#author("2022-10-18T10:16:48+09:00","","")
#author("2022-10-18T10:19:31+09:00","","")
[[Lynch Syndrome]]

*DNA damage and repair DNAの障害と修復機構 [#y44b2d17]

***DNA障害のパターンと修復 [#a16e3f24]

#ref(DNArepaires.jpg,around,right,70%)
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概要

DNA障害と修復機構のタイプ&note{:渋谷正史ほか編集 がん生物学イラストレイテッド2011;151-160, 羊土社 東京};

-酸化されたグアニンなど異常塩基は塩基除去修復により塩基部分がデオキシリボースから切断される. 
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-隣接した塩基同士が結合する, DNAの嵩高い構造変化が起こる場合は, 損傷塩基を含むオリゴヌクレオチドがヌクレオチド除去修復により除去される. このとき除去されずに残った損傷によるDNA複製停止と続いて起こる細胞死を防ぐためにバイパスDNA合成が機能する. 
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-DNA二重鎖切断は, 原核生物から真核生物に共通してみられる&color(#c9171e){''相同組み換え修復''};とヒトを含む高等真核生物に顕著な&color(#e2041b){''非相同末端再結合''};の2つの機構により再結合される。
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-DNA複製の際に, 間違った塩基取り込みによる誤塩基対は&color(red){''ミスマッチ修復''};により解消される。
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-これらの修復機構の一部は細胞内においてそれぞれの損傷修復の補完的な役割をになっており相互に関連していると考えられる. その例として, 相同組み換え修復, バイパスDNA合成とヌクレオチド除去修復が複雑に組み合わさったDNAクロスリンク修復にみることができる。
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***相同組み換え修復 [#gae2cc4c]
#ref(DNArepair_Kumikae.jpg,around,right,75%)

誤った塩基, ヌクレオチド除去修復では, 損傷塩基/ヌクレオチドを除去したあとに無傷の一本鎖DNAを鋳型に修復合成が可能であるがDNA二重鎖切断の場合はこの方法が使えない. DNA二重鎖切断は染色体欠失や転座を引き起こす重篤なDNA損傷になる.

DNA二重鎖切断は電離放射線により誘発されることが知られていたが, 損傷塩基と複製フォークの衝突によっても生じることが示されている.


&color(#e83929){DNA二重鎖切断には, S期あるいはG2期に存在する姉妹染色分体の相同な部位を鋳型として使う};.

1. 損傷部位に複合体MRN(MRE11/RAD50/NBS1)とBRCA1, およびDNAヌクレアーゼ CtIPの複合体が形成される.

2. CtIPがDNA切断端から3'側のDNAを切除して一本鎖DNAを生成, RPAが結合して安定化する.

3. 続いてBRCA2がRPAとRAD51の交換反応を促進し, 一本鎖にRAD51が巻きついたヌクレオフィラメントを形成する.

4. RAD51フィラメントは姉妹染色分体の相同塩基配列部分に進入し, CtIPが分解した一本鎖のそれぞれが修復合成される.

5. 修復合成のあと, ホリディジャンクション中間体(二本のDNA二重鎖の一本鎖の鎖間交換により, それぞれのDNA二重鎖が交換した鎖と交換していない鎖から成り立つ中間体)を経由して修復が完了する.

-NBS1の欠失した[[ナイミーヘン症候群]:https://www.omim.org/entry/251260](Nijmegen breakage sydrome : NBS)では高頻度にリンパ腫発生が報告されている.

-[[BRCA1:https://www.omim.org/entry/113705?search=%22brca%20genes%22&highlight=%22brca%20gene%22]], [[BRCA2:https://www.omim.org/entry/610355?search=%22brca%20genes%22&highlight=%22brca%20gene%22]]は家族性乳がんのタンパク質で, ゲノム安定性に重要不可欠のタンパク質である.

--家系内集積性乳がん/ 家族性乳がん:家系内に複数の患者さんがみられる乳がん.&note{miki:三木義男 BRCA遺伝子の基礎と合成致死療法の開発にむけて 医学のあゆみ 2017;261(5):423-428};

--遺伝性乳癌: 家系内集積性乳がん/ 家族性乳がんの中で常染色体顕性(優性)遺伝性の遺伝子の存在が強く示唆される乳癌&note{miki:三木義男 BRCA遺伝子の基礎と合成致死療法の開発にむけて 医学のあゆみ 2017;261(5):423-428};

--&color(#e83929){全乳がんの15-20%が家族性乳がんで, その約1/3が遺伝性乳がん(全乳がんの5%)};

--&color(#c9171e){''遺伝性乳がんの60-70%がBRCA1/ BRCA2遺伝子の変異により発生する遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)''};.
--&color(#c9171e){''遺伝性乳がんの60-70%''};がBRCA1/ BRCA2遺伝子の変異により発生する''遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(hereditary breast and ovarian cancer: HBOC)''.

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''細胞周期チェックポイント機構''

DNA複製と細胞分裂により細胞は2個の娘細胞に同じ染色体セットを分配する. この過程に異常があると&color(#e83929){それを検出, 一時的に細胞分裂を停止して問題を解決後に分裂周期を再開するチェックポイント機構が機能する.};

DNA二重鎖切断はたとえ一個でも遺残すると重篤な障害が発生するために&color(#e83929){修復機構とチェックポイント機構が連動して高い忠実度で再結合される.};

-MRN複合体が二重鎖切断部位にATMキナーゼをリクルートし, ATMはヒストンH2AXをはじめとする周囲タンパク質をリン酸化する.

-なかでもp53やCHK2タンパク質などのリン酸化は細胞内p53量を増加し, その転写活性によりCDK2-cyclineE阻害物質のp21を高発現させる.~
その結果, G1期からS期への進行が停止する.

-細胞周期チェックポイント機構には, G2期で細胞周期を停止するG2-チェックポイント機構も存在している.

-p53やCHK2の異常は高頻度に各種がんの発生を促進してしまう.

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