PIGA(phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis class A)遺伝子が欠損した単独あるいは複数の造血幹細胞クローン拡大による後天性造血幹細胞疾患.*1
Xp22.2 7exons
この遺伝子は GPIアンカー合成経路の最初の中間体である,N-acetylglucosaminyl phosphatidylinositol (GlcNAc-PI)の合成に必要なタンパクをコードする. GPI anchorは多くの血球表面にアンカータンパク質を供給する糖脂質.
PNHにおいて夜間の溶血による「発作性」早朝ヘモグロビン尿をきたすのは1/4~1/3であり, 基本病態は慢性血管内溶血である.
血管内溶血に加えて, 血栓症, 骨髄不全が三大主徴とされる. 慢性腎不全やまれであるが白血病化がある.
GPIアンカータンパク, CD55, CD59を欠損する血球は補体による細胞破壊のターゲットになり, 赤血球は補体感受性赤血球とよばれる。感受性の違いにより, PNH-Ⅱ, Ⅲとされ, ⅢではGPIアンカー膜タンパクが完全に欠損している。
PNH先行随伴病変
FLAER
PNHのflowcytometry検査で, 細胞表面上のGPIアンカー型タンパク質のアンカー部に特異的に結合する遺伝子組み換えアエロリジンという蛍光細菌タンパクフレア(fluorescent-labeled inactive toxin aerolysin; FLAER)を使ってPNH血球を検出する新しい方法が用いられている。FLAERは赤血球を凝集させるために, 赤血球解析には使用できないことが欠点。
CD55/ CD59
正常細胞ではCD55, CD59がともに陽性. PNH症例血球ではCD55-, CD59-クローンが出現する。程度は症例によりさまざまで1~99%. 0.01%程度のPNH血球を検出できる高精度FCMが用いられる. 顆粒球に対しては上記FLAERを用いた検査が推奨されている.
CD55, CD59いずれも, 血液細胞のGPI-anchor(glycosyl-phosphatidylinositol anchor)の部分で膜に結合しているGPI 膜結合蛋白で, 補体活性化を抑制する補体調節タンパク質. CD59が補体による溶血阻止により重要と考えられている.
エクリズマブeculizumabは, PNHに有効な抗C5抗体薬として開発された.2007年に開始されたAEGIS試験により安全性・効果が確認され2011年に薬価収載.
エクリズマブは補体C5のepitopeと結合し炎症性タンパクであるC5a(アナフィラトキシン)放出を阻害するとともに, C5転換酵素の作用を阻害し, これに続くC5b-C9膜侵襲複合体(MAC)の生成をさせない. 病原体オプソニン化や免疫複合体除去には影響をあたえないため, 重要な補体機能は保持される.
エクリズマブ投与でPNH赤血球は増加する(壊れない).LDHは減少し血管内溶血は抑制される。しかしCD55が欠損しているためC3bとその分解産物であるC3d, C3dgがPNH赤血球上に蓄積し, 血管外溶血が顕在化してくる.
患者さんのLDHは著明に減少するのに貧血改善が思わしくない, 黄疸が持続するのはこの血管外溶血によるものと考えられる.直接Coombsテストは陽性とならないが, FCMを用いるとC3成分の蓄積が検出される.*5
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