#author("2022-09-01T12:40:24+09:00","","") #author("2022-09-01T12:43:43+09:00","","") [[T cell and MHC]] *T細胞活性化シグナル伝達 T-cell receptor(TCR) activating signaling [#n8f23f6a] #br T細胞は可溶性抗原を単独では認識しない. 必ず''抗原提示細胞表面のMHC分子と会合した抗原ペプチド(または糖脂質など)を認識し, それによって活性化される''。このため, &color(#e60033){T細胞活性化は必ず細胞間相互作用により誘導される。}; -抗原特異的な活性化はTCRを介する抗原認識シグナルだけでなく, 細胞接着による相互作用によるシグナル, なかでも&color(red){''補助刺激受容体co-stimulation receptorを介する補助刺激シグナルとの相互作用により, 誘導される''};。 -TCRを介するシグナル, 補助刺激受容体を介するシグナル, 両方のシグナルによりT細胞は活性化される。¬e{:Mueller DL, et al. Clonal expansion versus functional clonal inactivation: a costimulatory signalling pathway determines the outcome of T cell antigen receptor occupancy. Annu Rev Immunol. 1989;7:445-80}; #br -細胞間接着, 補助刺激による相互作用により, T細胞活性化閾値が制御されている。%%%接着シグナル, 補助刺激シグナルがないとT細胞が活性化されない閾値があり, T細胞を簡単には活性化させない機構ができている。%%% #br -''補助刺激分子を発現する抗原提示細胞との特異的細胞間接着抗原刺激のみ''によって活性化され, 弱い自己抗原により活性化されることを防ぎ, 自己免疫疾患を防いでいる。 #br -以前考えられていたように, T細胞-抗原提示細胞の接着による免疫シナプス形成がT細胞活性化を誘導するのではなく, &color(red){''小さなミクロクラスターを形成し, それを介して活性化シグナル分子複合体としてT細胞が活性化される''};。¬e{shinra:審良静男ほか 編集 免疫学Update 分子病態の解明と治療への展開 pp62-70 2012 南山堂 東京}; #br #ref(T-cellSignaling01.jpg,around,50%) 左図 T細胞活性化の初期シグナル¬e{shinra:審良静男ほか 編集 免疫学Update 分子病態の解明と治療への展開 pp62-70 2012 南山堂 東京}; ''TCR複合体と補助レセプターによる細胞内シグナル伝達'' -FynまたはLckはCD3ε鎖とζ鎖のITAMのチロシン残基をリン酸化し, ZAP-70が結合できるようにする。 -LakはZAP-70を活性化し, LATとSLP-76をリン酸化する. SLP-76はホスホリパーゼPLC-γと結合し活性化する。 -PLC-γはフォスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)を分解して, ジアシルグリセロール(DAG)とイノシトール三リン酸(IP3)を産生する。 >DAGはPKC-θを活性化する. PKC-θは転写因子NFκBを活性化する。 >IP3は細胞内Ca2+濃度を増加させ, ホスファターゼであるカルシニューリンを活性化する。カルシニューリンは転写因子NFATを活性化する。 >DAGはRasGRPを活性化し, MAPキナーゼカスケードを活性化する。Rasにより誘導されるキナーゼカスケードはAP-1転写因子の構成要素であるFosを誘導し活性化する -転写因子NFkB, NFATおよびAP-1が特異的な遺伝子の転写を開始して細胞増殖と分化を誘導する。 >-->[[T-cell receptorの構造>T cell and MHC]] #clear #br #ref(immunosynapsis01.jpg,around,right,50%) ''生体内でのT細胞活性化は末梢リンパ組織(リンパ節, 脾臓, パイエル盤)でおこる。'' -抗原を取り込みプロセッシングした樹状細胞(抗原提示細胞)はリンパ節に移動し, 特異的なTCRを発現する1つのT細胞と会合し, 接着して相互作用を始め, T細胞を活性化する。 #br -樹状細胞とT細胞の接着に伴い細胞表面分子が特殊に配向する構造, 免疫シナプスを形成する。 #br -免疫シナプスの形成により, 抗原提示細胞(APC)とT細胞の間に極性を生じT細胞は産生するサイトカインや溶解性顆粒などをシナプスを介して放出する。 ''免疫シナプス''¬e{shinra:審良静男ほか 編集 免疫学Update 分子病態の解明と治療への展開 pp62-70 2012 南山堂 東京}; -T細胞とAPCとの境界面に形成される。中心部には抗原特異的シグナルを担う分子群が存在し, その周囲には細胞間相互作用を支える接着分子が集簇している。 --cSMAC(central supra molecular activation complex) 中心にTCR, CD2, PKCθが存在。 --p-SMAC(peripheral-SMAC)-- cSMACの周囲を接着因子LFA-1が取り囲む --d-SMAC(distal-SMAC)-- pSMACの外をCD45 phosphataseなどのさらに大きな分子が囲んでいる。 --APC側では, T細胞の分子に対応し, 中央にMHC(TCR), CD48(CD2)が, その外側にICAM1(LFA1)が並ぶ。 -免疫シナプスの形成により, 活性化誘導が起こると考えられてきたが, CD3ζ, ZAP70など種々のたんぱく質のリン酸化や細胞内カルシウムイオン動員, イノシトール代謝などのT細胞活性化は抗原/MHCでの刺激でも, 抗TCR抗体での刺激でも, 1分以内でおこり, 形成に10-20分を要する''免疫シナプス構造がこの初期活性化シグナルを誘導するのではない''ことは明らかである。 #clear ''TCRミクロクラスタ‐''¬e{shinra:審良静男ほか 編集 免疫学Update 分子病態の解明と治療への展開 pp62-70 2012 南山堂 東京}; -T細胞-抗原提示細胞の接着と同時に, 免疫シナプスが形成されるより前に, TCR, キナーゼ, アダプター分子などのシグナル伝達分子の集合体が細胞表面に形成される。この「TCRミクロクラスター」は抗原特異的なT細胞活性化のシグナル伝達を担う最小単位の活性化ユニットと考えられる. -T細胞-抗原提示細胞の接着と同時に, 免疫シナプスが形成されるより前に, TCR, キナーゼ, アダプター分子などのシグナル伝達分子の集合体が細胞表面に形成される。&color(blue){''この「TCRミクロクラスター」は抗原特異的なT細胞活性化のシグナル伝達を担う最小単位の活性化ユニット''};と考えられる. -接着面が広がるにつれて, TCRミクロクラスターは1-2分の内に接着面全体に形成される。