Official diagnosis: B-cell lymphoma, unclassifiable, with features intermediate between diffuse large B-cell lymphoma and classical Hodgkin lymphoma.*1
WHO2016 4thEdの定義では B-cell lymphoma, unclassifiable, with features intermediate between diffuse large B-cell lymphoma and classical Hodgkin lymphomaの名称で疾患単位記載され, このdiffuse large B-cell lymphomaは特に, primary mediastinal (thymic) large B-cell lymphoma [PMBL]の特徴とされている. mediastinal 'grey zone' lymphomaの名称は1998年に最初にもちいられた. *2
通常はほどんどが縦隔病変と関連しているが, 同様の症例が末梢リンパ節を原発巣として報告されている. 公式の煩雑な診断命名法を避けるために縦隔病変は Mediastinal grey-zone lymphoma(MGZL)と, また非縦隔病変は単にGrey zone lymphomaと呼ばれる. 同義診断名: Mediastinal grey-zone lymphomaとHodgkin-like anaplastic large cell lymphoma.
MGZLは若い男性, 普通 20-40歳 で発症.まれに小児に発症する.
縦隔病変は高齢患者には見られないことが多い. cHLとおなじく, 欧米に頻度が高い. 黒人やアジア人の頻度は低い.
cHLとPMBLの併存症例や同一患者さんにcHLとPMBLがつづけて発症した場合は厳密にはMGZLには含めないが, 生物学的には関連する現象と考えられる. 続けて発症する場合はcHLが先で, PMBLが続いておこることが多い.
MGZLの病理学的特徴は, 形態学的所見およびphenotype パターンがcHLとPMBLの間でスペクトラムを形成していることである.
Classical HL類似MGZL;
この形態は31%の症例に認められ,結節性硬化CHL(NSCHL)に酷似している.その特徴は,様々な結節周囲の線維化を伴う結節状増殖パターンである(25%の症例に見られる).
多型HRS細胞は分散しているか,あるいは様々な形の凝集やシート状増殖を示している.壊死が見られることもある.
PMBLに特徴的なクリアセル(淡明細胞)は見られない.
PMBL類似MGZL; MGZL, PMBL-like.
PMBL-like patternは6%の症例に認められ,大きなクリアセル(淡明細胞)成分を含むPMBLに類似している.繊細なコンパートメント状の線維化が見られるが,壊死はまれである.
形態学的スペクトルの対極をなすこの2つのパターンの間には,CHL様とPMBL様の特徴が混在し,どちらか一方が優勢となる形態学的範囲が存在する(それぞれ,症例の約31%と32%を占める).その形態は,CHL様とPMBL様の特徴が混在しており,どちらか一方が優勢である(それぞれ約31%と32%の症例).
大多数の症例において,MGZLの共通の形態的特徴は,CHLやPMBLで通常見られるものよりもはるかに顕著な多形性である.さらに,NSCHLに見られるような好酸球,リンパ球,形質細胞の背景炎症細胞浸潤は見られないか,あるいはそれほど顕著ではない.*3*4
GZL病理組織所見の諸相 をみる. <--テキストクリックでPDFが閲覧できます.(ID, psswrd 必要)
Immunophenotype
- MGZLの免疫表現型も,CHLとPMBLの中間のスペクトルを示している.診断上重要なのは,特定の免疫表現型がMGZLの特定の形態パターンと関連していることであり,これが最終的にはCHL,PMBL,DLBCLとの区別の鍵となる.
- CHL,PMBL,DLBCLとの区別は,CHL様,PMBL様,およびその間の移行期のいずれにおいても,完全に分化したB細胞表現型を呈することを特徴としている.すべての腫瘍細胞において, CD45,CD20,CD79a,PAX5は強く均一に発現し,通常,OCT2とBOB1も同時に発現している.
- CHL様パターンでは,強いCD30の発現と種々の程度のCD15陽性が観察される.
- CD20,CD79a,PAX5,OCT2,BOB1などのB細胞マーカー発現は,PMBL様の形態を持つ症例でのみ見られ,時には複数の有意な欠損が認められる.
- MGZLの特徴は,免疫グロブリンの発現がないことであり,CD10は陰性で,ほとんどの症例がBCL6とMUM1を共発現している.*5*6*7*8*9
- PMBLを特徴づけるマーカーであるMALおよびCD23の発現は様々であり(25~61%),PMBL様の形態を有する症例に多く見られる. 報告によれば, 85%の症例でCD23陽性細胞が認められている.*10
- PMBLの最も特異的なマーカーの一つは, MAL遺伝子/タンパク質の発現である.*11MALは, 胸腺髄質のB細胞リンパ球および成熟T細胞のサブセットに発現している.*12 MALタンパク質の発現は、市販のMAL抗体(E1クローン、Santa Cruz社)を用いた免疫組織化学によって日常的に確認することが可能.
MGZLのEBV陽性について.
WHO blue book2016, 4thEdの記載では, MGZLのほとんどの症例はEBV陰性で, EBERやLMP1が陽性の場合, 特に高齢の患者ではEBV陽性DLBCLを疑う必要があるとされる. しかし, 「まれにEBV陽性のMGZLもある」と文献*13があげられている.
MGZLにおけるEBV陽性症例の報告は増加しており,4~24%の症例に認められるといわれている.これらの症例はCHL様形態を特徴とする.この組織所見は鑑別診断の幅を広げてしまい,特に縦隔外病変や高齢の患者では診断が難しくなる*14*15*16*17
最近では,混合細胞性CHLの形態を有する主に縦隔外MGZL症例のシリーズがアジアのコホートで報告されており,高齢であること,自己免疫疾患や免疫抑制を伴うことが多いことが特徴. *18
Grey zone lymphomaのgenome profileは前縦隔(胸腺ニッチ)や縦隔外など発生部位によって異なることがSarkozyらにより報告された.(Blood 2021)*19;
現在のWHO分類におけるGZLの定義では,縦隔部と非縦隔部の両方に発生した腫瘍をGZLとして容認している. しかし縦隔外/非縦隔部GZLは高齢者に多く発生することが指摘されている.*20。
また, EBV陽性および陰性の症例をGZLのカテゴリーに含める研究があるが*21, EBV陽性のGZLヴァリアントは例外的で稀な疾患であるという前提に立っている*22。
Sarkozyらのゲノム研究は,これらの不確実性の一部を明らかにしている。
■症例数が少ないという制限はあるが,縦隔外/ 非縦隔型GZLは複数の疾患単位を含む(異質である)可能性が高く, 2つのサブグループが考えられる.
Arkozyらの発見は,概念的にも実用的にも意味があり,今後の調査に値する興味深い問題を提起している。
興味深いことに,今回の研究では,5例のpleomorphic EBV-DLBCLが縦隔で診断され,非縦隔例に見られる変異を欠いていた. これらの症例の適切な分類は不明であるが,NS CHLを含む多くのB細胞腫瘍でEBVが陽性となる可能性があることを忘れてはならない。今回の研究は数が限られており,標的配列に使用されたパネルは,EBVが発症原因のリンパ腫における変異のスペクトルを捉えていない可能性がある. EBV陽性のB細胞リンパ増殖性疾患のゲノム解析を進めることで,これらの稀な症例に対する理解が深まるかもしれない.
GZLという用語は,特にCHLとDLBCLという2つのよく定義された組織の間のハイブリッドな形態学的および表現型の特徴を持つリンパ腫に使われてきたが, 結節性リンパ球優位のホジキンリンパ腫とT細胞/histiocytic-rich large B-cell lymphomaの中間的な特徴を持つリンパ腫や,EBV陽性のCHLとEBV陽性のDLBCLなどにも使われてきた.*23
Sarkozyらの研究は,すべてのGZL,さらにはCHLとDLBCLの中間的なGZLが同じ生物学的カテゴリーに対応するわけではないことを示している. GZLは,B細胞新生物のスペクトラムと同様に異質なものかもしれない.
これらの新生物の病理学的および分子的可塑性をよりよく理解し,GZLという用語をより正確に使用して,実体とは異なった腫瘍をひとまとめにしないようにする必要がある. GZL,特に縦隔部GZLの臨床管理は,まだ十分に定義されていない.*24