#author("2022-07-21T21:14:11+09:00","","") #author("2022-07-21T21:18:05+09:00","","") [[Age related clonal hematopoiesis]] [[Chronic myelomonocytic leukaemia (CMML)]] *DNMT3A [#l6acb7b4] ''DNA methyltransferase 3 alpha'' ('''DNMT3A''')Location:&color(#e83929){''2p23.3 ''};Exon count:34 ''de novoの(メチル化維持maintenanceではなくて,) DNAメチルトランスフェラーゼ''でAML¬e{Ley:Ley TJ, et al DNMT3A mutations in acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2010 Dec 16;363(25):2424-33.};¬e{Yan:Yan XJ, et al Exome sequencing identifies somatic mutations of DNA methyltransferase gene DNMT3A in acute monocytic leukemia. Nat Genet. 2011 Mar 13;43(4):309-15.};やMDS¬e{:Walter MJ, et al Recurrent DNMT3A mutations in patients with myelodysplastic syndromes. Leukemia. 2011 Jul;25(7):1153-8.};¬e{:Thol F, et al Incidence and prognostic influence of DNMT3A mutations in acute myeloid leukemia. J Clin Oncol. 2011 Jul 20;29(21):2889-96};で変異が報告されている。たんぱく質は細胞質および核に局在して発生的に制御されている(developmentally regulated). #ref(DNMT3A.jpg,around,right,70%) DNMT3Aの変異は, 高頻度に&color(red){'''''NPM1, FLT3, IDH1'''''変異を合併};し, AMLの20%¬e{Ley:Ley TJ, et al DNMT3A mutations in acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2010 Dec 16;363(25):2424-33.};¬e{Yan:Yan XJ, et al Exome sequencing identifies somatic mutations of DNA methyltransferase gene DNMT3A in acute monocytic leukemia. Nat Genet. 2011 Mar 13;43(4):309-15.};, MDSの8%¬e{:Walter MJ, et al. Recurrent DNMT3A mutations in patients with myelodysplastic syndromes. Leukemia. 2011 Jul;25(7):1153-8.};にこの変異が認められる。 '''DNMT3A'''変異をもつAMLは予後不良であるが, これは''同時にどの遺伝子変異が存在するかによるところが大きい''。 '''DNMT3A'''変異はAMLの網羅的シーケンス解析により見出された体細胞変異¬e{:Ley TJ, et al., DNMT3A mutations in acute myeloid leukemia. N Engl J Med. 2010 Dec 16;363(25):2424-33};¬e{:Yan XJ, et al., Exome sequencing identifies somatic mutations of DNA methyltransferase gene DNMT3A in acute monocytic leukemia. Nat Genet.2011 Mar 13;43(4):309-15.}; &color(red){''2p23に位置''};。~ '''DNMT1'''がDNA複製時において複製鎖をメチル化することにより維持メチル化を担うのに対し, &color(blue){'''DNMT3A''', '''DNMT3B'''は非メチル化シトシン新規メチル化を触媒する。}; -MDSおよびCMMLにおいて8-15%に'''DNMT3A'''変異が認められる。 #br -AMLでは'''DNMT3A'''変異は20%ほどに認められるが&color(red){AML-M4, M5にほぼ限られておりmonocyticな形質を示すAMLに特徴的な変異};である。 #br -t(8;21), inv(16), t(15;17)などのいわゆるfavorable riskの腫瘍では認められない。 -t(8;21), inv(16), t(15;17)などのいわゆる&color(blue){''favorable riskの腫瘍では認められない。''}; #br -M4, M5の病型についてもMLL転座やMLL-ITDあるいは、これらと強い相関を認める11q23異常を示す症例との重複は原則として認められない。 -M4, M5の病型についても''MLL転座やMLL-ITDあるいは、これらと強い相関を認める''. 11q23異常を示す症例との重複は原則として認められない。 #br -'''DNMT3A'''変異陽性症例は''FLT3, IDH1/2, NMP遺伝子変異との合併頻度が高い''。 #br -'''DNMT3A'''変異陽性AMLでは寛解率, 全生存率が有意に低くなっている ''AMLでのDNMT変異のほとんどはメチル基転移酵素活性を担うC末端ドメインで生じ'', 特に''全変異の2/3が種を超えて保存されているR882で起こっている。'' Nature reviews cancerの図表--->[[DNMT3A in hematological cancer]]¬e{:Liubin Yang,et al.DNMT3A in haematological malignancies. Nature Reviews Cancer 2015; 15: 152-165}; sorry, you need ID & Psswrd to see the figures &color(red){R882変異体のメチル基転移酵素活性の低下が最も顕著};である。 #clear #br ***DNA methyltransferaseの種類と機能 [#d115b01a] >1. DNMT1~ 2. DNMT2~ 3. DNMT3a~ 4. DNMT3b1, 3b2, 3b4~ 5. DNMT3L~ >''DNMT1''~ 1988年マウスでdnmt1がクローニングされた。Dnmt1遺伝子ノックアウトマウスは胎生致死のため生物の発生に必須の遺伝子であると考えられている。 > -DNMT1は''細胞周期M期に発現し, RbやPCNAと結合して, DNA複製部位に局在''しUHRF1を介してヘミメチル基を認識し''維持メチル化に寄与する'' #br -DNMT1を強制発現させたヒト線維芽細胞には新規メチル化が認められることから''何らかのde novoメチル化機能をもつ可能性がある''. #br -慢性炎症を伴う膵管上皮, 尿路上皮癌背景の非腫瘍上皮細胞など&color(red){''ヒト前癌状態にある細胞において, 細胞増殖の亢進がないにもかかわらずDNMT1発現が亢進している''};ことが報告されている。¬e{: #br -DNMT1は維持メチル化機能のみではなく, 癌などの疾病発生過程において異常DNAメチル化プロファイル形成に働いていることが推察される。しかしDNAメチル化とDNMT1が発癌過程に寄与する分子機構は単純ではない。 #br -ヒト胃癌, 大腸癌においてはDNMT1の遺伝子変異頻度はきわめて低い. >''DNMT2'' >Dnmt2は分裂酵母の遺伝子'''PMT1'''のホモログとして発見された. -酵素活性をもたないとされその意義は不明であったが, マウス・ヒトのDNMT2にtRNAをメチル化する機能があることが報告されている¬e{:Goll MG, et al. Methylation of tRNAAsp by the DNA methyltransferase homolog Dnmt2. Science. 2006 Jan 20;311(5759):395-8.}; ¬e{:Jurkowski TP, et al. Human DNMT2 methylates tRNA(Asp) molecules using a DNA methyltransferase-like catalytic mechanism. RNA. 2008 Aug;14(8):1663-70.}; >''DNMT3A''~ Dnmt3aはDnmt3bと共にEST解析により発見された.¬e{:Okano M, et al. Cloning and characterization of a family of novel mammalian DNA (cytosine-5) methyltransferases. Nat Genet. 1998 Jul;19(3):219-20.}; -両者のC末端側触媒領域, N末端側のPWWPドメインやPHD-likeドメインは類似しているが異なる遺伝子としてコードされている。 #br -Dnmt3a knock out mouseはほぼ正常表現型として出生するが生後4週間前後で発育不全のため死亡する。 #br -Dnmt3a, 3b両方のknock out mouseは胎齢8.5日で異常を示し, 胎齢11.5日までに死亡する¬e{: #br -両遺伝子のノックアウトは各々単独ノックアウトよりも障害が強く, Dnmt3aとDnmt3bは部分的に機能を補完できると考えられる. #br -Dnmt3aは胎齢10.5日以後に発現し, Dnmt3bより発現タイミングが遅い¬e{Watanabe01:Watanabe D, et al. Stage- and cell-specific expression of Dnmt3a and Dnmt3b during embryogenesis. Mech Dev. 2002 Oct;118(1-2):187-90.}; >''DNMT3B''~ ''de novoメチル化を担う酵素で, 傍セントロメア領域のメチル化を行う''と認識されている。マウスにおいては胎齢5.5-6.5日で発現が最大になり, innner cell massや胚盤のembryonic ectodermに局在する.¬e{Watanabe01:Watanabe D, et al. Stage- and cell-specific expression of Dnmt3a and Dnmt3b during embryogenesis. Mech Dev. 2002 Oct;118(1-2):187-90.}; -Dnmt3b ノックアウトマウスは妊娠後期までに種々の異常を示して, 胎生致死である #br -'''DNMT3B'''は, 免疫グロブリン低下, 染色体異常, 顔貌異常を三主徴とする, まれなヒト&color(red){常染色体劣勢疾患のICF症候群(immunodefeciency, centromeric instability, facial anomalies)};の原因遺伝子とされる。 #br -DNMT3bには, 多くのsprice variantsが存在し, 一部は肝癌発生など発癌に関与している。 >''DNMT3L'' >DNMT3a, 3bと類似した構造をもつが, 酵素ドメインを欠き酵素活性はもたないとされる. >&color(red){DNMT3aと共局在してDNMT3aのde novoメチル化活性を亢進させる};¬e{:Chedin F, et al. The DNA methyltransferase-like protein DNMT3L stimulates de novo methylation by Dnmt3a. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Dec 24;99(26):16916-21.};働きをしているなど, 何らかのかたちでDNAメチル化に働いていると考えられる。 ***''DNAのメチル化'' [#e9b0a714] DNAの塩基の一つであるシトシンの5位にメチル基が付加される反応。 メチル基はS-アデノシルメチオニンにより供与され, DNMTによりシトシン5位に共有結合される。---[[エピジェネティックス, DNAメチル化>Epigenetics エピジェネティックス]] #br -脊椎動物のシトシンメチル化は、ほとんどが&color(blue){CpG配列とよばれるシトシン・グアニンの連続した配列};に生じる。''脊椎動物の正常細胞ではCpG配列の60-90%がメチル化を受けている''。 #br -メチル化シトシンには''MBD2やMeCP2などの種々の分子''が結合して, これらの分子にさらに別の分子が結合することによりクロマチン構造の不活化を来す。 #br -傍セントロメアサテライト領域, トランスポゾン, LINE, SINEなどの繰り返し配列では含まれるCpG配列のDNAメチル化がその結合蛋白を介してクロマチン構造を密にし, 染色体を安定化している。 #br -さまざまな遺伝子の''プロモータ領域にはCpG配列が密に存在するCpGアイランド''とよばれる領域が存在し,プロモータ領域のCpGアイランドがメチル化を受けると転写因子の結合を阻害し, その遺伝子の転写が抑制されることになる。 #br -house keeping遺伝子などの発現が保持される必要のある遺伝子においては, プロモータ領域のCpG配列は非メチル化状態に保たれている。 #br DNAのメチル化は''発生の過程で後天的に生じる''. DNA塩基配列が両親より受け継がれ, 全身すべての細胞において同一, 突然変異を受けなければ一生涯不変であるのとは異なっている。 &color(red){哺乳類では受精直後に雄性配偶子と雌性配偶子のDNAメチル化が消去される};。 卵割の過程において細胞特異的なメチル化プロファイルが作成され, 同一ゲノム情報をもつ全身諸細胞が高度に分化し機能を発揮するために重要なエピジェネティックス機構として働く ***DNMT1の維持メチル化を阻害するDNA脱メチル化薬 [#k25381da] DNAメチル化は共有結合による強固な反応であるが, DNA塩基配列異常やLOHなどの構造異常と異なり可逆的な事象であるため, DNAメチル化異常を標的としたエピジェネティック治療が試みられる。 #ref(azacytidine.jpg,around,right,90%) ''DNA脱メチル化剤'' -''5-azacytidine &color(red){(アザシチジン):商品名 ''ビザ-タ''}; -5-aza-2'-deoxycytidine (デシタビン) -両者はシトシンアナログでありアザシチジンはリボ核酸, デシタビンはデオキシリボ核酸のアナログでシトシン5位の炭素が窒素に置換しているためメチル化を受けない。 -投与された薬剤は核内に移行し,新たに合成されるDNAに取り込まれると, DNMT1とと不可逆な複合体を形成して非競合的な酵素阻害作用を示し、遊離DNAメチルトランスフェラーゼを枯渇させる. その結果,アザシチジンの組み込まれていないDNA鎖へのDNMT1''維持メチル化を阻害''して、細胞の分化誘導作用や増殖抑制作用を示す。 -アサシチジンは細胞内に取り込まれた後、細胞内リン酸化過程を経てアザシチジン三リン酸(Ara-CTP)となりRNAへ取り込まれる。一方、アサシチジンはリボヌクレオチドリダクターゼによるデオキシ体への変換反応を経てアザデキオキシシチジン三リン酸(Aza-dCTP)となり、DNAに取り込まれる。アサシチジンは新たに合成されるRNAに取り込まれるとタンパク質合成阻害を引き起こし、殺細胞効果を示す。 h >2011年3月11日、&color(red){骨髄異形成症候群(MDS)治療薬のアザシチジン(商品名ビダーザ注射用100mg)};が薬価収載され、同日、発売された。同薬は1月21日に製造承認を取得している。 >適応は「骨髄異形成症候群」で、1日1回、皮下投与または10分かけて点滴静注する。「1週間投与、3週間休薬」を1クールとして投与を繰り返す。 >国内での臨床第1/2相試験では、投与したMDS患者の全員に何らかの副作用が認められている。 >主な副作用は、好中球減少症(発熱性好中球減少症を含む)(88.7%)、白血球減少症・血小板減少症(各84.9%)、ヘモグロビン減少・便秘(各69.8%)、注射部位反応(紅斑、発疹、そう痒感、硬結など)(66.0%)、赤血球減少症(62.3%)、ヘマトクリット減少(54.7%)、リンパ球減少症(52.8%)などが認められている。さらに、重大な副作用として、''好中球減少症などの骨髄抑制などが高頻度に認められることにも留意しておかなければならない。''