#author("2025-04-22T12:34:28+09:00","","")
#author("2025-04-22T12:34:48+09:00","","")
[[Wikipathologica-KDP]]

[[骨髄病理のお勉強:https://www.wikipatho-kdp.website/?Bone+Marrow+Histopathology]]

*骨髄クロット・生検組織のナフトールAS-Dクロロアセテート・ギムザ二重染色 [#v8359d69]

''磐田市立総合病院病理診断科 黒田志保,谷岡書彦''
''磐田市立総合病院病理診断科 黒田志保,KDP病理診断科クリニック 谷岡書彦''

注:一枚一枚スライドグラスに染色液をのせる、&color(red){''載せガラス法です''};。ドーゼで染める方法と容量が異なります。下記の処方で1-2枚の染色が可能です。

名古屋第一赤十字病院 伊藤雅文先生 絶賛の染め上がりです。ちょっと自慢。
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下記骨髄組織病理学序に伊藤雅文先生が述べておられるように, ASD-Giemsa染色載せガラス法を自家で確立してから骨髄病理診断が楽しくなり,診断能力も飛躍的に向上した(と思います).~
今では, 骨髄病理診断は、HE染色に代わり, ほとんどをASD-Giemsa染色+Fe+と銀染色くらいですませてしまいます.

例外は, 癌腫の骨髄転移の場合(癌はみなれたHE染色のほうが良い気がする)と[[hemophagocytosis:https://www.wikipatho-kdp.website/?Hemophagocytic+lymphohistiocytosis%28HLH%29/+hemophagocytic+syndrome%28HPS%29]]の場合です. HEのほうが貪食された赤血球を容易に見つけることができます.&br;
また、巨核球はASD-Giemsaの染まりの良悪にもよりますが, HE染色でも十分観察することが可能です.

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***骨髄ASD-Giemsa染色 (平林) [#k812f0ac]

Naphthol-ASD-CAE stainの骨髄組織への応用(Leder法)+Giemsa重染色をおこなう.

骨髄組織病理学 伊藤雅文先生の序から.


(骨髄組織病理の)理解を決定的に進めたものは染色技術である。平林紀男先生(名古屋大学病理部,名古屋第一赤十字病院)は骨髄病理の師であるが、Naphttol AS-D chloroacetate esterase 染色を組織標本に応用し(Leder法),ギムザ染色を重染する AS-D ギムザ染色を開発した。本書でも、その優れた染色による写真を多く採用している、この染色により、HE染色では不明瞭な、造血細胞の系統別の認識が極めて容易となった、すなわち、赤芽球、顆粒球、巨核球、 リンパ球・組織球がこの染色で識別可能となった。~
諸外国の骨髄病理研究者に我々の標本を見せると、まず通常のHE 染色ではないことに戸惑い、引き続きその染色の有用性に驚嘆した。それは同好の志であるがゆえ、理解が早い。機会あるごとにこの染色の有用性を説いてきたが、多くの施設で我々の標本より優れた染色を目にする機会が増えたことは実にうれしい。HE 標本を前に長時間呻吟するよりこの染色を取り入れることが先決である.^
(伊藤雅文 骨髄組織病理 文光堂第1版序)





***試薬の調整 [#c52c9cf9]

>(1)液:&color(#c71585){''4%ニューフクシン液--ニューフクシン0.5g''};+''2N塩酸 12.5ml''を混和する。
-&color(blue){''長期保存可, 使用時はよく混和して用いること。''};

-作成時ニューフクシンが液面に浮いてしまうのでスターラーで均一になるまでよく混ぜる、あるいはシェイクする。
-''2N塩酸:濃塩酸6ml+蒸留水28.8ml''を混ぜたもの。

>(2)液:&color(#cd853f){''4%亜硝酸ナトリウム溶液''};, ( ''ジアゾ化反応なので亜硫酸ナトリウムでは染まらない。'')

>(3)液:&color(#ff1493){''ナフトールAS-Dクロロアセテート溶液''};
-&color(#ff1493){''ナフトールAS-Dクロロアセテート(-20℃冷凍保存)0.025g''}; に ''N, N-ジメチルホルムアミド(冷蔵保存)2.5ml''を混ぜる。

--ガラスビーカーで溶かすこと。換気のよいところで作業をおこなうこと。
--(3)液を調整したら250μlづつ(1回分)マイクロチューブに分注し, 冷凍保存しておく。
(当院での検討では1ヶ月以上保存が可能のようです)

>pH7.4 リン酸緩衝液

>pH6.6 リン酸緩衝液

>ギムザ染色液: pH6.6リン酸緩衝液 2.5mlにメルク製ギムザ液をスポイトで1-2滴加える。(使用時調整すること)

>酢酸液: 50mlの蒸留水に酢酸原液(氷酢酸;扱い注意)をスポイトで1-2滴加える



**染色手技 [#s8ecc79b]

>1.10ml スピッツに(1)液 12.5μl, と(2)液 12.5μlを使用直前に混和し, vortex. (褐色調の液)&color(red){<--ここが重要. 完全にニューフクシンをジアゾ化させることが大切です。};

>2.上記混合液にpH7.4リン酸緩衝液を加えて全量を4.75mlにする。--->A液

>3.A液に(3)液250μlを使用直前に混ぜ, 染色液とする。(混濁したピンク色)

>4.3をまぜたらスライドに液をのせて、すぐに染色を開始する。--30分

>&ref(ASD-macro01.jpg); &ref(ASD-macro02.jpg,around,);

最初は白濁したピンク色の染色液の白濁がとれてローズ色の結晶が出現(右図)してくる。

>5.軽く水洗して染色のチェック--顆粒球の細胞質がローズピンクに染まることを確認。

>6.ギムザ染色液をのせて30分染色。

>7.酢酸液で分別する。&color(red){ギムザ液単独の染色時と比べやや強染傾向となるので注意。};

>8.イソプロパノール・アセトン等量混合液 脱水-- ギムザの染色性の保持が他のアルコール類より良い。脱水が早く完了する。

>9.透徹、封入して染色完了。


>7,8はドーゼの液内でスライドを5-6回上下させてなじませる。7-->8の順になじませて鏡検する。分別が悪い(赤血球に緑がかぶる状態など)ときは7-->8を繰り返す。

>ニューフクシンはアルコール系薬剤と''キシレン系薬剤に溶け出しやすい''ので&color(red){''早めに封入まで完了すること。''};(ニューフクシンのローズピンクが薄くなってしまう原因となる)

>生検組織で脱灰が必要な場合。&color(red){蟻酸あるいはKCXなどの酸性脱灰液を使用するとASD/Giemsaはまったく染まらなくなります};。脱灰が必要なら''pH7.0 EDTA脱灰をしましょう''。(シリンダー状の生検組織なら時間はかからず、きれいに脱灰できます。)

**試薬購入先と価格 [#lf78b78c]
>当院で使用している試薬です。これがベストのお薦めというわけではありません。

-ニューフクシン(Wako) 25g   8200円

-亜硝酸ナトリウム(Wako) 25g  1250円

-ナフトールAS-D クロロアセテート(シグマ) 250mg 3400円<--( 高価です。試薬を節約するために載せガラス法を使っています。ドーゼだといっぺんに使う量が多くなります.
)

-pH 7.4 リン酸緩衝液用粉末 (Wako) 1L用x20  3800円

-N, N-ジメチルホルムアミド (Wako) 100ml  1500円

**染色の実際 [#gd500713]

>ナフトールASD/Giemsa染色がうまくいっているかどうかを判断するにはメタクロマジアを示すmast cellがうまく同定できるかどうかを第一の目安にする( Dr. 伊藤雅文)

>赤血球が緑がかって染まるときは分別不足です。 もう少し分別をがんばりましょう。

>酸性化したホルマリンで固定すると染まりが悪くなります。

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