#author("2025-04-21T18:57:13+09:00","","") #author("2025-04-21T19:01:14+09:00","","") [[Anaplastic large cell lymphoma]] *ALK陽性ALCL [#j1a823d2] **ALK-positive ALCL-Case01[#y70c79ab] &color(#e2041b){''20歳''}; 鼠径リンパ節 左臀部の&color(#e2041b){''痛みで発症''};する。臀部軟部組織に腫瘤を認めCTで腸骨, 大腿骨の欠損あり。左鼠径, 大動脈周囲, 後腹膜, 骨盤内腔のリンパ節が腫大し脾腫、胸水腹水の貯留を認める。WBC 15500/cmm, LDH 470(<350), sIL2-R29100U/ml ''リンパ節組織所見'' #gallery(left,nowrap,noadd){{ ALCLHE01.jpg>HE x2.5 ALCLHE02.jpg>HE x10 ALCLHE03.jpg>HE x10 ALCLHEG02.jpg>HE x40 ALCLHEG.jpg>HE x40 }} //|#ref(ALCLHE01.png,,25%)|#ref(ALCLHE02.png,,25%)|#ref(ALCLHE03.png,,25%)| //|CENTER:HE NZX2.5|CENTER:HE NZX10|CENTER:HE NZX10| //|#ref(ALCLHE04.png,,25%)|#ref(ALCLHEG02.png,,25%)|#ref(ALCLHEG.png,,25%)| //|CENTER:HE NZX10|CENTER:HE NZX40|CENTER:HE NZX40| #br >大型異型細胞が集簇し結合性に増殖している。未分化癌や悪性黒色腫が鑑別となる。細胞は大型で類円形, 楕円形核に加えて腎臓様の特異な核形を示す。~ 免疫染色:&color(blue){CD3-};, CD4-, CD8-, CD15-, CD20-, &color(#e60033){CD30+};, CD43-, CD45RO-, CD56-, &color(#e60033){TIA1+, granzymeB+, ALK+, EMA+};, EBER-ISH-, LMP1-, BCL2- (以上, consultation先で染色) >Pathological Diagnosis: ''ALK-positive anaplastic large cell lymphoma'' >CHOP療法を開始し2ヶ月ごにCR. 以後disease freeで生存。 #br >&color(red){ALK陽性 ALCLは化学療法などで助けられる疾患。''7-8割が30歳以下の若年者であり診断の見落としをしないことが大切''である}; (中村栄男先生の談) >&color(red){''&SIZE(16){子供、若年者のリンパ腫ではALKとCD30を染めることを忘れないこと!!};''}; #br Anaplastic large cell lymphoma(ALCL), ALK-positive *Anaplastic large cell lymphoma, ALK-positive [ 4th WHO classification ] [#s097962e] >anaplastic large cell lymphoma (ALCL), ALK-positive は4th WHO classificationによれば, ~ [広い細胞質と&color(blue){''多型の, しばしば馬蹄形(または腎臓様)の核''};をもつ通常大型のリンパ球様細胞からなり, &color(blue){''ALK遺伝子の転座とALKおよびCD30が陽性''};となる&color(red){''T-cell lymphoma(T細胞腫瘍)''};。]と定義されている。 //>T-cell lymphomaの根拠は, PCRによる、とくに''固定標本における解析で高率にTCRの再構成を認める''ことであるが, ALCLでは''CD3やTCRβF1蛋白の発現率は低い''。川本らは, Southern blotによるTCR遺伝子解析と表面形質解析により, ALCLはALK陽性, 陰性群ともにTCR遺伝子再構成の率が低く,腫瘍細胞のclusterin( 95% in ALCL-ALK+)やCD94(分化型NK細胞のマーカで抑制性受容体; ALCL-ALK+ 30%, ALCL-ALK- 33%)発現をあわせて, &color(red){''T細胞性は少なくNK細胞あるいはNull細胞形質をもつ細胞が脱分化した腫瘍の可能性''};を提唱している。((川本研一郎 原発性全身性未分化大細胞リンパ腫(ALCL)はT細胞性は少なく, NK, Null細胞由来が多い 医学のあゆみ 2007; 221(12): 1019-1020)) //>ごーまんかましてよかですか? //-PCRは反応性に増殖する周囲T細胞クローンをひろっている[Bonzheimら((Bonzheim I et al., Anaplastic large cell lymphomas lack the expression of T-cell receptor molecules or molecules of proximal T-cell receptor signaling Blood, 2004; 104: 3358-3360))-19 ALCL casesで74%にTCRβあるいはTCRγ遺伝子再構成を認めている]のではないか?--Southern blotの感度が低いのはどうよ? //-CD3+(8/31, 26%), TCRβF1+(7/31, 23%)と蛋白発現が低率であった--NKなら細胞質にCD3+では?脱分化しているから陰性? >とりあえず、''ALCLは T細胞、NK細胞あるいはNull細胞由来でB細胞のものは含めない''。別物として扱う。---> ALK-positive diffuse large B-cell lymphoma >WHO blue bookではnormal counterpartとして ''activated mature cytotoxic T-cell''が記載されている。 **疫学および臨床事項 [#gf479f28] -成人Non-Hodgkin's lymphomaの約3%. 小児リンパ腫では10-20%をしめる。 #br -30歳以下の若年者に多く、発症年齢中央値は21歳。男女差が若干認められる(男:女= 1.5:1.0) #br -節性、節外性いずれの病変も認められ, リンパ節では頸部、鼠径部リンパ節がとられることが多い。 #br -節外臓器では, 皮膚、骨、軟部組織, 肺, 肝など。腸や中枢神経の病変はまれである。 #br -骨髄病変はHE診断では10%であるが、免疫染色を追加すると頻度は高くなる(30%)。しばしば病変がみつけにくい。 #br -small cell variantでは末梢血合併症としての白血病発症が報告されている。 #br -縦隔病変はホジキンリンパ腫にくらべはるかに少ない。 #br -診断時の病期はIII-IVが多く(70%), B症状、とくに高熱が指摘される。 #br -臨床経過は遷延性で、化学療法に反応性もよく, 完治する例が多い。若年者のリンパ腫でALCLはきちんと正確に診断する必要がある(中村栄男Dr談) #br -5生率は80%. ALK陰性は48%. 小児例をのぞくと, ALK陽性(60%), 陰性(36%)若干低下する。 #br -再発割合は30%. #br -ALK-postive small cell variantでは進行した症例が多く, 相対的に予後不良とされている。 #br -ALK遺伝子の転座あいてによる予後の差異は見出されていない。 #br **病理形態学的所見 [#pc53d6b1] -腫瘍細胞形態は多様性に富む。 -&color(red){馬蹄形(偏心性), 腎臓様, またはドーナツ状などの核をもつ目印細胞「hallmark cells」};をさがす。 -hallmark cellsは通常大型であるが、小型のものも存在する。 #ref(ALCL-ALK01.jpg,around,right,70%) -しばしば''核近傍に好酸性のゴルジ野''が見つかる。(CD30, ALK染色などで陽性となる) -&color(red){形態学的亜形が存在することに注意};。小型腫瘍細胞からなるものから巨核あるいは花環状の多核細胞からなるものまである。 -形態にかかわらず核クロマチンは繊細で、あまりめだたない。(明るい核が多い). 核小体は複数個で不規則。 -リンパ節内では実質内にびまん性分布をしめす。しばしば&color(red){''類洞浸潤が特徴的。''}; -腫瘍細胞は結合性,粘着性で, organized patternをとって増殖し, 未分化癌や悪性黒色腫の転移と誤診断することがある。 -背景に''好中球浸潤, 形質細胞浸潤''を伴うことあり。 &color(blue){好酸球浸潤や類上皮細胞反応はまれ};。 >''形態学的亜型'' --リンパ組織球型(lymphohistiocytic pattern); 10% --小細胞型(small cell variant); 5-10% --類ホジキン型(結節硬化型Hodgkin lymphomaと区別困難) --複合型(上記が混在する); 15% --印環細胞様 --多核巨細胞の豊富な型 --紡錘細胞主体の肉腫型 --粘液種間質を伴うもの **immunological phenotype [#db9767fb] -CD30陽性(Ber-H2/ ki-1), ALKが陽性。 #br -EMAや唐鎖抗原のBNH9が高率に陽性となる。 #br -CD25, CD71が高率に陽性 #br -&color(#0000ff){''BCL-2, CD15, EBER-ISHは陰性。''}; #br -&color(blue){''CD3は75%以上の症例で陰性''};であり、&color(#e60033){''CD2, 5, 4などがより有用なマーカ''};である(70%に陽性)。これらのlineage markerが染まらない, Null細胞もある。 #br -Null細胞はT-cell抗原を示すものとなんらかわることなく、''T/Null ALCL, ALK-postiveはひとつの疾患単位として扱う。'' #br -基本的に''granzymeB, TIA-1, perforinなど細胞障害性分子が発現している。'' #br -CD8はほとんどが陰性、しかしCD8陽性症例の報告もある。 #br -TCR遺伝子再構成がしばしば証明される。この一部ではCD56陽性となり, 陰性例に比べ予後不良とされる。 #br -従来報告された, clusterin, SHP1 phosphatase, BCL6, W/EBP, fascinなどの診断的意義は低い。 **治療 [#g8f6ebd7] 現在の治療 未治療ALK陽性ALCLにはどのような治療が勧められるか(推奨グレード カテゴリー1)-- &color(#e2041b){''ブレンツキシマブ ベドチン併用CHP(BV-CHP)療法が推奨される。''};[[日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2024:http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/2_7.html#cq1]] 2025/4/20参照 ALK陽性ALCLは,代表的にはt(2;5)(p23:q35)の染色体転座を有し,nucleophosmin(NPM1)遺伝子とALK遺伝子とが融合したキメラ遺伝子が病態に関与する病型である。その診断には腫瘍細胞にCD30抗原発現の確認が必要である。ALK陽性ALCLはすべての非ホジキンリンパ腫のうち3%であるが,小児に発症するリンパ腫では10~20%と頻度が高くなる.¬e{:Swerdlow SH, et al. eds. Mature T- and NK-cell neoplasms. WHO Classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues. Lyon, IARC; 2017: pp368-71.}; 患者の多くは,進行期,IPI 2以上である。CHOP/CHOP類似療法により5年OS 70%と報告されている. ¬e{:Vose J, et al. International peripheral T-cell and natural killer/T-cell lymphoma study: pathology findings and clinical outcomes. J Clin Oncol. 2008; 26(25): 4124-30.};¬e{Savage:Savage KJ, et al. ALK- anaplastic large-cell lymphoma is clinically and immunophenotypically different from both ALK+ ALCL and peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified: report from the International Peripheral T-Cell Lymphoma Project. Blood. 2008; 111(12): 5496-504.}; IPIリスク数による5年OSは,0~1:90%,2:68%,3:23%,4:33%と,特に低リスク群の予後は良好である.¬e{Savage:Savage KJ, et al. ALK- anaplastic large-cell lymphoma is clinically and immunophenotypically different from both ALK+ ALCL and peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified: report from the International Peripheral T-Cell Lymphoma Project. Blood. 2008; 111(12): 5496-504.}; 限局期では,他のアグレッシブリンパ腫と同様に,CHOP/CHOP類似療法短期コース後に放射線治療を追加することも治療選択肢となる。 [[ブレンツキシマブ ベドチン Brentuximab vedotin(BV)>Hodgkin lymphoma#q91f3c03]]はキメラ型抗CD30モノクローナル抗体に微小管阻害薬であるmonomethyl auristatin E(MMAE)を酵素切断可能なリンカーによって結合させた抗体薬物複合体である。 ALK陽性ALCLを含むCD30陽性PTCLに対するCHOP療法とBV併用CHP(BV-CHP)療法との第Ⅲ相試験(ECHELON-2)では,BV-CHP療法(6~8コース)がCHOP療法(6~8コース)に比してPFSおよびOSで有意に優れていた4)。 病型別のサブグループ解析では,ALK陽性ALCLにおいてPFSでハザード比 0.29(95%CI 0.11-0.79),OSでハザード比 0.38(95%CI 0.12-1.22)とBV併用の良好な傾向を認めた。 ECHELON-2試験で対象となったIPI 2以上のALK陽性ALCLではBV-CHP療法が推奨される。 IPI 0~1のALK陽性ALCLに対してもBV-CHP療法が推奨されるが,CHOP/CHOP類似療法も選択可能である。 ECHELON-2試験では予め計画された地固め的な局所放射線療法の施行が許容されていたが,限局期に対してBV-CHP療法の施行コースを短縮して局所放射線療法を追加する治療スケジュールに関するエビデンスはない。 #br #br 以下 古い内容です. ALCLに対する標準的治療は確立されていない。一般的にPTCL(peripheral T-cell lymphoma), NOSと同様の治療がおこなわれている。 >化学療法 -ALCL, ALK-postiveに限定した前方視的治療研究はほとんどない。 -CHOP, その類似療法のretorospective な成績では, ALCL, ALK-negativeやPTCL, NOSに比べて良好な治療成績である。 -Suzuki et al; 5年OS(overall servival)割合はALCL,ALK-positveは約70%. ALCL-ALK-negativeは約40% -Falini B et al; 78例(87%にCHOP): 5年OS, ALCL,ALK-positveは約71±6%, ALK陰性ALCLは15±11% (p<0.0007) -Gascoyne et al; ほとんどすべての症例にanthracycline系薬剤を含む多剤併用療法がおこなわれ, 5年OS, ALCL,ALK-positveは79%, ALK陰性ALCLは46% (p<0.0001) -以上ALK陽性ALCLに対してはCHOP療法により約70-80%に長期生存が得られると考えられる。 -IPIのhigh/ high-intermediate risk群ではALK+, (-)両群ともに5年OS割合が30%以下とCHOP治療では予後不良の結果である。 >フランスGELAグループでは, 3コースACVBP(doxorubicin, cyclophosphamide, vindecine, bleomycin, predonizone)療法後, 高用量methotrexate, ifosfamide, etoposide, L-asparaginase, cytarabin, あるいはm-BACOD(methotrexate, bleomycin, cyclophosphamide, etoposide)療法8コースを138例のALCLに施行。 -T/null細胞性(82例), B細胞性56例でhigh-intermediate/ high リスクが46例含まれる -CR(complete remission完全奏功)はT細胞性69%, null細胞性64%で5年OSはALCL66%, 非ALCL(DLBCL)48.3%と有意にALCLは予後良好であった。 -細胞形質別の検討で有意差はみられなかった。 **Cases: Anaplastic large cell lymphoma, ALK-positive [#u3f97c1a] 1.20歳男性 鼠頸部リンパ節 --->[[ALK-positive ALCL-Case01>#y70c79ab]] 第4回血液病理研究会提示症例 2.31歳男性。 頸部リンパ節腫大(''胸腺腫瘤''が最大病変) --->[[症例ページ>ALK-positive ALCL- Case02]] 3. 30歳男性。 開腹リンパ節生検 腹膜リンパ節 --->[[症例ページ>ALK-positive lymphoma, variant of ALCL?]] 4. 10歳小児 小腸リンパ腫、ALK-positive. --->[[症例ページ>ALK-positive ALCL of the small intestine]] 5. 34歳男性。 腹膜リンパ節腫大 6. 49歳男性。 特殊問題症例。 ALK陰性ALCL, biphagic leneage?