分子病理学専門医試験対策
コンパニオン診断薬・診断システム†
特定の治療薬(医薬品)の有効性, または安全性の向上などの目的で使用し, 治療薬の使用に不可欠な診断薬などをコンパニオン診断薬・医療機器companion diagnostics(CDx)と位置づけている. (単に疾病の診断などを目的とする体外診断用医薬品や医療機器とは位置づけが異なる)
厚生労働省通知「コンパニオン診断薬等及び関連する医薬品の承認申請に係る留意事項について」(2013)†
1. 特定の医薬品の効果がより期待される患者を特定するための体外診断用医薬品や医療機器
2. 特定の医薬品による特定の副作用について, それが発現するおそれの高い患者を特定するための体外診断用医薬品や医療機器
3. 特定の医薬品の用法・用量の最適化又は投与中止の判断を適切に実施するために必要な体外診断用医薬品や医療機器
体外診断用医薬品 in vitro diagnostics(IVD)†
血液検査や尿検査などの検体検査に用いられる検査薬の中で, 「医薬品, 医療機器等の品質, 有効性および安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器法)」および関連規制下で許認可をえたもの.
IVDと組み合わせて使用する分析機器は医療機器とよばれる。
IVDのクラス分類. CDxについては通常クラスⅢとなる
HER2やHPVなどのがんや感染症領域の検査薬, 遺伝子関連検査などに用いる検査薬は「診断情報リスクが比較的大きく, 情報の正確さが生命維持にあたえる影響が大きいとかんがえられるもの」としてクラスⅢに分類される.
現在保険診療下で用いられているコンパニオン診断法は, 薬事上のCDx以外の薬事未承認検査法 laboratory-developed test(LDT)が使用されている. 複雑な状況である.
2021年3月時点, CDx承認対象治療薬は 30品目. 1品目をのぞく29品ががん領域であり, その多くが固形がんに対する治療薬である.
がんコンパニオン診断†
- PCR, FISH, NGS法による遺伝子変化(遺伝子変異, 増幅, 融合遺伝子)
後者, 遺伝子変化をみるコンパニオン診断については, がんゲノムプロファイリング検査(CGP検査)との違いを認識しておくこと.
厚生労働省通知 「遺伝子パネル検査の保険適応に係る留意点について」でCGP検査でCDxの遺伝子変化が確認された場合の対処.
- 「エキスパートパネルが, 添付文書, ガイドライン, 文献等を踏まえ, 当該遺伝子異常に係る医薬品投与が適切であると推奨した場合であって, 主治医が当該医薬品について適切であると判断した場合は, 改めてコンパニオン診断を行うことなく当該医薬品を投与しても差支えない」
- 分子病理専門医はCDx, CGP両検査間の関係性について把握しておくことが重要.
コンパニオン診断はすでにエビデンスレが確立した標準治療へのアクセスを目的としている. 臓器別 Organ-specific , 臓器横断的 tumor-diagnosticの検査にわかれ, 対応するガイドライン・ガイダンスが関連学会から表明されている.
CGP検査は研究開発段階にあるエビデンスがまだ十分に確立されていない治療へのアクセスを目的としている.
固形腫瘍のコンパニオン診断の実際†
1. 遺伝子変化に基づく分子標的治療におけるCDx
2. がん免疫療法におけるコンパニオン診断
遺伝子変化に基づく分子標的治療におけるCDx†
保険診療下での治療選択関連の遺伝子関連検査 ---> Fig1 PDFをみる.
遺伝子変化に基づく分子標的治療:ドライバー遺伝子変異を対象としたコンパニオン診断 --->Table をみる.
A. チロシンキナーゼ阻害薬などの治療効果予測に関連するドライバー遺伝子変異を対象としたコンパニオン診断
組織検体を用いた体細胞遺伝子検査.
- 非小細胞肺がん -- EGFR遺伝子変異, ALK融合遺伝子, ROS1融合遺伝子, BRAF遺伝子変異, MET遺伝子exon14 skipping変異:PCR法などによるシングルプレックス(単一)遺伝子検査とNGSを用いたマルチプレックス遺伝子検査があり使いわけが重要. [対象遺伝子を問う問題あり] -->EGFRs
- 大腸がん -- KRAS, NRAS遺伝子変異, BRAF遺伝子変異
血漿(<---[問題選択肢に「血漿」か「血清」かを問うものあり])検体を用いた体細胞遺伝子変異検査
- NGS法を用いたマルチプレックスCDxとしてFoundationOnde Liquid CDxがんゲノムプロファイル(F-OneLCDx)システムが2021年3月に承認された.
- ドライバー遺伝子変異CDxとしては非小細胞肺がんEGFR, ALK, ROS1と
F-OneLCDXのデメリットポイント[選択肢問題提出あり]
- copy数変化(CNV), 融合遺伝子の評価が困難なことがある.
- 特にROS1やNTRK1/2/3融合遺伝子の検出においてF-OneLCDxは従来検査との一致率が高くない.
IHCによるドライバー遺伝子変異(増幅や融合遺伝子)代替検出 (サロゲートマーカー)
- HER2タンパク過剰発現, ALK融合遺伝子産物はすでにCDxとして承認されている.
- NTRK A/B/Cについては承認はされていないが, 固形がんを対象に一次スクリーニングとして補助検査としてガイドラインで推奨.
- ROS1については, 十分量のFFPE検体を得られない場合の補助検査としてガイドラインで推奨.
- セルペルカチニブのコンパニオン診断として承認される見込みのRET融合遺伝子ではIHCで適切に検出されないことが指摘されている.
セルペルカチニブ-->KEGG drugカタログ 抗悪性腫瘍薬, チロシンキナーゼ阻害薬 商品名 レットヴィモ (日本イーライリリー)
非小細胞肺癌 (RET融合遺伝子陽性) [DS:H00014]
甲状腺癌 (RET融合遺伝子陽性) [DS:H00032]
甲状腺髄様癌 (RET融合遺伝子陽性) [DS:H01592]
相同組み換え修復関連遺伝子変化を対象としたCDx;PARP阻害薬などの治療効果予測に使用される.†
二重鎖DNA切断の相同組み換え修復について知る
BRACAnalysis診断システムによる, 生殖細胞系列 BRACA 1/2(germline BRACA1/2, gBRACA1/2)変異検出
- PolyADP-ribose-polymerase (PARP)阻害薬の治療効果予測に 乳癌, 卵巣がん患者さんの血液検体を用いた, BRACAnalysis診断システム検査がおこなわれてきた.
- 2020/12月から, 前立腺がん, 膵がんに適応が拡大された [BRACAnalysis診断の適応がん種を問う問題あり]
- 卵巣がん, 前立腺がんについては, 腫瘍組織BRCA1/2(tumor BRCA1/2; tBRCA1/2)の体細胞遺伝子変異がオラパリブのCDxとして承認された.
DNAを対象にした, F-OneLCDxシステムもCDxとしてまもなく承認見込みになっている.
myChoice診断システム
- myChoiceでは, HRDにより生じるゲノム不安定性genomic instability(GI)に関連した3つの遺伝子変化とBRCA1/2変異(病的/病的疑い)有無を組み合わせてHRDを評価するように設計されている.
- loss of heterozygosity (LOH)
- telomeric allelic imbalance
- large-scale state transition
オラパリブ -->KEGG drug カタログ 商品名 リムパーザ (アストラゼネカ) 抗悪性腫瘍薬, PARP阻害薬
ニラパリブ -->KEGG drugカタログ 商品名 セジューラ 抗悪性腫瘍薬, PARP阻害薬
- HRDはPARP阻害薬の他, プラチナ製剤の感受性に関連することが報告されている. 化学療法剤であるプラチナ製剤は二本鎖DNA間に架橋croslinkを形成させ(シスプラチンは、DNAの構成塩基であるグアニン、アデニンのN-7位に結合する。2つの塩素原子部位でDNAと結合するため、DNA鎖内には架橋が形成される。), その修復過程でDNA二本鎖切断double strand break(DSB)を生じる. --->日経メディカル, プラチナ製剤
がん免疫療法のCDx†