#author("2022-10-25T08:31:50+09:00","","")
#author("2022-10-25T08:32:35+09:00","","")
[[Wikipathologica-KDP]]

*DNA polymeraseとDNA複製 [#o4ef0042]

細胞はDNAを鋳型にするという方法で, 1本のDNA鎖の塩基配列を相補的なDNA鎖に写し取る. この反応では, DNAらせんの二本鎖を分離して2本のDNAの鋳型鎖(templated strand)をつくり, そのヌクレオチドを相補的な(重合していない)遊離ヌクレオチドが識別しなければならない.

分離して塩基の水素結合供与基と受容基が露出すると, 反応すべき遊離塩基がこれらと塩基対形成ができるようになり, 正しく並んで酵素の触媒作用をうけて重合し新しいDNA鎖を生成する.

&color(#e60033){''DNAを重合する酵素, DNAポリメラーゼ(DNA polymerase)''};が1957年に発見された. 重合には鋳型一本鎖DNAが必要で基質となる遊離ヌクレオチドは&color(#c9171e){''デオキシリボヌクレオシド三リン酸''};である.
#br
#br

&ref(5-to-3-elongation.jpg,left,80%); &ref(DNApolymerase-elongation.jpg,,50%);
#br

-正しいデオキシリボヌクレオシド三リン酸が取り込まれ, 塩基対を形成すると, ポリメラーゼが塩基対を握るように閉じ, ヌクレオチド付加反応がおこる. 

-ピロリン酸が乖離すると, ポリメラーゼが開いて, DNAがヌクレオチド一個分移動し, 活性部位に次のデオキシリボヌクレオシド三リン酸が入れるようになる.

**真核生物では15以上のDNAポリメラーゼがある [#f727bc0c]

文献&note{:Burgers, P, Koonin, E,  Bruford, E. et al. Eukaryotic DNA polymerases: proposal for a revised nomenclature. J. Biol. Chem.2001; 276 (47): 43487-90.PMID 11579108};&note{:Hubscher U, et al. Eukaryotic DNA polymerases. Annual Review of Biochemistry 2002; 71: 133-163.};

''Pol α'': 最初はプライマーゼとしてRNAプライマーを合成し、その後DNAポリメラーゼとして働く。およそ20塩基ほど合成すると&note{Berg, J. et al. Biochemie. Heidelberg/Berlin: Springer 2003};ラギング鎖ではPol δに、リーディング鎖ではPol εに交替する。
&color(#e2041b){''Pol α''};: 最初はプライマーゼとしてRNAプライマーを合成し、その後DNAポリメラーゼとして働く。およそ20塩基ほど合成すると&note{Berg, J. et al. Biochemie. Heidelberg/Berlin: Springer 2003};ラギング鎖ではPol δに、リーディング鎖ではPol εに交替する。

''Pol β'': DNA修復に関わる。

''Pol γ'': ミトコンドリアDNAを複製する。

&color(#c9171e){''Pol δ''};: ラギング鎖でのDNA複製に関わる中心的なポリメラーゼ。効率が良く3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持つ。Pol δはラギング鎖合成を担うpolymeraseでありつつ, 複製フォークの不活性化, 2重鎖切断などの重大な障害からサルベージする経路においてレプリソームの構造に依存することなくDNA合成をおこなう不可欠な性質をもった, 最も重要なDNAポリメラーゼといえる. &note{:大学保一 6. ゲノム複製におけるDNAポリメラーゼの動態 -原理から紐解くフレキシブルなしくみ 実験医学 2022; 40(12): 58-65};

&color(#c9171e){''Pol ε''};: リーディング鎖でのDNA複製に関わる中心的なポリメラーゼ。効率が良く3'→5'エキソヌクレアーゼ活性を持つ [4]。

''Pol η・Pol ι・Pol κ・Rev1・Pol ζ'': 損傷乗り越え複製に関わる&note{:Prakash, S.et al“Eukaryotic translesion synthesis DNA polymerases: specificity of structure and function.”. Annual Review of Biochemistry 2005; 74: 317-353.};.

他にPolθ・λ・φ・σ・μなどが知られているが良く研究されていない。

真核生物のDNAポリメラーゼは5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を持たないためプライマーの除去ができず、別個に酵素を必要とする。&color(#e2041b){''鎖伸長に関わるポリメラーゼ(γ・δ・ε)だけが3'-5'エキソヌクレアーゼ活性を持っている''};。

トップ   編集 差分 履歴 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS