Multiple myeloma--Clinical diagnsosis and Pathology
Multiple myeloma-molecular pathogenesis
● 新たな骨髄腫バイオマーカのSLiM基準(骨髄単クローン性形質細胞≧60%, 遊離軽鎖比≧100, MRIで骨病変>1)が従来のCRAB基準に追加された.
● 骨髄単クローン性形質細胞≧60%
- SMM(Smolderling multiple myeloma)276例中, 2%(6例)が骨髄形質細胞(BMPC)比率が60%以上であり, 診断後2年以内に95%が症候性骨髄腫に進展した*4無増悪生存期間中央値7.7ヵ月, 14ヵ月で5/6例(83%)がMMになるか死亡.
- 651例SMMでの検討では, 21例(3%)が骨髄形質細胞(BMPC)比率が60%以上, 2年以内に95%がMMになる. MMへの進展期間中央値7ヵ月.
BMPC比率が≧60%では, 貧血を示すことが多いが, 無症候であっても, 進行がはやいため, MMとみなすべき。
● 血清遊離軽鎖 serum free light chain(FLC)
- 正常κ/λ比は0.26~1.65 (kappa型; 3.3~19.4mg/dl, lambda型; 5.7~26.3mg/dl: SRL)
- クローナル形質細胞増殖疾患では, FLC比が異常になることが多く, MGUSの33%, SMMで70%, MMの90%以上が異常値を示す.
FLC比異常が存在すると, MGUS, SMM, ALアミロイドーシス, 孤在性形質細胞腫が進展する可能性が高い. *5
● MRIで巣状病変が > 1
non-IgM monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)
smoldering multiple meyloma (SMM)
弧発性形質細胞腫 solitary plasmacytoma
- MGUSは, 50歳以上で約3%(M:F=4.0vs2.7)に, 75歳以上で約5%に認められ比較的遭遇頻度の高い疾患.
- MGUSは, non-IgM, IgM, light-chainの3つに分類される. non-IgM MGUSは骨髄腫, 弧発性形質細胞腫, 免疫グロブリン関連アミロイドーシスへの進展が年 1%とされる.
- IgM-MGUSはマクログロブリン血症, 免疫グロブリン関連アミロイドーシスへの進展が年 1.5%とされる。
- light-chain-MGUSはlight-chain MM, ALアミロイドーシスへの進展が1年で 0.3%とされている
- MGUSとされた患者さんは, 3から6ヶ月ごとに臓器障害の有無, 血清・尿中Mタンパク量の測定, 必要に応じて骨髄検査や骨X線検査が必要。
- MGUSの血清M蛋白量は1.5g/dL未満の場合が約80%で, 2g/dL以上は約5%とまれであることから, M蛋白量が2g/dL以上ある場合はSMMやMMを考慮する必要がある.
血清免疫固定法によりM蛋白とそのtypeが確認される。クローナルな形質細胞は免疫グロブリン重鎖と軽鎖あるいは, 軽鎖のみを産生する. 頻度は以下のとおり.*6 *7
●IgG - 69 %, ●IgM - 17 %, ●IgA - 11 %, ●IgD - <1 %
●Biclonal - 3 %
●Kappa light chain - 62 %, ●Lambda light chain - 38 %
IgD Mタンパク陽性の症例は, ほぼ多発骨髄腫, ALアミロイドーシス, 形質細胞性白血病に限られるが, 2例のIgD-MGUSが報告されている. *8
Palumbo A, et al. (J Clin Oncol 2015)*10
high-risk, 予後不良とかかわる染色体転座
t(4;14)転座
t(4;14)転座, t(4;14)(p16.3;q32)は多発骨髄腫の染色体異常で2番目に多く, 15~20%に認められる.
染色体末端部の転座のため, Gバンド法やSKY法では検出不能であり, FISHあるいはRT-PCRにより検出する.
転座Ig領域切断点は, ほとんどの例でスイッチ領域にあり4p16切断点はFGFR3遺伝子上流50-100kb, MMSET遺伝子内にあって,結果としてFGFR3遺伝子の異所性発現と同時に異常なIgH-MMSETmRNAの発現も認められる.
転座によりIgHのイントロンにあるエンハンサーが, 4p16.3にあるMMSET(multiple myeloma SET domain protein)およびFGFR3の2つの遺伝子に近接してこれらの遺伝子を過剰発現させると考えられている.
t(4;14)転座をもつmyelomaのうち約30%には受容体型チロシンキナーゼFGFR3の高発現が認められない. 一方全例にヒストンリジンメチル化酵素 MMSETの高発現が見られるため, t(4;14)骨髄腫の発がんにはMMSETが重要であるとされている*11
t(14;16)転座
t(14;16)(q32;q23), c-MAF, 大MAF群に属する転写因子であるc-MAFは, 通常形質細胞には発現していないが, Ig転座によりmyeloma患者さんの4-5%に異所性過剰発現している。
c-MAFのほか, t(8;14)(q24.3;q32)でMAFAが, t(14;20)(q32;q11)でMAFBが過剰発現し大MAF群転写因子は多発性骨髄腫患者さんの7-8%で過剰発現している.