendoplasmic reticulum(ER)タンパク質である。ER内ではカルシウム恒常性に不可欠な役割とタンパク質折りたたみに働いている。
ERの外では, 細胞質と膜表面に存在し, インテグリンが仲介する細胞接着, 遺伝子の核輸送, プログラムされた細胞除去, 免疫的細胞死を制御している。
CALRは特異な機能をもつ3つのドメインより構成される。N, Pドメインは主としてタンパク質シャペロン機能に関与している。
シャペロン(chaperone)とは、他のタンパク質分子が正しい折りたたみ(フォールディング)をして機能を獲得するのを助けるタンパク質の総称。分子シャペロン(molecular chaperone)、タンパク質シャペロンともいう。
一方Cドメインは主としてendoplasmic reticulum(小胞体)内のカルシウム調節にかかわっている。
さらにCドメインはKDELタンパクシークエンスを含み, 小胞体からのタンパク質分泌に関係している。
primary myelofibrosis(PMF), essential thrombosis(ET)のgeneticな異常所見*8 *6*7 *9 *10 *11
フィラデルフィア染色体陰性のMPN(ETとPMF)で最多の遺伝学的異常はJAK2V617Fで症例の50-60%に検出され診断マーカになる。 MPL遺伝子異常はさらに4-10%のETとPMF症例に認められる。CALRのexon9, 体細胞異常(挿入/欠失)はJAK2V617Fについで二番目に多いET, PMFの遺伝子異常である。JAK2, MPLがwild typeのET, PMFにおいて, 50-90%の例に検出され, 重要なことはpolycytemia veraにはCALR遺伝子変異は見つからないこと。
と記載したら、calreticulin mutationを示す, JAK2V617F(-), MPL(-)のPVが報告されました。*12 polycythemia vera(PV)症例の末梢血顆粒球にCALR遺伝子変異 del52bpが認められ, BFU-Eにも同様の変異が検出されたとの報告です。
このようにCALR変異はET, PMFの診断に重要な分子マーカであり, 予後においても重要な因子である。PMFではCALR変異があると良好な予後を示す。triple-negative (JAK2-, MPL-, CALR-)の症例はhigh-riskケースである。-->triple-negtive ETの新しい遺伝子変異を参照
ETにおいては, CALR変異の予後に与える影響はまだ確定していない。しかし, JAK2,MPL変異のケースと比較して, 血栓症のリスクは低いとされる。
CALR変異はET,PMFのほかRARS-Tにも低頻度に認められている. (3/24, 12.5%) ¬e{:
JAK2V617F allele-specific PCR*13
95℃ Xmin(Hot start Taqの活性化で, Taqにより異なる)
94℃ 30sec
58℃ 30sec
72℃ 45sec 35cycles
72℃ 5min - 4℃ soak
MPL-W515L allele-specific PCR primer*3
MPL specific primer(AS-PCR forward primer): 5'CCTGCTGCTGCTGAGGTTGC 3'
internal control 409bp, mutant band 279bp. 2つのforward primersを加えてPCR. mutantがあれば2本のバンドが出る。
94℃ 30sec
65℃ 30sec
72℃ 1 min x 35cycle
CALR exon9 sequencing primer*7
touch down PCR
1. 95℃ X minでTaqを活性化
2. 94℃ 30 sec, 67℃ 30 sec (-1.0℃/cycle), 72℃ 30 sec x 10cycle
3. 94℃ 30 sec, 57℃ 30 sec, 72℃ 30 sec x 29 cycle
4. 72℃ 10 min, 4℃ soak
CALR exon9 mutation--> high-resolution melting analysisによる同定の論文*14*15
CALR遺伝子変異は50種類以上同定されている.すべての変異がCドメインをコードするC-terminusのexon9の特定の領域に見つかる。変異によってフレームシフトをおこし36個のアミノ酸からなる共通の変異型タンパクを生じる. 変異タンパクではC末端の荷電が陰性から陽性に変化する。*6
Araki M, et al. Activation of the thrombopoietin receptor by mutant calreticulin in CALR-mutant myeloproliferative neoplasms Blood 2016; 127(10): 1307-1316 Fig.4 A-C
CALRのNドメインがないとC-MPLへの結合はなくなる。Nドメインだけだとかなり結合する。Pドメインをなくすと非常に結合能が高まる。(CALRはより強くc-MPLへ結合するようになる。). TPOがなくてもautonomous growthがおこるのはfull lengthのIns5のみである。このことから・・・
1) c-MPLへ変異CALRが結合するにはfull length, すべてのパーツ(ドメイン)が必要である。
2) PドメインはNドメインへのc-MPL結合に抑制的に働いている。野生型のCALRではPドメインの抑制作用によりc-MPLへダイレクトに結合することはほとんどない。
3) 変異CALRでは, あらたにできたC末端側, 陽性荷電チャージ部分がPドメインの抑制作用をさらに抑制している。このためc-MPLとCALRの結合が増強される.
CALRはerythropoietin receptorと結合するが(Araki M, et al. supplemental data),活性化できないことから(Araki M, et al. Figure 1D, Chachoua I et al. Figure 1B) PVの原因変異とはなり得ない。
川崎医科大学 藤原英世先生からご教示いただきました(2019/3月). (注; この抗体をお勧めしているわけではありません. また, research use onlyです.)
dianova社 Mouse monoclonal antibody(CAL2) Against All CALRETICULIN(CALR) Mutations
変異CALR C-neoterminusへの抗体.