#author("2023-02-18T15:29:01+09:00","","")
#author("2023-02-18T15:29:48+09:00","","")
[[MALT lymphoma of the stomach]]

Contents:
#contents

**Extra nodal marginal zone lymphoma of MALT type [#zc9a1dd7]
節外性のmarginal zone lymphocyte memory B-cell 由来悪性リンパ腫

-典型例はmarginal zoneの''centrocyte-like cell''の増殖といわれるが非典型例も多い

-増殖細胞の非典型的形態には
--''monocytoid feature''

--分化して''plasma cell様''の形態をとる. &color(green){Dutcher body(核内偽封入体)};など異型所見あり。

--核不整のほとんどみられない&color(blue){''small lymphocytic lymphoma/chronic lymphocytic lymphoma cell''};と同じ形態の細胞が増殖する症例がある.

&br;

#gallery(left,nowrap,noadd){{

centrocytic.jpg>centrocyte-like
monocytoid.jpg>monocytoid
maltplasma.jpg>plasmacytoid
}}


&br;

>''Monocytoid B Cells'' (参考資料)
>
-Lennert(1959年)とStansfeld(1960年)が, トキソプラズマリンパ節炎と早期のホジキンリンパ腫において記載した細胞.
#br
-豊かな蒼白(pale)の細胞質をもつ小型から中型細胞で核と細胞質が表面上末梢単球に類似している。~
核は中心性で丸い. わずかに不整がある. 中等度に凝集したクロマチンをもち核小体はめだたない.&note{:Plank L, et alThe cytological spectrum of the monocytoid B-cell reaction: recognition of its large cell type.Histopathology. 1993 Nov;23(5):425-31.};
#br
-ほとんどがparafollicularとparasinusoidal領域に存在する. また marginal sinus近傍の血管周囲腔, まれにはmedullary sinus近傍の血管周囲腔にも認められる. 
#br
-monocytoid B cellsはトキソプラズマリンパ節炎において, 類上皮様組織球とは異なる, 最初「immature sinus histiocytosis 」と呼ばれたような noncohesive sheetsとして認められる
#br
-IgMかIgGを発現するB細胞で, CD5, CD23は陰性. 
#br
-自己免疫性疾患, EBV感染, hepatitis C, HIV感染, T細胞リンパ腫&note{:Plank L, et al Monocytoid B-cell reaction associated with peripheral T-cell lymphomas. Pathol Res Pract. 1995 Nov;191(11):1152-8.};など他の疾患や腫瘍でも出現する.
#br
-この細胞の生物学的特異性はよくわかっていない
#br
-反応性濾胞増生とMonocytoid B cellsの関連性はこの細胞が濾胞活性化によるB細胞分化過程中の細胞であると推察されている
#br
-marginal zoneのリンパ球とmonocytoid B cellはその存在部位, morphology, phenotypeが類似していることより関連があるとされている&note{:Piris MA, et al Monocytoid B-cell lymphoma, a tumour related to the marginal zone. Histopathology. 1988 Apr;12(4):383-92.};

#br

>''extranodal lymphoma of marginal zone(MALT type)--WHO2008分類''

>種々の臓器に発生するが, &color(red){すべてに共通して以下の特徴をもつ.};

>1) ''先行する慢性炎症を伴い, 長期に発生病変部位に腫瘍がとどまる''

>2) 胃MALTリンパ腫でのH.pylori除菌療法で証明されているように''炎症の治療により60-80%の腫瘍が消退する.''&note{:Nakamura T, et al Clinical features and prognosis of gastric MALT lymphoma with special reference to responsiveness to H. pylori eradication and API2-MALT1 status. Am J Gastroenterol. 2008 Jan;103(1):62-70.};

>
-この腫瘍は&color(#19448e){粘膜関連リンパ組織(MALT)において炎症性反応あるいは免疫反応により生じるサイトカインなどの増殖因子に依存して増殖している。};

>
-増殖の場、増殖因子の生じる場であるMALTを作る原因となる炎症を抑えること(胃ではH.pylori除菌)が最初の治療法になる.


**Extra nodal marginal zone lymphoma of MALT type の形態診断の悩み [#jf9b9b00]

非典型例, &color(red){特に腫瘍細胞のほとんどがsmall lymphocyteから構成される節外リンパ腫の場合, 小さな生検組織のみで節外lymphoid hyperplasiaとの鑑別診断は非常に困難である};。実際に''形態的診断のみでは不可能なことがある''

★良性増殖を悪性小リンパ球浸潤と形態的に鑑別するcriteriaは
-増殖細胞がmonomorphousで高密度である

-細胞異型がある

-Dutcher bodyが形質細胞の核に出現する

-腺, 濾胞, その他節外臓器に固有な構造の破壊がある~
これらの所見が明らかに存在するときには悪性リンパ腫である可能性が高い

Scoring System(Wotherspoon&note{:Lancet 1993; 342:575-577};)によると

-粘膜固有層にcentrocyte-like cellが密に増殖していることと

-Lymphoepithelial lesion(LEL)が高度なこと(ただし&color(blue){LELは他のリンパ腫にも出現しMALT lymphomaに特異的な所見ではありません};。)~
がMALTのlow-grade B-cell lymphomaの確定診断根拠となる

#ref(LELmalt.jpg,around,30%)
Lymphoepithelial lesion(LEL)~
胃MALT lymphomaに認められたlymphoepithelial lesion~
腫瘍リンパ球の浸潤で腺窩がボロボロに破壊されている

&SIZE(12){''<----クリックで大きな画像がみられます。''};

#clear

-LELは&color(#FF0000){''胃, 肺, 甲状腺ではほぼ必発''};で診断的価値が高いが&color(#008B00){''腸管の症例では無いか, あっても顕著ではなく''};臓器間に差がみられる。&color(#d3381c){''唾液腺では非腫瘍性疾患でも認められるので注意が必要である。''};&note{:吉野正 第4回日本血液病理研究会テキスト2001;37-39};

-疑い例はcentrocyte-like cellが反応性濾胞を取り囲み粘膜固有層にびまん性に浸潤すると同時に小グループで上皮に浸潤する。

>★密なリンパ球浸潤, わずかな細胞異型, LEL様病変は胃をふくむ節外性lymphoid hyperplasiaによく見られる所見である

>★胚中心は, ほとんどのMALT lymphomaとmantle cell lymphomaに認められるため胚中心の出現による形態診断はあてにならない

>★胃のmantle cell lymphoma, 小腸のmultiple lymphomatous polyposisでは濾胞は萎縮して単調な腫瘍性リンパ球に密に取り囲まれることがしばしばある~

***Immunophenotype &note{:Am J Clin Pathol1993;100:373-385};, &note{:Am J Surg Pathol1992;16: 455-466}; [#qe22ecd9]

-腫瘍細胞はsIgが陽性, IgMが最多> IgG> IgA. IgDは欠く

-40-60%はmonotypicなcIgを産生しており, plasmacytoid cellへの分化を示す

-B細胞関連抗原-CD19, CD20, CD22, CD79aが陽性

-通常CD5とCD10は陰性--CD10陽性の症例がある-->[[リンク:http://surgpathcriteria.stanford.edu/bcell/marginalnodal/differentialdiagnosis.html]]

-軽鎖の染色は(light chain restriction)悪性の診断に有用である- kappa, lambda-ISHによる腫瘍由来形質細胞のdeviationを見る。

-B-cell CLL, mantle cellとはCD5+で鑑別できる

-follicular center lymphomaはCD10+, CD43-, CD11c-, usually cIg-なので鑑別可

**分子学的特徴 [#t911cf97]
-Immunoglobulin遺伝子は再構成があり, ''somatic mutation''と''intraclonal diversity(ongoing mutation)''が認められる

-これらは腫瘍細胞がB細胞のpost-germinal center stageにあることに一致しnormal counter partはmarginal zone, monocytoid, plasma cellに分化する能力を有するpost-germinal center ''memory B cell''であると考えられている。&note{:Blood 1995; 86:3528-34};, &note{:Blood 1995; 86 suppl 182a};


**t(11;18)(q21;q21)--MALTリンパ腫に特徴的な遺伝子異常 [#r7db3592]

MALTリンパ腫に特徴的な遺伝子異常は&color(blue){''t(11;18)(q21;q21)''};&note{:Akagi T, et al A novel gene, MALT1 at 18q21, is involved in t(11;18) (q21;q21) found in low-grade B-cell lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue. Oncogene. 1999 Oct 14;18(42):5785-94.};であり,11q21のアポトーシス抑制遺伝子'''''API2/ BIRC3'''''と18q21上の'''''MALT'''''遺伝子がfusion gene('''API2-MALT1''')を形成する

-t(11;18)(q21;q21)は胃MALTの''5~20%''に検出される。隆起型の低悪性度リンパ腫である。
#br
-t(11;18)(q21; q21)は除菌療法の反応性を規定している遺伝子異常である。
#br
-'''API2/BIRC3::MALT1''' fusion gene陽性MALTリンパ腫は&color(red){H.pylori除菌療法に不応性};でH.pyloriとは別の病因と考えられる。
#br
-'''API2/BIRC3::MALT1''' fusion gene陽性MALTリンパ腫には, &color(red){それ以上の遺伝子異常は蓄積せずdiffuse large cell lymphomaへのtransformationはない};と考えられている
#br
-18q21.1/'''MALT1'''転座のなかで最も高頻度のt(11;18)(q21/q21.1)は'''API2/BIRC3'''遺伝子と'''MALT1'''が結合し現在見つかっている%%%成熟B細胞腫瘍の中で唯一融合遺伝子形成型をとる染色体転座%%%となる.
#br
-'''MALT1'''は14q32/'''IGH'''転座による脱制御型によっても過剰発現を生じMALTリンパ腫の発症に関与する. この異常は胃以外の肺や唾液腺, 結膜などの臓器に出現する.~
この'''MALT1'''が関わるMALTリンパ腫は特定の抗原への依存度が低い背景をもち, %%%多臓器にわたって病変を生じうるリンパ腫である%%%ことを念頭におき治療法の選択をする必要がある.
#br
-MALTリンパ腫の診断がなされた場合18q21.1/'''MALT1'''転座の検索は必須である.

臓器別MALTリンパ腫のt(11;18)(q21;q21)出現頻度&note{:Ye H,et al.Blood 2003:102;1012-18};
|MALTリンパ腫の部位|t(11;18)(q21;q21)出現頻度|
|CENTER:肺|RIGHT:38%|
|CENTER:胃|RIGHT:24%|
|CENTER:結膜|RIGHT:19%|
|CENTER:眼窩|RIGHT:14%|
|CENTER:唾液腺|RIGHT:1%|
|CENTER:甲状腺,皮膚,肝|RIGHT:0%|

''API2遺伝子, 現在はBIRC3という名称が正式名.''

BIRC3 baculoviral IAP repeat containing 3 [Homo sapiens (human)]~
Gene ID: 330, Official Symbol:BIRC3 provided by HGNC~
Official Full Name: baculoviral IAP repeat containing 3provided by HGNC, Primary source HGNC:HGNC:591~
別名: AIP1; &color(#e60033){API2};; MIHC; CIAP2; HAIP1; HIAP1; IAP-1; MALT2; RNF49; c-IAP2

この遺伝子は、腫瘍壊死因子受容体関連因子 TRAF1 および TRAF2 に結合し、おそらくICE 様プロテアーゼの活性化を妨げることによってアポトーシスを阻害すると考えられている IAP ファミリーのメンバーをコードしている。このタンパク質は、血清除去によって引き起こされるアポトーシスを阻害するが、フリーラジカルの強力な誘導物質であるメナジオンへの曝露によって生じるアポトーシスには影響を与えない。このタンパク質はバキュロウイルスIAP反復配列とリングフィンガードメインを含んでいる。同じアイソフォームをコードする転写バリアントが同定されている。[2011年8月、RefSeqから提供された] 。
#br

''MALT1 MALT1 paracaspase'' [Homo sapiens (human)]

Gene ID: 10892, Official Symbol: MALT1 provided by HGNC, Official Full Name: MALT1 paracaspase provided by HGNC~
Primary source HGNC:HGNC:6819~
別名: MLT, MLT1, IMD12, PCASP1~
局在: 18q21.32. Exon count: 19 ~

'''MALT1'''遺伝子は,BCL10による NF-kappaB の活性化に関与するカスパーゼ様プロテアーゼをコードしている。このタンパク質は,CARMA1-BCL10-MALT1 (CBM) シグナルソームの構成要素であり,抗原受容体刺激後のNF-kappaBシグナルとリンパ球活性化の引き金となる。~
この遺伝子に変異があると,免疫不全症12(IMD12)になる。この遺伝子は,粘膜関連リンパ組織リンパ腫において,他の遺伝子との染色体転座で繰り返し転座することが判明しており,その中にはt(11;18)(q21; q21)転座,および免疫グロブリン重鎖遺伝子座(IGH-MALT1)とのt(14;18)(q32;q21)転座がある。この遺伝子は,交互にスプライシングされた転写産物のバリアントが記述されている。[2018/5, RefSeqより] 


***胃MALTリンパ腫の3つの群 [#l3359940]

胃MALTリンパ腫は''除菌治療への反応とAPI2-MALT1出現の有無''で以下の三群にわかれる

-H.pylori除菌に反応する群 60-80%の症例が反応する.

--H.pylori関連の慢性胃炎を背景に発症. &color(blue){API2-MALT1陰性の群};
#br
--''VH3-23, VH3-30に偏ったIGHの使用''が認められ, 特定の抗原刺激が発症の背景にあることが推察される.&note{Sakuma:Sakuma H, et al Immunoglobulin VH gene analysis in gastric MALT lymphomas. Mod Pathol 2007; 20: 460-466};
#br
-H.pylori除菌に反応しない群--''約30%の症例''が除菌治療に反応しない
#br
--''18q21.1/'''MALT1'''''転座をもつことが多く, メモリーB細胞に18q21.1転座を獲得することが腫瘍化に重要な役割をはたしている可能性が高い&note{Sakuma:Sakuma H, et al Immunoglobulin VH gene analysis in gastric MALT lymphomas. Mod Pathol 2007; 20: 460-466};
#br
--50%は&color(red){API2-MALT1 fusionが陽性};
#br
--50%は API2-MALT1 fusion陰性でゲノムコピー数異常が多く認められる&note{:Fukuhara N et al Chromosomal imbalances are associated with outcome of Helicobacter pylori eradication in t(11;18)(q21;q21) negative gastric mucosa-associated lymphoid tissue lymphomas. Genes Chromosomes Cancer. 2007 Aug;46(8):784-90.};

#br
-除菌適応の群は&color(red){全例H.pyloriが陽性で, 肉眼型は表層型, 深達度はm, smが多く臨床病期はI期};
#br


***MALTリンパ腫に特徴的な, その他の染色体転座 [#lfece923]

-Bcl-10/MALT1/TRAF6にかかわる異常のうち, Bcl-10の過剰発現も14q32/ IGH転座による脱制御型異常として胃や肺のMALTリンパ腫で報告されている.&note{:Zinzani PL The many faces of marginal zone lymphoma. Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2012;2012:426-32.};
#br
-t(1;14)(p22;q23)/ ''BCL10-IGH''。胃MALT症例の5%に検出される。欧米では20%と頻度が高い. 
#br
--14q32/'''IGH'''転座はMALTリンパ腫においてもしばしば認められるが, パートナー遺伝子との結合はXp11/ '''GPR34'''を除いて, %%%''IGHのVDJ領域でおこり前駆B細胞レベルでおきる異常である''%%%.

--&color(red){1p22上のBCL-10};がIgH遺伝子とfusionする。

--[[BCL-10:http://gdi.med.hokudai.ac.jp/bcl10/bcl10.shtml]]は転座を有する症例の核に陽性となる。転座のないMALT症例でも50%に核陽性となる。

--bcl-10のmutationは''胃MALTにはまれでBCL-10の異所性核発現とは関連がない''

--BCL-10の核発現とAPI2-MALT1転座は関係があるといわれているが有意差はなく,除菌療法への反応性とBCL-10の核発現にも関連がないという報告あり&note{:中村他 日本内科学会誌2004;93:191-197};
#br
-t(14;18)/IGH-MALT1 : bcl2::IgH と MALT1::IgHが認められる. -->症例[[顕著な形質細胞分化を示しマクログロブリン血症を呈した肺MALTリンパ腫の例:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30089750/]]
#br
-t(1;14)/FOXP1-IGH などのが報告されている。

-これらの遺伝子学的異常が除菌療法の効果と関連があるのか否かはまだ明らかでない

胃MALTリンパ腫の多くはH.pylori感染により慢性胃炎をおこし続いてリンパ濾胞を伴うリンパ組織(MALT)が形成され,これにH.pylori特異的T細胞の刺激が加わりB細胞が腫瘍化する
#br
#br
#ref(MALTgeneTop20.jpg,around,right,75%)
[[Cosmic(catlogue of somatic mutations in cancer):http://cancer.sanger.ac.uk/cosmic]]に記載されているMALT lymphomaでmutationの認められたgenes.

>TNFAIP3(tumor necrosis factor, alpha-induced protein 3)/ A20: @ 6q23.3 
TNFAIP3/ A20の詳細-->[[NFkappaBのページ>NF-κB シグナリング#eed55780]]

#clear
***消化管のMALT lymphoma [#jba75088]
-[[食道のMALT lymphoma>MALT lymphoma of the esophagus]]
-[[胃のMALT lymphoma>MALT lymphoma of the stomach]]
-十二指腸のMALT lymphoma
-[[小腸lymphomatous polyposis-MALT lymphoma>lymphomatous polyposis, MALT lymphoma type, 回腸]]
-[[回腸のMALT lymphoma, イレウス症例>MALT lymphoma of the ileum]]
-大腸のMALT lymphoma

***肺のMALT lymphoma (BALToma) [#m7b9bec4]
-Case01
-Case02

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