Spleen
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[[Wikipathologica-KDP]] #contents 加筆したup date pageがあります --> [[Spleen - up date, new page]] 2024, Mar #br *脾臓 Spleen [#af0c955a] 脾臓は&color(blue){''リンパ系器官''};としてリンパ節、リンパ管と同様、''二次(末梢)リンパ系器官''に属し免疫機能を担う臓器である。~ リンパ管やリンパ循環と連絡を持つ他のリンパ装置やリンパ節と違っているのは&color(red){''血液循環中に存在し''};,古くなったり異常であったりする[[赤血球]]や異物を捕食、処理する''血液のフィルタ-''の役割も担なう。 ***脾臓の位置と形 [#ub405773] #ref(spleenpos.jpg,around,right,75%) #ref(spleenbothside.png,around,right) 脾臓は1人一個で大人では左胸郭下第9-第11肋骨の高さにあり胃の左後ろ側で左腎と横隔膜の間に存在している。正常の脾臓はおとなでは触診できない。 脾臓の肉眼像(右図): 暗いあずき色の柔らかな臓器で, 大人の脾臓の重さは90から120g. &color(red){''200gをこえる脾臓は病的といえる''};。20歳から40歳までがもっとも大きく,年をとるとともに萎縮してゆく。大きくなって触れる脾臓を&color(red){''脾腫''};といいます (→[[脾腫をきたす疾患>Splenomegaly 脾腫をきたす疾患]]) 脾臓の肉眼像(横隔膜面(左)臓側面(右)両側から見たところ)。成人の平均サイズは10cm×7cmで厚さは3cmほど。 #clear ***脾臓の構造 [#r07009c7] 脾臓の割面を肉眼で見ると暗赤色の赤脾髄中に白色点状の白脾髄が散在しています~ 赤脾髄は脾洞と脾索から構成され赤血球を多く含む。白脾髄はリンパ小節でリンパ球の集蔟巣です。 ***&color(red){●};赤脾髄の構造 [#pc968c1f] 赤脾髄は細長いソーセージ様の空洞である''脾洞''が''脾索''の間にたくさん介在して構成されています。 脾洞の内皮細胞は細長い''杆状細胞''で、ちょうど「おけ」のように洞の長軸に平行にならび、「タガ」となる''膠原線維のバンド''で取り囲まれています。洞の外側には基底膜がありますが窓が開いていて白血球や赤血球が通り抜けることが可能になっているのです。洞の''内皮''は弱い貪食能を持っています。&color(blue){特発性門脈圧亢進症};では''内皮の貪食能が異常に高くなり''ます。脾洞と脾洞の間にある比較的幅のせまい脾索には''細網細胞''がネットワークをつくっており、その中にリンパ球、形質細胞、マクロファージが存在します。脾臓構造のイラスト参照(下) 動脈から脾臓に入ってくる血液は筆毛動脈→莢毛細血管→脾索毛細血管を通り、脾索やリンパ小節の細網細胞ネットワークに開放されいったん血管を出ます。その後脾洞の隙間から洞内に入り脾静脈に帰っていきます。 脾臓の血液が閉鎖的循環か開放性の循環かは長い間論争されていましたが、現在は構造上、開放性であることがわかっています。 [[赤脾髄HE像]] -- 脾洞、脾索の拡大像を示します。 ***&color(blue){''○''};白脾髄の構造 [#w6203d06] &color(red){脾動脈};は''脾柱''という結合組織を通って実質内に入るところから毛細血管に至るところまで、その周囲に&color(blue){''リンパ鞘''};が形成され、所々に''リンパ濾胞''が発達しています。(&color(blue){リンパ鞘=PALS};と呼ぶ peri-arterial lymphatic sheathの略)~ これらの濾胞内には''胚中心''が見られることが多い。胚中心の周りには暗調にそまる小型のリンパ球が''マントル層''を作って取り囲んでいます。リンパ鞘もリンパ節の構造と同じく粗で不規則な細網線維からできたネットワークが骨格となっている。 &color(blue){リンパ鞘はT細胞領域};で&color(green){リンパ濾胞はB細胞由来};です。PALSのT-cellsは &color(#e60033){''CD4+ cell > CD8+ T-cells''}; ''胚中心が多数出現''しているときはなんらかの''抗原刺激''を受けたと考えられる. ''慢性感染症''がある人の脾臓や''特発性血小板減少性紫斑病''の人の脾臓では&color(blue){''胚中心''};が特に発達してみられます。一方で''自己免疫性溶血性貧血''では胚中心は少なく、''先天性球状赤血球症''ではほとんど見られません。 **脾臓構造イラスト [#la50023b] #ref(spleenA011.jpg,around,75%) ''脾臓の血管'' -脾門部より脾臓実質に入った脾動脈は分岐し, 脾柱を経て(脾柱動脈), 中心動脈として白脾髄を貫通している。(発生的には動脈周囲にリンパ球が集蔟している). -白脾髄を出た動脈は筆先のように分岐することより筆毛動脈と呼ばれる。 -筆毛動脈は脾索の細網細胞突起により支持され脾索内を走行する。筆毛動脈末端部の動脈性毛細血管へ移行する部分は細網細胞とマクロファージからなる莢(さや)で囲まれており、莢動脈あるいは莢毛細血管と呼ばれる。 -莢動脈壁には小孔が開いており, 莢組織は血液濾過に関連していると考えられている。(色素を流すと小孔より莢組織へ流入, 莢組織マクロファージに貪食される) -ヒトの脾動脈端末は大部分が脾索に、一部は周辺帯に開放性に終わり, 血液は血管外へ流出する。(開放性か閉鎖性かについては長い間論争がおこなわれたが現在はこの考えになっている) -脾索の血液は静脈洞の内皮細胞間隙を経て静脈洞に流入する。動脈開放性末端が静脈洞壁に近接している部分では血液は細網細胞の網をくぐることなく、マクロファージに接することもなく, 直接静脈洞に入る、機能性閉鎖循環を行っている。 -静脈洞の血液は-->脾髄静脈--->脾柱静脈を経て脾門部に達し、脾静脈から門脈へ還流する。 ''リンパ管'' -ヒトでは被膜内, 脾柱動静脈周囲に認められる。 -白脾髄中心動脈周囲には動脈血流と逆方向に流れるリンパ流が存在している。 #clear #ref(spleenZu03.png,around,100%); &color(#e60033){''赤脾髄 red pulp''};は, %%%白脾髄が動脈域であるのに対し%%%て, &color(blue){''脾臓の静脈領域''};として白脾髄と区分される. 末梢の開放域である濾胞辺縁帯や莢血管を囲繞する莢組織ellipsoidを門として, 静脈性血管腔である脾洞と, その隙間を埋める細網細胞ネットワークからなる脾索から構成されている. 広義の赤脾髄から濾胞辺縁帯を除いたものが狭義の赤脾髄で静脈性血管からなるスポンジ構造を呈している. 洞性静脈である脾洞と, 細網線維から構築される髄索より赤脾髄が形成されている. 脾洞は洞内皮細胞が長軸方向に平行に配列している. 索状配列する髄索を, ''箍(たが)線維(輪状細網線維)''が桶のたがのように束ね, 索状細網性構造を形成している. 走査電顕では, 髄洞内皮細胞は横突起をのばし互いに連絡している. 横突起により形成される狭い間隙を赤血球が通過し脾臓の濾過機能を担う. 球状赤血球症では髄洞内皮の横突起により構成される間隙構造が脆弱赤血球選択に重要な働きをする. 細網細胞とその突起が形成する細網性網工である髄索は基本的に赤血球が変形して容易に通過できる網目であり, この部位には主にマクロファージが存在し, 血液ろ過, 流量調節に関与する. また抗原提示能をもつ樹状細胞により生体防御機能に関与している. #clear #br **脾臓の組織所見 [#pae73799] #br ''赤脾髄の構造 Structure of the red pulp'' #ref(splenicsinus04.png,around,50%) #ref(spleenRp03b.png,around,50%) 脾臓を灌流固定で赤血球を除いています。 左図:赤脾髄の拡大像 1. 脾洞 2.脾索が見えます。 右図:赤血球の残った部分です。脾洞に入り込む赤血球が見えます。 クリックすると大きな画像が見られます。 #clear #br ''白脾髄の構造 Structure of the white pulp'' #gallery(left,nowrap,noadd){{ SpleenBarea04.jpg>白脾髄 spleenPALS01.jpg SpleenBarea01.jpg spllow01b.png>灌流固定標本 }} #br -白脾髄は脾臓の動脈域を形成している. #br -脾柱動脈は直径が0.2mmほどになると脾柱を出て, 脾髄動脈となる。脾髄動脈の先端部にリンパ装置からなる白脾髄が形成される. #br -脾臓に移動したリンパ球は脾髄動脈周囲へ集簇しperiarterial lymphatic sheath (PALS)を形成する。PALSは胸腺依存領域であり胸腺を除去すると消失する. #br -PALSは細網線維のメッシュとその中のリンパ球, 主にCD4陽性T細胞からなる。(CD4>CD8 T-cells) #br -PALS内にはリンパ小節が形成され, PALSとリンパ小節で白脾髄を構成している。 #br -脾髄動脈は白脾髄動脈または中心動脈とも呼ばれ, PALSおよびリンパ濾胞/小節へ末梢枝を出す。 #br -リンパ濾胞は胚中心, マントル細胞層, 濾胞辺縁帯の3層構造が明瞭に認められることが多い. 濾胞性樹状細胞が産生するCXCL13がこの領域へのB細胞定着を誘導している. #br -リンパ節濾胞と同様に胚中心には, CD21, CD23, CD35陽性のFDC meshworkが認められ, CD20+, CD79a+, CD10+, BCL6+, BCL2-の胚中心細胞が構成細胞の主体をなす. #br -マントル層には玉ねぎ状に細網線維網が配置しIgM+, IgD+, BCL-2+のマントル細胞(小リンパ球)からなる. #br -マントル層の外側には, 淡明で比較的豊かな細胞質を有する, 単球様形態を示す濾胞辺縁帯B細胞が層を形成している. 細胞は IgM+, IgD-. この領域はリンパ球密度は白脾髄に連続するが, 内側と外側で異なる細網性構築からは広義の赤脾髄領域である. #br -中心動脈は末梢枝を出しながら次第に細くなり, 白脾髄を出て赤脾髄に入る。 #br -赤脾髄に入った動脈は筆毛動脈と呼ばれる。 #br -筆毛動脈は末端で細かく枝分かれし, Schweiger-Seider sheathという結合組織性の莢で包まれ莢動脈と呼ばれる。 #br -莢動脈は動脈性毛細血管に相当する。莢動脈は脾索内に開放性に終わる(開放系血管網)他, 髄洞に近接する莢動脈は直接静脈系に流入する機能的閉鎖血管網を形成している. 以下静脈系の赤脾髄へ. #br ''濾胞辺縁帯'' 濾胞辺縁帯は白脾髄を帯状に取り囲む細網線維が疎な空間からなる. この領域は濾胞に接するやや稠密な網状構造からできた内側領域と, 動脈末端の開放域で, 細網線維による構造分化が乏しいフリーな外側空間/領域からなる. 濾胞辺縁帯には特徴的なBリンパ球とマクロファージが定住し, 血中抗原に対する免疫応答に深く関与している.¬e{:伊藤雅文 脾臓濾胞周辺帯の構造および機能的独立性に関する考察. 日本リンパ網内会誌 1998:37;297-303}; 濾胞辺縁帯のB細胞は濾胞性Bリンパ球とphenotypeが異なるBリンパ球からなり, 好銀性を有する特殊なマクロファージであるmarginal metallophilesが存在している.¬e{:Mebius RE, et al. Structure and function of the spleen. Nat Rev Immunol 2005; 5: 606-616}; [[脾臓でのB細胞分化>B-cells#v28800c8]]
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[[Wikipathologica-KDP]] #contents 加筆したup date pageがあります --> [[Spleen - up date, new page]] 2024, Mar #br *脾臓 Spleen [#af0c955a] 脾臓は&color(blue){''リンパ系器官''};としてリンパ節、リンパ管と同様、''二次(末梢)リンパ系器官''に属し免疫機能を担う臓器である。~ リンパ管やリンパ循環と連絡を持つ他のリンパ装置やリンパ節と違っているのは&color(red){''血液循環中に存在し''};,古くなったり異常であったりする[[赤血球]]や異物を捕食、処理する''血液のフィルタ-''の役割も担なう。 ***脾臓の位置と形 [#ub405773] #ref(spleenpos.jpg,around,right,75%) #ref(spleenbothside.png,around,right) 脾臓は1人一個で大人では左胸郭下第9-第11肋骨の高さにあり胃の左後ろ側で左腎と横隔膜の間に存在している。正常の脾臓はおとなでは触診できない。 脾臓の肉眼像(右図): 暗いあずき色の柔らかな臓器で, 大人の脾臓の重さは90から120g. &color(red){''200gをこえる脾臓は病的といえる''};。20歳から40歳までがもっとも大きく,年をとるとともに萎縮してゆく。大きくなって触れる脾臓を&color(red){''脾腫''};といいます (→[[脾腫をきたす疾患>Splenomegaly 脾腫をきたす疾患]]) 脾臓の肉眼像(横隔膜面(左)臓側面(右)両側から見たところ)。成人の平均サイズは10cm×7cmで厚さは3cmほど。 #clear ***脾臓の構造 [#r07009c7] 脾臓の割面を肉眼で見ると暗赤色の赤脾髄中に白色点状の白脾髄が散在しています~ 赤脾髄は脾洞と脾索から構成され赤血球を多く含む。白脾髄はリンパ小節でリンパ球の集蔟巣です。 ***&color(red){●};赤脾髄の構造 [#pc968c1f] 赤脾髄は細長いソーセージ様の空洞である''脾洞''が''脾索''の間にたくさん介在して構成されています。 脾洞の内皮細胞は細長い''杆状細胞''で、ちょうど「おけ」のように洞の長軸に平行にならび、「タガ」となる''膠原線維のバンド''で取り囲まれています。洞の外側には基底膜がありますが窓が開いていて白血球や赤血球が通り抜けることが可能になっているのです。洞の''内皮''は弱い貪食能を持っています。&color(blue){特発性門脈圧亢進症};では''内皮の貪食能が異常に高くなり''ます。脾洞と脾洞の間にある比較的幅のせまい脾索には''細網細胞''がネットワークをつくっており、その中にリンパ球、形質細胞、マクロファージが存在します。脾臓構造のイラスト参照(下) 動脈から脾臓に入ってくる血液は筆毛動脈→莢毛細血管→脾索毛細血管を通り、脾索やリンパ小節の細網細胞ネットワークに開放されいったん血管を出ます。その後脾洞の隙間から洞内に入り脾静脈に帰っていきます。 脾臓の血液が閉鎖的循環か開放性の循環かは長い間論争されていましたが、現在は構造上、開放性であることがわかっています。 [[赤脾髄HE像]] -- 脾洞、脾索の拡大像を示します。 ***&color(blue){''○''};白脾髄の構造 [#w6203d06] &color(red){脾動脈};は''脾柱''という結合組織を通って実質内に入るところから毛細血管に至るところまで、その周囲に&color(blue){''リンパ鞘''};が形成され、所々に''リンパ濾胞''が発達しています。(&color(blue){リンパ鞘=PALS};と呼ぶ peri-arterial lymphatic sheathの略)~ これらの濾胞内には''胚中心''が見られることが多い。胚中心の周りには暗調にそまる小型のリンパ球が''マントル層''を作って取り囲んでいます。リンパ鞘もリンパ節の構造と同じく粗で不規則な細網線維からできたネットワークが骨格となっている。 &color(blue){リンパ鞘はT細胞領域};で&color(green){リンパ濾胞はB細胞由来};です。PALSのT-cellsは &color(#e60033){''CD4+ cell > CD8+ T-cells''}; ''胚中心が多数出現''しているときはなんらかの''抗原刺激''を受けたと考えられる. ''慢性感染症''がある人の脾臓や''特発性血小板減少性紫斑病''の人の脾臓では&color(blue){''胚中心''};が特に発達してみられます。一方で''自己免疫性溶血性貧血''では胚中心は少なく、''先天性球状赤血球症''ではほとんど見られません。 **脾臓構造イラスト [#la50023b] #ref(spleenA011.jpg,around,75%) ''脾臓の血管'' -脾門部より脾臓実質に入った脾動脈は分岐し, 脾柱を経て(脾柱動脈), 中心動脈として白脾髄を貫通している。(発生的には動脈周囲にリンパ球が集蔟している). -白脾髄を出た動脈は筆先のように分岐することより筆毛動脈と呼ばれる。 -筆毛動脈は脾索の細網細胞突起により支持され脾索内を走行する。筆毛動脈末端部の動脈性毛細血管へ移行する部分は細網細胞とマクロファージからなる莢(さや)で囲まれており、莢動脈あるいは莢毛細血管と呼ばれる。 -莢動脈壁には小孔が開いており, 莢組織は血液濾過に関連していると考えられている。(色素を流すと小孔より莢組織へ流入, 莢組織マクロファージに貪食される) -ヒトの脾動脈端末は大部分が脾索に、一部は周辺帯に開放性に終わり, 血液は血管外へ流出する。(開放性か閉鎖性かについては長い間論争がおこなわれたが現在はこの考えになっている) -脾索の血液は静脈洞の内皮細胞間隙を経て静脈洞に流入する。動脈開放性末端が静脈洞壁に近接している部分では血液は細網細胞の網をくぐることなく、マクロファージに接することもなく, 直接静脈洞に入る、機能性閉鎖循環を行っている。 -静脈洞の血液は-->脾髄静脈--->脾柱静脈を経て脾門部に達し、脾静脈から門脈へ還流する。 ''リンパ管'' -ヒトでは被膜内, 脾柱動静脈周囲に認められる。 -白脾髄中心動脈周囲には動脈血流と逆方向に流れるリンパ流が存在している。 #clear #ref(spleenZu03.png,around,100%); &color(#e60033){''赤脾髄 red pulp''};は, %%%白脾髄が動脈域であるのに対し%%%て, &color(blue){''脾臓の静脈領域''};として白脾髄と区分される. 末梢の開放域である濾胞辺縁帯や莢血管を囲繞する莢組織ellipsoidを門として, 静脈性血管腔である脾洞と, その隙間を埋める細網細胞ネットワークからなる脾索から構成されている. 広義の赤脾髄から濾胞辺縁帯を除いたものが狭義の赤脾髄で静脈性血管からなるスポンジ構造を呈している. 洞性静脈である脾洞と, 細網線維から構築される髄索より赤脾髄が形成されている. 脾洞は洞内皮細胞が長軸方向に平行に配列している. 索状配列する髄索を, ''箍(たが)線維(輪状細網線維)''が桶のたがのように束ね, 索状細網性構造を形成している. 走査電顕では, 髄洞内皮細胞は横突起をのばし互いに連絡している. 横突起により形成される狭い間隙を赤血球が通過し脾臓の濾過機能を担う. 球状赤血球症では髄洞内皮の横突起により構成される間隙構造が脆弱赤血球選択に重要な働きをする. 細網細胞とその突起が形成する細網性網工である髄索は基本的に赤血球が変形して容易に通過できる網目であり, この部位には主にマクロファージが存在し, 血液ろ過, 流量調節に関与する. また抗原提示能をもつ樹状細胞により生体防御機能に関与している. #clear #br **脾臓の組織所見 [#pae73799] #br ''赤脾髄の構造 Structure of the red pulp'' #ref(splenicsinus04.png,around,50%) #ref(spleenRp03b.png,around,50%) 脾臓を灌流固定で赤血球を除いています。 左図:赤脾髄の拡大像 1. 脾洞 2.脾索が見えます。 右図:赤血球の残った部分です。脾洞に入り込む赤血球が見えます。 クリックすると大きな画像が見られます。 #clear #br ''白脾髄の構造 Structure of the white pulp'' #gallery(left,nowrap,noadd){{ SpleenBarea04.jpg>白脾髄 spleenPALS01.jpg SpleenBarea01.jpg spllow01b.png>灌流固定標本 }} #br -白脾髄は脾臓の動脈域を形成している. #br -脾柱動脈は直径が0.2mmほどになると脾柱を出て, 脾髄動脈となる。脾髄動脈の先端部にリンパ装置からなる白脾髄が形成される. #br -脾臓に移動したリンパ球は脾髄動脈周囲へ集簇しperiarterial lymphatic sheath (PALS)を形成する。PALSは胸腺依存領域であり胸腺を除去すると消失する. #br -PALSは細網線維のメッシュとその中のリンパ球, 主にCD4陽性T細胞からなる。(CD4>CD8 T-cells) #br -PALS内にはリンパ小節が形成され, PALSとリンパ小節で白脾髄を構成している。 #br -脾髄動脈は白脾髄動脈または中心動脈とも呼ばれ, PALSおよびリンパ濾胞/小節へ末梢枝を出す。 #br -リンパ濾胞は胚中心, マントル細胞層, 濾胞辺縁帯の3層構造が明瞭に認められることが多い. 濾胞性樹状細胞が産生するCXCL13がこの領域へのB細胞定着を誘導している. #br -リンパ節濾胞と同様に胚中心には, CD21, CD23, CD35陽性のFDC meshworkが認められ, CD20+, CD79a+, CD10+, BCL6+, BCL2-の胚中心細胞が構成細胞の主体をなす. #br -マントル層には玉ねぎ状に細網線維網が配置しIgM+, IgD+, BCL-2+のマントル細胞(小リンパ球)からなる. #br -マントル層の外側には, 淡明で比較的豊かな細胞質を有する, 単球様形態を示す濾胞辺縁帯B細胞が層を形成している. 細胞は IgM+, IgD-. この領域はリンパ球密度は白脾髄に連続するが, 内側と外側で異なる細網性構築からは広義の赤脾髄領域である. #br -中心動脈は末梢枝を出しながら次第に細くなり, 白脾髄を出て赤脾髄に入る。 #br -赤脾髄に入った動脈は筆毛動脈と呼ばれる。 #br -筆毛動脈は末端で細かく枝分かれし, Schweiger-Seider sheathという結合組織性の莢で包まれ莢動脈と呼ばれる。 #br -莢動脈は動脈性毛細血管に相当する。莢動脈は脾索内に開放性に終わる(開放系血管網)他, 髄洞に近接する莢動脈は直接静脈系に流入する機能的閉鎖血管網を形成している. 以下静脈系の赤脾髄へ. #br ''濾胞辺縁帯'' 濾胞辺縁帯は白脾髄を帯状に取り囲む細網線維が疎な空間からなる. この領域は濾胞に接するやや稠密な網状構造からできた内側領域と, 動脈末端の開放域で, 細網線維による構造分化が乏しいフリーな外側空間/領域からなる. 濾胞辺縁帯には特徴的なBリンパ球とマクロファージが定住し, 血中抗原に対する免疫応答に深く関与している.¬e{:伊藤雅文 脾臓濾胞周辺帯の構造および機能的独立性に関する考察. 日本リンパ網内会誌 1998:37;297-303}; 濾胞辺縁帯のB細胞は濾胞性Bリンパ球とphenotypeが異なるBリンパ球からなり, 好銀性を有する特殊なマクロファージであるmarginal metallophilesが存在している.¬e{:Mebius RE, et al. Structure and function of the spleen. Nat Rev Immunol 2005; 5: 606-616}; [[脾臓でのB細胞分化>B-cells#v28800c8]]
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