1歳 男児. 右鼻孔部腫瘤
2ヵ月前, 腫瘤のある部位に発赤があったことがスナップ写真で確認できる. 鼻孔皮膚に傷ができて触っているうちに痂皮を形成した.
かさぶたをとっているうちに次第に隆起してきた.皮膚科や小児科で抗生剤の投与や軟膏塗布をうけたが不変, 当院紹介となった.病変の生検検査をおこなう.
赤色調の隆起で頂部は陥凹し, びらん状, 痂皮形成があるように見える. 細血管増生が透見できる. 周囲皮膚との境界は明瞭. 部分生検が施行された.
部分生検がおこなわれた.
loupe像:表面に痂皮形成. 均等な組織像で,壊死や出血はみられない. 低倍ではspindle cellの密な増殖があるように見える. 拡大所見では, 類円形, 卵円形, ねじれた桿状の核, くびれ,勾玉様の核など不整形な核をもつ細胞が増殖している. クロマチンは繊細な傾向で, 核小体を1個もつ核が認められる. 高倍率10視野で 1-2個の核分裂像が数えられた.
樹状細胞性腫瘍, 組織球性腫瘍, histiocytic sarcoma(あまり異型がめだたない)などを考えて鑑別, 免疫染色をおこなった.
免疫染色
CD20, PAX5, CD3, CD5 リンパ球マーカは陰性. Dendritic cell marker (CD1a, CD123, Langerin, etc)は陰性. S-100, CD168, CD68(KP-1)が陽性. 組織球増殖病変と考えられた. foamy macrophageやgiant cellsはほとんど認められない. 高異型度, 多型細胞の出現はないが, MIB-1 LIが高く, mitosisも増加している, 悪性の心配あり, 治療方針の決定のため consultationを行った.
IHCの拡大像. Factor XⅢaの免疫染色画像もここに掲載する.
愛知医科大学都築先生にconsultation.
ご高診ありがとうございました。
2か月ほどの間に隆起した亜急性病変で, 下記 Juvenile xanthogranulomaの早期病変にあたるのかもしれない, (管理人)
大学病院に紹介され摘出手術がおこなわれた. 手術検体でも非典型的ではあるものの juvenile xanthogranuloma に矛盾しなかった。
手術検体でも、明瞭な泡沫細胞は指摘できませんでしたが、Tuton型巨細胞が少数確認できた. 免疫染色の結果も、juvenile xanthogranuloma を支持する所見であった。
全身精査を行ったところ、他に病変は見当たらず、単発性であることが確認できた。(大学病理診断担当先生からの報告)
術後2年, 再発なく元気に遊んでいるようです.
フィブリノリガーゼ、フィブリン安定化因子としても知られ、血液凝固カスケード(右図)の中で最後に生成される酵素である.
カルシウム依存性のトランスグルタミナーゼまたはトランスアミド化酵素であり, フィブリン分子間に分子間γ-グルタミル-イプシロン-リジン架橋を形成し、フィブリン凝塊の機械的安定化およびタンパク質分解に対する抵抗性をもたらす。また, ファクターXIIIaは細胞表面の分子や膜を安定化させる働きもあると考えられている.
チオール活性中心を持つCa2+依存性トランスグルタミナーゼは動物組織に広く存在し、細胞増殖、胚発生、乳腺間質および上皮要素の増殖による成長に関連しています。
正常な乳腺間質は、ほとんどのコラーゲン結合組織と同様に、CD34陽性樹状突起間質細胞と,散在するFactor XIIIa陽性コラーゲン関連dendrophageの常在個体群を含んでいる。
ファクターXIIIaは、正常皮膚と炎症性皮膚における発現が調べられてきた。ヒト皮膚におけるFactor XIIIa陽性細胞は、骨髄真皮樹状細胞の特異的な集団であり、単核食細胞に共通する特徴を持つランゲルハンス細胞とは別物である。アトピー性皮膚炎や乾癬などの良性皮膚疾患では、真皮上層にリンパ球と密接に関連したFactor XIIIa陽性細胞が増加していることが報告されている. *1
Factor XIIIa_pathology.txt ---病理組織におけるFactor XⅢaの染色態度(text file)
皮膚科領域では、Dermatofibroma(DF)とDermatofibrosarcoma protuberans(DFSP)の鑑別に用いられる。
dermatofibroma(DF) | dermatofibrosarcoma protuberans(DFSP) | |
Factor XIII | +++びまん性 | ±~+ |
CD34 | - | ++ |
病理組織所見
典型的なJXG細胞は大きく, 細胞質は空胞状で,核は円形または切れ込みをもち, 小さい。細胞は、CD68、fascin、factor XIIIa、CD4で染色されるが、CD1aやCD207(Langerin)では染色されない。*2
Touton giant cellとして知られる、中心部に核を持つ巨細胞が認められる. 時に、emperipolesisが確認される。
JXGの他のvariantとして、早期型と後期型がある.
新たに報告されたALK陽性組織球症は,古典的なJXGに類似した泡沫状細胞であるが,不規則に折りたたまれた核と,ALK免疫組織化学で染色されるいくつかの多核細胞である。この所見を有する患者は、TPM3-ALKおよびKIF5B-ALK融合遺伝子の分子生物学的解析を受けるべきである。
JXGの症状は,肌色,黄橙色,褐色,紫色の皮膚斑点や丘疹が多く身体のどこにでも発生する.
患者さんにより,孤在性あるいは少数の病変を持つ人もいれば,文字通り数百の病変が皮膚上に分布している人もいる. 時には大きな丘疹が生じることもある. 75%の患者さんでは,1-2ヶ所にJXGを認める.*6
皮膚以外の他の部位としては,肝臓(22%),肺(16%),軟部組織(16%),脾臓(11%),眼(9%),リンパ節(7%),脳(7%),副腎(7%),消化管(7%),骨髄(7%),心臓(4%)など内臓病変がある.*7
Kiel Tumor Registryのデータによると,JXGは小児100万人あたり約1人の頻度で発生することが示唆されている.*8
男女比は1.4:1で,35%が出生時に病変を有し,71%が生後1年以内に病変を発症する,播種性病変を有するJXG患者では3:1の割合で女性が優勢
原因に関する公表データなし. 今のところ不明.
由来細胞はマクロファージ系の骨髄前駆細胞に由来する骨髄性樹状細胞が真皮デンドロサイトとなり,JXGの異常な形に集積すると考えられている.
臨床症状および転帰
■全身性病変を示すneonatal JXG--新生児JXGは全身病変に注意が必要!
新生児期の全身病変の発生率は 27%であり,全年齢の小児では 3.9%であるのに対し,高頻度.*7
新生児期のJXG45症例では,全身性のJXG患者のほぼ4分の1は皮膚病変を認めなかった.*7 頭頸部(41%),体幹(41%),上肢(7.9%),下肢(10.3%)に病変がみられた。
眼球周囲に複数の病変を有する患児の他, 眼球内病変を有する患児がいるが, 眼部JXGは孤立性病変であることがほとんど. *10眼球の充血,流涙,眼瞼下垂,角膜や眼瞼上の可視病変を認める.
JXG は,歯肉,頬粘膜,舌および声門下領域で報告されている.*11*12
他臓器への浸潤は--脳,心臓,肝臓,脾臓,腎臓,肺,骨髄,腸,骨などである。全身に病変がある患者の中には,皮膚病変を認めない者もいる。*13
鑑別診断
診断アプローチ
●皮膚病変がわずかしかなく,全身的な症状や徴候がない幼児:全血球計算,肝酵素パネル,基礎代謝パネル,眼科検査などの評価を行う.
●多発病変および全身症状がある患者,または前述 の検査項目に異常がある患者:
治療
治療症例の報告
臨床的アウトカム
遺伝子異常*23
44例の小児JXGの全エキソームまたは標的DNA/RNA配列決定により,以下の変異が見つかった: