#author("2022-09-05T13:43:25+09:00","","")
#author("2024-02-08T14:42:28+09:00","","")
[[Wikipathologica-KDP]]

[[静岡病理医会]]

*Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm(BPDCN) [#t6c50b6e]
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このページの内容は古くなっています. 下記のup to dateページを参照ください.
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[[BPDCN up to date ページ>Blastic plasmacytoid dendritic cell neoplasm-up to date 2022]]
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*頚部リンパ節腫大の1例 227回SPS 症例08; CD56+, CD4+ Haematodermal tumorといわれていた頃の症例 [#p1861b46]
浜松医大第二病理学講座 小杉伊佐夫

#ref(LNloupe01.jpg,around,right,40%)
#ref(skinloupe01.jpg,around,right,40%)

''47歳男性''. 全身リンパ節腫大と体幹湿疹~
頚部リンパ節腫大に気づく。同時期にφ0.5mmほどの点状紫斑をともなう褐色局面が出現する。4ヶ月後全身リンパ節が腫大。精査のため受診。
#clear

***リンパ節病理組織所見 [#ueab94e6]
罹患リンパ節の基本構造は消失し腫瘍細胞のびまん性増殖で置換されている。非腫瘍性の小リンパ球(CD3+, CD4/8+)が濾胞様に散在して残る(Fig.01)。不整型または類円形の明るい核をもつmedium-sizeのリンパ球様細胞が密に増殖している。細胞質は乏しい(Fig.02)。CD68陽性macrophageが多く混在する部分が認められた。

#gallery(left,nowrap,noadd){{

residualfollicle01.jpg>Fig.01 遺残した濾胞
tcells01.jpg>Fig.02 HE染色
tandm01.jpg>Fig.03 HE染色
tcells02.jpg>Fig.04 HE染色
}}

Fig03, Fig04は腫瘍細胞の拡大像。大型異型細胞の出現が認められる。腫瘍細胞は''CD4+, CD56+, CD123+''

#gallery(left,nowrap,noadd){{

tcells02.jpg>HE染色
CD123a.jpg>CD123
}}

この頃はCD4+, CD56+ にCD123陽性で診断が可能であったが, 他疾患でもこの陽性パターンをとることがわかってきた.


***皮膚生検組織病理所見 [#gf16615d]

真皮, 毛嚢周囲, 皮下組織にびまん性または結節様に異型細胞の浸潤増殖が認められる(Fig.05)。表皮への浸潤は認められない。真皮上層への浸潤細胞は類円形,多角形のhyperchromatic nucleiをもつ。細胞質は明るくclearに見える(Fig.06)。毛嚢周囲に浸潤する細胞はリンパ節への浸潤細胞と同様の形態を示す(Fig.7). 腫瘍細胞は[[CD123>Update on IHC#da0344c9]]陽性を示した(Fig.9)

#gallery(left,nowrap,noadd){{

skin_01.jpg>skin biopsy Fig.05
skin_02.jpg>Fig.06
skin_03.jpg>Fig.07
skin_CD123.jpg>CD123
}}
#br

&color(#c71585){■};Speaker's Diagnosis: ''CD4+, CD56+ hematodermal tumor''


*CD4+, CD56+ Hematodermal tumor [#dda25387]
***''Synonyms'' [#l64ba13b]
-''Blastic Plasmacytoid Dendritic Cell Neoplasm''
-Blastic NK cell lymphoma
-Agranular CD4+ NK cell leukemia
-Blastic natural killer leukemia/lymphoma

***疾患概念 [#jb807f4e]
1990年代, 皮膚, 骨髄, リンパ節を侵すT細胞およびmyeloidマーカ陰性でCD4陽性/CD56陽性を示すリンパ腫様腫瘍はNK細胞由来と考えられ1999年のWHO分類において, ''blastic NK-cell lymphoma''とされた。しかしCD56はNK cellだけのマーカではなく, CD4陽性を示すこともNK cell lineageの腫瘍として典型的ではないことからNK-cell由来とすることが問題視されていた。またNK-cell neoplasmに高頻度に見られるEB virus感染も陰性症例がほとんどであった。皮膚に浸潤したCD4+/CD56+ 腫瘍とaggressive NK-cell leukemia/lymphoma, precursor NK-cell leukaemia/lymphoma, CD56+ acute myeloid leukemiaらの概念との異同も解決されていなかった。

1999年 Petrellaらにより本腫瘍を''cutaneous CD4+/CD56+hematolymphoid neoplasm''と呼称しNK cell lineageとは関連がない一疾患単位であることが提唱された。((Petrella T et al. Am J Surg Pathol. 1999; 23: 137-146))
さらにplasma cytoid dendritis cell(pDC)についての研究が進展し, pDCに発現する&color(blue){''[[CD123>Update on IHC#da0344c9]]やTCL1''};が本腫瘍細胞にも陽性を示すと報告され, plasmacytoid dendritic cell由来の腫瘍として&color(red){CD4+/CD56+ hematodermic tumors (CD4+/CD56+ HDT)};や&color(red){plasmacytoid DC neoplasms(DC2omas), plasmacytoid DC leukaemia/lymphoma};として一疾患単位として扱われるようになっている。



''What's New''~
...と, この腫瘍の由来について「もう決まりなんじゃないの!」と理解していたところ, 第50回リンパ網内系学会シンポジウムで 「&color(red){''CD4+/CD56+ hematodermal tumorの由来は現在不明''};であるとしておくべきである」という発表を聴きました。(第50回日本網内系学会総会シンポジウム2 名古屋大学 鈴木律朗)


***組織病理所見 [#y046cc89]


#ref(graphHDT01.jpg,around,right,80%)
''CD4+, CD56+ HDT初診時の病変分布''((Am J Clin Pathol 2005;123:662-675))

1. 57%--皮膚病変のみ~
2. 21%--皮膚+リンパ節病変~
3. 11%--皮膚+骨髄~
4. 4% --皮膚+リンパ節+骨髄~
5. 7% --白血病化~

''皮膚病変''

-典型的には真皮をびまん性に侵す。初期病変では血管周囲性に,または付属器周囲の浸潤パターンが認められる。
-epidermotropism(表皮向性)はまれ, あってもごく微小である。広範囲な皮下病変は大きな腫瘤形成病変のみに出現する。
-中間サイズのリンパ球様細胞で滑らかなクロマチンの, わずかに不規則な核と細胞質の乏しい浸潤細胞が認められる。細胞質は認め難く, 顆粒はまったくない。
-低倍率では単調にみえる。まれな例では, 大型細胞や小型細胞が中間細胞に混在する。
-小型Tリンパ球の混在がある。形質細胞, 好酸球の混在は認められない。mitosisはまれ。

''リンパ節病変''
-リンパ節は白血病パターンで侵襲がおこる。髄質から辺縁洞におよび皮質濾胞間に浸潤する。最終的にびまん性増殖パターンを示す。
-HDT細胞は繊細なクロマチンをもつ小リンパ球様から1ないし数個の核小体が明瞭なmyeloblast様の大型細胞までが認められる。

''骨髄病変''
-病初はしばしば限局性で小さな巣状の腫瘍細胞増殖病変を示す。
-骨髄, 末梢血はfocalに侵されるため免疫染色が診断に有用である。報告により骨髄・末梢血病変の頻度が異なるのもこの限局性の病変のためと考えられている。
-骨髄スメアでは未分化な種々のサイズの芽球様細胞が増殖する。
-腫瘍細胞は細胞質空胞( &color(blue){pearl necklace-like submembranous vacuoles};と呼ばれる)をもち, 顆粒のない大きな細胞質がpseudopod-like extensionを示す。
-造血組織が遺残するときは異形造血が現れることがある。特に巨核球系にみられる。


***臨床事項((Am J Clin Pathol 2007; 127: 687-700)) [#q342d2a6]
-男女比3:1, 高齢者に多いが30%は50歳未満におこり小児症例の報告もある。

-90%の患者さんには単発または多発する症状のない皮膚病変が出現する。病変は数ミリから10cmまでの結節, 斑状,アザ様。関連する紅斑, 色素沈着, 紫斑, 潰瘍も認められることがある。

-50%の例では, 皮膚病片のみが髄外腫瘍病変である。リンパ節病変も初診時に出現することが多い(40-50%).脾腫は20%まで, その他の粘膜病変(-10%)ともにまれ。診断時B症状を呈することもまれである。

-軽度の骨髄および末梢血異常が60-90%の症例に認められるが最初から白血病化する例は少ない(5-25%). 皮膚病片がなく高度骨髄病変と白血病化をていした症例も2つのworkshopで報告されている((J.Immunol. 1999; 163: 1409-1419))((Blood. 2001; 97: 3333-3341))

-診断時にCytopeniaを示すことも多い。cytopeniaと同時に巨赤芽球出現やmonocytosisがあり, MDSとの鑑別が必要となる高度のcytopeniaは5-10%に見られる。

-白血病化は病変の進行時または再発時に通常認められterminal stageの兆候となる。myelomonocytic leukaemiaで再発することもある。

-予後は悪い。 生存中間値は初診時の状況によらず12-14ヶ月。高齢が予後不良の因子となる。ほとんどが最初の多剤化学療法に反応するが9-11ヶ月の中間値で薬剤耐性を示し再発する。長期生存例や自然治癒例がごくわずかに報告されているが, 若年患者で白血病の導入療法を受けたあと最初のCR時にallogenic 幹細胞移植をうけた症例である。

**症例02 [#x35b6734]
70歳代男性~
前額部および頬の発赤を伴う隆起に気づく. 3ヶ月の間に皮膚病変は胸部ほか体幹に急速に広がった。

#gallery(left,nowrap){{

fig02.jpg
fig04.jpg
fig05.jpg
CD56.jpg>CD56
TdT.jpg>TdT

}}

''Pathological Diagnosis'': ''Blastic Plasmacytoid Dendritic Cell Neoplasm''

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