Hodgkin lymphoma
Blimp1/PRDM1
Oct-2 and Bob.1†
Oct-2†
Oct-2(octamer-binding transcription factor2)*1*2*3*4*5
Oct-2-->NCBI geneのページ19q13.2に局在. 正式名:POU class 2 homeobox 2
OCT2の発現はB-cellおよび神経細胞に限られる.*6
OCT-2の免疫染色は, 正常なリンパ組織では主としてB細胞に限られており, 一部例外を除き, ほとんどのT細胞新生物では見られない.*7
- 一次RNA転写物は違ったスプライシングにより異なるヴァリアントを生じ,それによって遺伝子発現を活性化したり抑制したりできる。
- B-cellで生じる型は遺伝子発現を活性化するほうが優位であり, 一方神経細胞で生じるのは阻害効果優位であって単純ヘルペスimmediate-early geneと細胞チロシンハイドロキシラーゼ遺伝子の両者発現を抑制することができる。
- このように Oct-2はB-cellおよび神経細胞の細胞遺伝子発現調節をおこなうと同時にウイルスのlatencyコントロールに重要な役割をはたしている.
- B-cellにおいてはIg promoterの転写活性化に重要な役割をはたすことが実験でしめされている。またB-cell増殖・分化に重要なB細胞遺伝子, CD20, CD79a, Ig, J chainなどをコントロールしている。
- B-cellの免疫グロブリン遺伝子発現にはimmunoglobulin promoterのoctamer siteと転写因子POU family[Pit-1(pituitary-specific transcription factor 1), Oct-1およびOct-2]の一員のいずれかとの結合が必要である*8*9
- Ig promoterへの正確な結合と活性化のためにはOct2は共転写因子(cotranscription factor)のBob.1との相互作用が必須である。*10*11
■ OCT2 免疫染色*12
正常および反応性末梢性リンパ組織におけるB細胞転写因子OCT-2の発現
- 胚中心暗帯のすべてのリンパ球系細胞核は OCT-2 強陽性
- 胚中心明帯の多くの細胞は同程度のOCT2 核染色を示すが, 明らかに陰性のCentrocyteと混在している.
- 濾胞マントルリンパ球は弱~中程度のOCT-2核陽性性を示す.
- 濾胞間部では、少数の散在する大細胞と小リンパ球にOCT-2核陽性が見られた.
- 形質細胞は、中程度から強い核のOCT-2染色を示した.
- 胸腺では、OCT-2の発現は, わずかに散在する皮質および髄質の胸腺細胞を除いて、ほとんどがB細胞に限られていた(図1)。
- 伝染性単核球症と皮膚病性リンパ節炎におけるOCT-2/CD2、OCT-2/CD4、OCT-2/CD8の二重染色では, CD2陽性T細胞が散在し, OCT-2を核発現するCD4陽性Tリンパ球は例外的にしか認められなかった
T細胞リンパ腫とOCT2の発現
- 検査したT細胞リンパ腫の大部分(45/57例)はOCT-2陰性. 2つの例外T-cell腫瘍があり,
- 末梢性T細胞リンパ腫(NOS); 6/12例でOCT-2陽性. 腫瘍細胞数は30~100%の範囲で変動があり、染色強度は弱いものから中程度のものまで様々であった.
- ALK陽性腫瘍;1例では明確な核染色を示し, さらに2例では部分的に弱から中程度のOCT-2陽性を示した。一方, 未分化大細胞型のALK陰性リンパ腫はすべてOCT-2陰性であった.
Bob1†
BOB1--> HGNC official full name: POU2AF1 POU class 2 associating factor 1~局在は11q23.1
Pou2af1 (POU domain class 2-associating factor 1) 遺伝子にコードされた核内タンパク質. OBF-1 または OCA-B とも呼ばれる転写コアクチベーター.
Bob1はB-cellに限らずT-cellにおいても機能を果たしている. 免疫染色でもT細胞性腫瘍のほとんどに発現していることに注意..
■ BOB1 免疫染色*12
正常および反応性末梢性リンパ組織におけるB細胞転写因子Bob1の発現*12
- 胚中心リンパ球の核, 細胞質にBob1/OCA-Bが強陽性となる.
- 濾胞マントル帯のほとんどの細胞にBOB-1の発現があったが、染色性は非常に多様で、弱から中程度にしか染色されないことが多かった.
- 胸腺のBOB-1染色パターンは、OCT-2で観察されたパターンと重なり, わずかに散在する皮質および髄質の胸腺細胞を除いて、ほとんどがB細胞に限られていた
- 正常扁桃と反応性リンパ節組織濾胞間領域では、中-大型細胞および一部の小型リンパ球がBOB-1とCD20の二重免疫染色を示した(濾胞間B細胞)。(CD20, BOB-1の二重免疫染色)
- BOB-1とCD20の二重免疫染色でBOB-1/OCA-Bを多様に発現するCD20陰性, 濾胞間CD3陽性T-cellが存在し, その数は, CD30陽性活性化細胞が多いという特徴をもつ伝染性単核球症や皮膚病性リンパ節炎患者のリンパ節ではるかに多かった*13
BOB-1/OCA-B T細胞リンパ腫組織生検での染色態度
- BOB-1/OCA-B免疫染色; 未熟な細胞に由来するもの, 成熟した小型リンパ系細胞からなるもの(例;菌状息肉)を含むT細胞リンパ腫の本質的にすべてのカテゴリーの腫瘍細胞の大部分で発現する.
- BOB-1/OCA-B発現が最も低い傾向にあるT細胞新生物は、未分化大細胞の形態を持つリンパ腫.
- この種のALK蛋白を発現している6例のうち、1例は陰性、2例はBOB-1/OCA-B標識が新生細胞の一部に限定されていた.
- 未分化大細胞型のCD30陽性ALK陰性リンパ腫5例のうち、3例は中程度の陽性と判定されたが, 残りの2例では腫瘍細胞の50%以下にBOB-1の弱い標識が認められた。
- BOB-1/OCA-Bの細胞染色パターンは症例によって, 1つの切片の中でも多少の違いがある. ある症例(主に鼻と末梢のT細胞リンパ腫)では核に最も顕著で, 他の症例では主に細胞質に, 時には両方の部位で同等の濃度で染まっていた.
注意:腎近位尿細管の側底膜に発現する有機カチオントランスポータOCT2と混同しないこと。こちらもいろいろ注目されている
classical Hodgkin's lymphoma(CHL)病理診断への応用*18*19*20*21†
勤務中の施設で使用しているOct2, BOB1の免疫染色抗体は, Oct2はまだましですが, BOB1はcontrolがしばしば染まらない, しかし, ときには大変よくそまる, 使い勝手の難しい抗体です.
classical Hodgkin lymphomaのHodgkin cellやRS cellsの欠損を確認したくて染めるのですが判定ができず, しばしばnot informativeの結果におわります. (サイト管理人)
みなさんのところの抗体はうまく働いていますか?
- CHLでは20%の症例にCD20, CD79a陽性となる(この場合でもCD79a陰性のことが多い)が, すべてのHodgkin/Reed Sternberg(HRS)細胞に発現することはなく, ごく一部の細胞が陽性となるにすぎない。
もし全細胞が陽性であればCHLの診断は考え直し, 別のB細胞性リンパ腫を考える。
- CD20-positive cHLの文献*22(名古屋, 中村栄男先生ほか)では, Hodgkin/RS cellの50%以上がCD20陽性の場合でEBV+であれば,
EBV-positive DLBCL of the elderly, polymorphous typeとしてCD20-positive cHLからは除外している。
- PAX5/BSAPはB細胞特異的因子が抑制されているHRS細胞においても発現が維持されている。(通常のB-cellに比較して核が弱く染まることが多いようです)
- B細胞および,その腫瘍においてはOct2, Bob1転写因子の発現が認められる(免疫染色では, Bリンパ球が内在コントロールになる)
- CHLにおいてはこれらは両方あるいはどちらか一方の発現が消失している。
- PAX5/BSAP陽性でありOct2-/Bob1-, Oct2+/Bob1-, Oct2-/Bob1+であればCHLの免疫形質発現パターンとして適切である。
- nodular lymphocyte predominant Hodgikin lymphoma(NLPHL)ではOct-2, BOB.1両方が発現している。
HRS細胞はB細胞の形質を通常消失しており*23, B細胞リンパ腫および白血病の腫瘍細胞は由来となったB細胞の重要な形質および機能を保ちつづける*24という原則から逸脱した細胞といえる。
HRS cellがB細胞形質を喪失する再プログラミングには以下の3つの機序が関連している*25。
1. B細胞分子を阻害する分子の不規則な発現
- ID2(inhibitor of differentiation and DNA binding2):E2AにコードされたB細胞転写因子E12とE47に結合して,それらとDNAとの結合を阻害する
- activated B-cell factor1(ABF1):ABF1とE12またはE47とのヘテロダイマーはDNAとの結合はまだできるがB-cell geneを活性化することはできない
- notch1
Notch1はE12, E47両方を阻害することができ, HRS cellで低レベルで発現しているearly B-cell factor(EBF)と、おそらくPAX5も阻害している
Notch1の活性はホジキンリンパ腫微小環境に発現するリガンドにより仲介され, notch1 inhibitor のdeltex1により抑制される。
2. B細胞転写因子の減少, 下方制御(downregulation)
- Oct2, BOB1, PU.1が減少あるいは消失する。
3. B-cell gene, CD19とimmunoglobulin H(IgH)のepigenetic silencing
NLPHL (Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma)†
NLPHLのL&H(lymphocytic and/or histiocytic cells)細胞では部分的なB細胞形質のdownregulationが認められる*26
L&H cellsではSOCS1, BCL6遺伝子変異を示す症例の頻度が高い*27。
- SOCS1ではpoint mutation, deletionが50%に認められる。
- BCL6では転座が35%に出現する。
14例のNLPHLの腫瘍性L&H細胞のまわりにはPD-1陽性T細胞がロゼットを形成して認められた。*28(T/Histiocyte-rich B-cell lymphomaの大型細胞まわりにはCD57ロゼットができることと比較できる?)