micro RNA
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[[Wikipathologica-KDP]] *miRNA ( microRNA ) [#vee3c99a] ''二十数塩基ほどの小さな1本鎖RNA分子''。&color(blue){転写後調節による遺伝子の発現抑制効果により遺伝子発現調節をおこなう};。動物界だけでなく植物界でも細胞内でつくられ発生や形態形成プロセスで働くことが知られてきた。現在データベース((miRBase; http://www.mirbase.org/))には1000を超えるヒトmiRNAが登録されている。-->miRBase; http://www.mirbase.org/ ''miRNAのプロセッシング''(図はキアゲン社の公開動画より)~ 細胞内におけるmiRNAの生合成過程を総称してプロセッシングとよぶ。 ''核内'' //#ref(miRNA03.JPG,around,right,80%) #gallery(left,nowrap,noadd){{ miRNA03.JPG miRNA03_b_s.jpg miRNA02_b_s.jpg }} -miRNA遺伝子はヒトゲノム上のcoding geneまたはnon-coding geneのexonおよびintron内に存在する(どこにでもある, ということですね。) -哺乳動物の約半分のmiRNAはタンパク質をコードするmRNA前駆体のintron領域に存在する。 -同一ファミリーのmiRNAがclusterを形成することもあれば異なった染色体上に存在することもある。 -おもに&color(blue){RNA polymelaseⅡ};が働き, いくつかのstem-loop構造((RNAヘアピンループともいう.RNA上に存在する逆方向反復配列間で水素結合によって生じる二本鎖の部分(stem)と,それに挟まれたループ(loop)状の構造.転写終結シグナルや翻訳調節などの機能にかかわっている.実験医学増刊 Vol.26 No.17))を有する数百から数千塩基程度の前駆体である&color(red){primary miRNA(pri-miR)};が核内で転写される //>&ref(miRNA03_b_s.jpg); &ref(miRNA02_b_s.jpg); -pri-miRは&color(blue){''Drosha/DGCR8''};を含む複合体のプロセッシングをうけて70塩基程度の&color(red){precursor miRNA(pre-miR)};となる -Droshaは核内リボヌクレアーゼ(RNase)Ⅲで, Digeorge syndrome critical region gene8(DGCR8)および複数の補助因子と複合体を形成している。DGCR8がpri-miRNAと結合しヘアピン構造と1本鎖構造の分岐点から約11塩基はなれた部位でDroshaがヘアピン構造を切断するモデルが提唱されている((Han J.et al.,Molecular basis for the recognition of primary microRNAs by the Drosha-DGCR8 complex. Cell 125:887-901, 2006)) ''核外輸送'' #ref(miRNA05_s.jpg,around,left) -exportin5によりpre-miRNAが細胞質に輸送される&br; -pre-miRNAの核外輸送[[ビデオ(阪大蛋白研):http://www.protein.osaka-u.ac.jp/olabb/tsukihara/pre-microRNA/]] #clear ''細胞質'' -核内から細胞質に移行したpre-miRはTRBP(trans-activator RNA binding protein), PRKRA, Argonature(AGO1-4)と結合した&color(blue){RNAaseⅢダイサー(Dicer)};と呼ばれる酵素(endonuclease)によってヘアピン構造を裂かれ、22塩基程度の2本鎖RNA、miRNA/miRNA(miR-3p/miR-5p)へと変わる。 -さらにHelicaseにより一本鎖にされ、そのうち一方の鎖がmature miRNAとしてArgonaute(AGO1, AGO2)やTRBPと複合体を形成, &color(red){''RISC(RNA-induced silencing complex)''};に取り込まれる。''もう一方の鎖は分解される。'' #br #gallery(left,nowrap,noadd){{ miRNA07_s.jpg miRNA10_s.jpg miRNA11_s.jpg }} //&ref(miRNA07_s.jpg); &ref(miRNA10_s.jpg); &ref(miRNA11_s.jpg); -RISCのmiRNAの2塩基めから8塩基めの7塩基配列は&color(blue){seed sequence};とよばれ、このsequenceが標的mRNAの3'-UTR領域の配列と結合して蛋白への翻訳を抑制する。 -&color(blue){seed sequenceの結合は必ずしも完全な相補ではなく, 一つのmiRNAには100以上の標的遺伝子が存在};し多様な遺伝子発現にかかわっている >Mature miRNAによる蛋白翻訳抑制の機序は完全にはわかっていない。翻訳開始や伸長段階での阻害, 翻訳された蛋白の分解あるいはmRNAそのものを分解するなどが考えられている。いずれにしても遺伝子産物の蛋白ができず&color(red){転写後調節による遺伝子の発現抑制効果};を生み出すことになり&color(red){RNAサイレンシング};と総称する。 #ref(miRNA01.jpg,,60%) >ヒトではmiRNAの標的遺伝子の一つが幹細胞状態を保つ遺伝子であることが最初にわかった((Kawasaki H, Taira K., Hes1 is a target of microRNA-23 during retinoic-acid-induced neuronal differentiation of NT2 cells. Nature. 2003 Jun 19;423(6942):838-42. Epub 2003 Jun 8.))。レチノイン酸をES細胞に働かせるとmiRNAの一種であるmiR-23が発現し, 標的遺伝子Hes-1の蛋白合成が抑制され神経細胞への分化が進行した。(Hes-1はDelta/Nochシグナル伝達の下流で働く分化抑制タンパク質の遺伝子. 幹細胞の性質を維持する遺伝子の一つ). 遺伝子発現の調節機構としてmiRNAが働いている。 ***癌とmiRNA [#b99e3ec0] 癌とmiRNAの関係を示した最初の発見はCLL(慢性リンパ球性白血病)でなされた。 -&color(blue){CLLでは, しばしば13q14領域に欠失が認められる};が, 欠失部位にタンパクをコードする遺伝子が発見されず, 欠失の病的意義が不明であった。 -Calinら((Calin GA, et al., Frequent deletions and down-regulation of micro- RNA genes miR15 and miR16 at 13q14 in chronic lymphocytic leukemia. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Nov 26;99(24):15524-9.))は, この領域に&color(red){''mi-R15aとmiR-16-1''};という2種類のmiRNAが存在し, 13q14欠失をもつCLLでは、その発現が低下していることを示した。~ -Cimminoら((Cimmino A, et al., miR-15 and miR-16 induce apoptosis by targeting BCL2. Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Sep 27;102(39):13944-9. Epub 2005 Sep 15.))は&color(blue){''mi-R15aとmiR-16-1''};の2つのmiRNAがアポトーシス抑制遺伝子である, &color(red){BCL2を標的にしている};ことより両者の低下がBCL2発現の上昇を引き起こしCLL発症に関与していることを示した。 さらに&color(blue){癌細胞においては欠失(LOH)や増幅がおこりやすい染色体上のゲノム不安定領域(fragile site)にmiRNAがしばしば存在する};ことが報告されmiRNAの異常は一部の癌に限られたものではなく発癌機構自体にmiRNAが直接かかわっているとかんがえられるようになった。 miRNA microarray, beads-based flow cytometryおよびhigh-throughput deep sequencingの開発によりゲノムワイドなmiRNAプロファイル(miRNAome)を腫瘍分類・診断・予後予測に役立てる研究がすすんでいる。 miRNAプロファイルは正常組織と癌組織の区別, 癌の由来臓器や組織の識別ができるだけではなく同一組織由来の癌サブタイプをも区別できると考えられるようになってきている。 miRNAの発現パターンは予後予測のためのバイオマーカーになりうることが示唆されている。 -CLLと肺がんではmiR-155高発現とlet-7a低発現のような特有のmiRNAパターンが疾患進行に関与するだけでなく予後予測因子となることが報告されている。 -miR-21高発現は膵癌のゲムシタビン治療に対する低感受性を予測するマーカになるとされる。 -miRNAはその小ささのため長鎖RNAより安定であることから、凍結組織やパラフィン固定組織, 血漿, 血清, 尿, 唾液, 喀痰などから信頼性高く抽出可能である。担癌患者さん血清miRNAがバイオマーカになる可能性も示唆されている。 &color(red){&SIZE(24){●};};miRNAにはがん抑制遺伝子として機能するものと, がん遺伝子として機能するものがあると考えられる。 >がん抑制遺伝子の代表例として'''''let-7''''' familyが挙げられる。 -線虫の発生マスター調節因子として知られていたLIN14タンパク質のmRNA, 3'URTと相補性 のある22塩基前後の小分子RNAとして'''let-7'''および'''lin-4'''がLIN14タンパク質の発現調節をしていることが発見された。 -'''let-7'''は線虫からヒトに至るまで発生分化に必須の役割を担う他, 肺癌をはじめとする多くの癌で発現低下が認められ, がん遺伝子'''RAS''', '''HMGA2''', '''MYC'''などの発現を抑制することが明らかになっている。 >がん抑制遺伝子として働く代表的miRNAとしてmiR-143/ miR-145がある。局在は5q32. -大腸癌などで高頻度に発現低下がみられる。 -miR-145は幹細胞誘導に維持に関与するOCT4, SOX2, KLF4を標的遺伝子として発現抑制し、癌幹細胞分化を誘導する((Xu N, et al. MicroRNA-145 regulates OCT4, SOX2, and KLF4 and repress pluripotency in human embryonic stem cells. Cell 137: 647-658, 2009)) >''がん抑制遺伝子的に作用するmiRNA'' |miRNA|主な標的遺伝子|主な悪性腫瘍|作用と影響| |let-7 family|RAS, MYC, HMGA2, LIN28|肺癌, 乳癌|増殖促進, 癌幹細胞維持| |miR-15a/ 16-1|BCL-2|CLL|apoptosis抑制| |miR-29|TCL-1, MCL1, DNMT3a/3b|白血病, リンパ腫, 肺癌など|epigenetic異常, apoptosis抑制| ||p85a(PI3K), CDC42, CDK6, MCL1||| |miR-34|CCND1, CCNE2, CDK4/6, |膵癌, 大腸癌, 乳癌|DNA損傷蓄積| ||E2F3, MYC, MET, SIRT, BCL-2||| |miR-101|EZH2|前立腺癌, 乳癌|epigenetic異常| |miR-143/145|OCT4, SOX2, KLF4|大腸癌|癌幹細胞維持| |miR-200 family|ZEB1, ZEB2, SOX2, KLF4, BMI1|乳癌|EMT転移促進, 癌幹細胞維持| >''がん遺伝子的に機能するmiRNA(転移・浸潤含む)'' |miRNA|標的遺伝子|悪性腫瘍|作用・効果| |miR-10b|HOXD10|乳癌|転移促進| |miR-17-92|E2F, BIM, PTEN, HIF-1α|リンパ腫, 肺癌など|増殖促進, apoptosis抑制| |miR-21|PTEN, PDCD4, TPM1|白血病, 乳癌など|apoptosis抑制| |miR-106b-363|p21CIP1, BIM|食道癌, 肝癌|増殖促進| |miR-155|MAF, SHP1, TP53INP1|白血病, 肺癌など|増殖促進, apoptosis抑制| |miR-196|HOXB8, HOXC8, HOXD8, HOXA7|白血病|| |miR-221/222|p27KIP1, KIT|前立腺癌, 甲状腺癌|増殖促進| |miR-372/miR-373|LATS2|睾丸腫瘍|Hippoシグナル抑制, 増殖促進| |miR-373, miR-520c|CD44|乳癌|転移促進| #br #br ***1. 多発性骨髄腫とmiRNA。 [#t7a1d6ef] -MMの形質細胞においては健常人の形質細胞と比較して、&color(red){let-7a, miR-16, miR-17-5p, miR-19};の発現が増加しており&color(blue){miR-15a, miR-21, miR-372, miR-143, miR-155};などの発現が低下していることが報告されている。 -またMMではMGUSに比べ, miR-16の発現がMMにおいて亢進していたことよりMMの発症機序だけではなくMMの進展に関与していることを示唆している。 -異なった結果の報告もある。&color(red){miR-21};が健常人骨髄中形質細胞より, MM, MGUSの形質細胞において高発現し, その発現量がIL-6-STAT3経路によりコントロールされていることが報告されている。 ***2. 悪性リンパ腫とmiRNA [#u28deffe]
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[[Wikipathologica-KDP]] *miRNA ( microRNA ) [#vee3c99a] ''二十数塩基ほどの小さな1本鎖RNA分子''。&color(blue){転写後調節による遺伝子の発現抑制効果により遺伝子発現調節をおこなう};。動物界だけでなく植物界でも細胞内でつくられ発生や形態形成プロセスで働くことが知られてきた。現在データベース((miRBase; http://www.mirbase.org/))には1000を超えるヒトmiRNAが登録されている。-->miRBase; http://www.mirbase.org/ ''miRNAのプロセッシング''(図はキアゲン社の公開動画より)~ 細胞内におけるmiRNAの生合成過程を総称してプロセッシングとよぶ。 ''核内'' //#ref(miRNA03.JPG,around,right,80%) #gallery(left,nowrap,noadd){{ miRNA03.JPG miRNA03_b_s.jpg miRNA02_b_s.jpg }} -miRNA遺伝子はヒトゲノム上のcoding geneまたはnon-coding geneのexonおよびintron内に存在する(どこにでもある, ということですね。) -哺乳動物の約半分のmiRNAはタンパク質をコードするmRNA前駆体のintron領域に存在する。 -同一ファミリーのmiRNAがclusterを形成することもあれば異なった染色体上に存在することもある。 -おもに&color(blue){RNA polymelaseⅡ};が働き, いくつかのstem-loop構造((RNAヘアピンループともいう.RNA上に存在する逆方向反復配列間で水素結合によって生じる二本鎖の部分(stem)と,それに挟まれたループ(loop)状の構造.転写終結シグナルや翻訳調節などの機能にかかわっている.実験医学増刊 Vol.26 No.17))を有する数百から数千塩基程度の前駆体である&color(red){primary miRNA(pri-miR)};が核内で転写される //>&ref(miRNA03_b_s.jpg); &ref(miRNA02_b_s.jpg); -pri-miRは&color(blue){''Drosha/DGCR8''};を含む複合体のプロセッシングをうけて70塩基程度の&color(red){precursor miRNA(pre-miR)};となる -Droshaは核内リボヌクレアーゼ(RNase)Ⅲで, Digeorge syndrome critical region gene8(DGCR8)および複数の補助因子と複合体を形成している。DGCR8がpri-miRNAと結合しヘアピン構造と1本鎖構造の分岐点から約11塩基はなれた部位でDroshaがヘアピン構造を切断するモデルが提唱されている((Han J.et al.,Molecular basis for the recognition of primary microRNAs by the Drosha-DGCR8 complex. Cell 125:887-901, 2006)) ''核外輸送'' #ref(miRNA05_s.jpg,around,left) -exportin5によりpre-miRNAが細胞質に輸送される&br; -pre-miRNAの核外輸送[[ビデオ(阪大蛋白研):http://www.protein.osaka-u.ac.jp/olabb/tsukihara/pre-microRNA/]] #clear ''細胞質'' -核内から細胞質に移行したpre-miRはTRBP(trans-activator RNA binding protein), PRKRA, Argonature(AGO1-4)と結合した&color(blue){RNAaseⅢダイサー(Dicer)};と呼ばれる酵素(endonuclease)によってヘアピン構造を裂かれ、22塩基程度の2本鎖RNA、miRNA/miRNA(miR-3p/miR-5p)へと変わる。 -さらにHelicaseにより一本鎖にされ、そのうち一方の鎖がmature miRNAとしてArgonaute(AGO1, AGO2)やTRBPと複合体を形成, &color(red){''RISC(RNA-induced silencing complex)''};に取り込まれる。''もう一方の鎖は分解される。'' #br #gallery(left,nowrap,noadd){{ miRNA07_s.jpg miRNA10_s.jpg miRNA11_s.jpg }} //&ref(miRNA07_s.jpg); &ref(miRNA10_s.jpg); &ref(miRNA11_s.jpg); -RISCのmiRNAの2塩基めから8塩基めの7塩基配列は&color(blue){seed sequence};とよばれ、このsequenceが標的mRNAの3'-UTR領域の配列と結合して蛋白への翻訳を抑制する。 -&color(blue){seed sequenceの結合は必ずしも完全な相補ではなく, 一つのmiRNAには100以上の標的遺伝子が存在};し多様な遺伝子発現にかかわっている >Mature miRNAによる蛋白翻訳抑制の機序は完全にはわかっていない。翻訳開始や伸長段階での阻害, 翻訳された蛋白の分解あるいはmRNAそのものを分解するなどが考えられている。いずれにしても遺伝子産物の蛋白ができず&color(red){転写後調節による遺伝子の発現抑制効果};を生み出すことになり&color(red){RNAサイレンシング};と総称する。 #ref(miRNA01.jpg,,60%) >ヒトではmiRNAの標的遺伝子の一つが幹細胞状態を保つ遺伝子であることが最初にわかった((Kawasaki H, Taira K., Hes1 is a target of microRNA-23 during retinoic-acid-induced neuronal differentiation of NT2 cells. Nature. 2003 Jun 19;423(6942):838-42. Epub 2003 Jun 8.))。レチノイン酸をES細胞に働かせるとmiRNAの一種であるmiR-23が発現し, 標的遺伝子Hes-1の蛋白合成が抑制され神経細胞への分化が進行した。(Hes-1はDelta/Nochシグナル伝達の下流で働く分化抑制タンパク質の遺伝子. 幹細胞の性質を維持する遺伝子の一つ). 遺伝子発現の調節機構としてmiRNAが働いている。 ***癌とmiRNA [#b99e3ec0] 癌とmiRNAの関係を示した最初の発見はCLL(慢性リンパ球性白血病)でなされた。 -&color(blue){CLLでは, しばしば13q14領域に欠失が認められる};が, 欠失部位にタンパクをコードする遺伝子が発見されず, 欠失の病的意義が不明であった。 -Calinら((Calin GA, et al., Frequent deletions and down-regulation of micro- RNA genes miR15 and miR16 at 13q14 in chronic lymphocytic leukemia. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Nov 26;99(24):15524-9.))は, この領域に&color(red){''mi-R15aとmiR-16-1''};という2種類のmiRNAが存在し, 13q14欠失をもつCLLでは、その発現が低下していることを示した。~ -Cimminoら((Cimmino A, et al., miR-15 and miR-16 induce apoptosis by targeting BCL2. Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Sep 27;102(39):13944-9. Epub 2005 Sep 15.))は&color(blue){''mi-R15aとmiR-16-1''};の2つのmiRNAがアポトーシス抑制遺伝子である, &color(red){BCL2を標的にしている};ことより両者の低下がBCL2発現の上昇を引き起こしCLL発症に関与していることを示した。 さらに&color(blue){癌細胞においては欠失(LOH)や増幅がおこりやすい染色体上のゲノム不安定領域(fragile site)にmiRNAがしばしば存在する};ことが報告されmiRNAの異常は一部の癌に限られたものではなく発癌機構自体にmiRNAが直接かかわっているとかんがえられるようになった。 miRNA microarray, beads-based flow cytometryおよびhigh-throughput deep sequencingの開発によりゲノムワイドなmiRNAプロファイル(miRNAome)を腫瘍分類・診断・予後予測に役立てる研究がすすんでいる。 miRNAプロファイルは正常組織と癌組織の区別, 癌の由来臓器や組織の識別ができるだけではなく同一組織由来の癌サブタイプをも区別できると考えられるようになってきている。 miRNAの発現パターンは予後予測のためのバイオマーカーになりうることが示唆されている。 -CLLと肺がんではmiR-155高発現とlet-7a低発現のような特有のmiRNAパターンが疾患進行に関与するだけでなく予後予測因子となることが報告されている。 -miR-21高発現は膵癌のゲムシタビン治療に対する低感受性を予測するマーカになるとされる。 -miRNAはその小ささのため長鎖RNAより安定であることから、凍結組織やパラフィン固定組織, 血漿, 血清, 尿, 唾液, 喀痰などから信頼性高く抽出可能である。担癌患者さん血清miRNAがバイオマーカになる可能性も示唆されている。 &color(red){&SIZE(24){●};};miRNAにはがん抑制遺伝子として機能するものと, がん遺伝子として機能するものがあると考えられる。 >がん抑制遺伝子の代表例として'''''let-7''''' familyが挙げられる。 -線虫の発生マスター調節因子として知られていたLIN14タンパク質のmRNA, 3'URTと相補性 のある22塩基前後の小分子RNAとして'''let-7'''および'''lin-4'''がLIN14タンパク質の発現調節をしていることが発見された。 -'''let-7'''は線虫からヒトに至るまで発生分化に必須の役割を担う他, 肺癌をはじめとする多くの癌で発現低下が認められ, がん遺伝子'''RAS''', '''HMGA2''', '''MYC'''などの発現を抑制することが明らかになっている。 >がん抑制遺伝子として働く代表的miRNAとしてmiR-143/ miR-145がある。局在は5q32. -大腸癌などで高頻度に発現低下がみられる。 -miR-145は幹細胞誘導に維持に関与するOCT4, SOX2, KLF4を標的遺伝子として発現抑制し、癌幹細胞分化を誘導する((Xu N, et al. MicroRNA-145 regulates OCT4, SOX2, and KLF4 and repress pluripotency in human embryonic stem cells. Cell 137: 647-658, 2009)) >''がん抑制遺伝子的に作用するmiRNA'' |miRNA|主な標的遺伝子|主な悪性腫瘍|作用と影響| |let-7 family|RAS, MYC, HMGA2, LIN28|肺癌, 乳癌|増殖促進, 癌幹細胞維持| |miR-15a/ 16-1|BCL-2|CLL|apoptosis抑制| |miR-29|TCL-1, MCL1, DNMT3a/3b|白血病, リンパ腫, 肺癌など|epigenetic異常, apoptosis抑制| ||p85a(PI3K), CDC42, CDK6, MCL1||| |miR-34|CCND1, CCNE2, CDK4/6, |膵癌, 大腸癌, 乳癌|DNA損傷蓄積| ||E2F3, MYC, MET, SIRT, BCL-2||| |miR-101|EZH2|前立腺癌, 乳癌|epigenetic異常| |miR-143/145|OCT4, SOX2, KLF4|大腸癌|癌幹細胞維持| |miR-200 family|ZEB1, ZEB2, SOX2, KLF4, BMI1|乳癌|EMT転移促進, 癌幹細胞維持| >''がん遺伝子的に機能するmiRNA(転移・浸潤含む)'' |miRNA|標的遺伝子|悪性腫瘍|作用・効果| |miR-10b|HOXD10|乳癌|転移促進| |miR-17-92|E2F, BIM, PTEN, HIF-1α|リンパ腫, 肺癌など|増殖促進, apoptosis抑制| |miR-21|PTEN, PDCD4, TPM1|白血病, 乳癌など|apoptosis抑制| |miR-106b-363|p21CIP1, BIM|食道癌, 肝癌|増殖促進| |miR-155|MAF, SHP1, TP53INP1|白血病, 肺癌など|増殖促進, apoptosis抑制| |miR-196|HOXB8, HOXC8, HOXD8, HOXA7|白血病|| |miR-221/222|p27KIP1, KIT|前立腺癌, 甲状腺癌|増殖促進| |miR-372/miR-373|LATS2|睾丸腫瘍|Hippoシグナル抑制, 増殖促進| |miR-373, miR-520c|CD44|乳癌|転移促進| #br #br ***1. 多発性骨髄腫とmiRNA。 [#t7a1d6ef] -MMの形質細胞においては健常人の形質細胞と比較して、&color(red){let-7a, miR-16, miR-17-5p, miR-19};の発現が増加しており&color(blue){miR-15a, miR-21, miR-372, miR-143, miR-155};などの発現が低下していることが報告されている。 -またMMではMGUSに比べ, miR-16の発現がMMにおいて亢進していたことよりMMの発症機序だけではなくMMの進展に関与していることを示唆している。 -異なった結果の報告もある。&color(red){miR-21};が健常人骨髄中形質細胞より, MM, MGUSの形質細胞において高発現し, その発現量がIL-6-STAT3経路によりコントロールされていることが報告されている。 ***2. 悪性リンパ腫とmiRNA [#u28deffe]
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